墓参り、紳士、出会い。
「お墓参りに行くわよ!」朝、目を開けると同時に彼女が声を上げる。まだはっきりと働かない頭を目覚めさせるため、食堂に向かい、店主に挨拶をする。
「おはようございます。昨日は厄介なのに絡まれましたね。」食堂での出来事を思い出し店主を労う。
「おはようございます。お恥ずかしい所をお見せしました。最近はああいった輩が増えましてね。冒険者というよりは野盗に近いのも多いですよ。本当に墓荒らしさえ、やりかねないと感じます。」店主は気にしては無い風だったが、余程腹に据えかねていた様だ。
「僕の目の前で悪さをする様なら微力ながら、止めに入りますよ。」そんな店主との雑談もそこそこに、洗面器にお湯を貰い顔を洗う。
身支度を整えて、お勧めされた錬金術師のお墓に向かい歩き出す。
「お墓参りってお供え物とか必要なのかな?お線香とか。聞いて来ればよかった。」しくじったなと思いながら、彼女に問う。
「お線香が必要とは思わないけど、観光とはいえ最低限、お花くらいは供えるべきでしょうね。貴方、死霊術師なんだし礼儀を欠いてはだめよ。」彼女の言に、人として当たり前の事を、当たり前にすればいいかと納得して、お供えできる花を購入すべく店を探しながら、教えて貰った道を進んで行く。
お店で見繕ってもらった、花束を抱え目的地である、錬金術師の眠る墳墓に辿り着く。
「これは聞いていた通り壮観だね。」墓石を囲むように建設された教会の様な建物に入り、順番待ちの間に、周囲を観察する。
太陽の光を取り込み、美しく彩られる街のシンボルのステンドグラスに始まり、墓石の背後の壁には術に使うのであろう、陣が書き込まれ、日本の墓石より大きい石には、思わず息を呑む程の精巧なレリーフが施されており、生前どれだけ多くの人々に慕われていたかが、少し見ただけで理解できた。とてもじゃないが、自分は、ここまで手厚く葬られることはないだろうと、圧倒されてしまった。
「ほら、順番来たわよ。」様々な芸術品に目を奪われていると、彼女に現実に引き戻された。
頷き、五段程の階段を上がり、墓石の前まで移動する。
この世界での作法など解らないので、花を手向け、しゃがみ込んで手を合わせ冥福を祈る。死霊術師が祈るのだ、安らかに眠り、この街を末永く守って欲しいと願う。
祈りを終え、立ち上がると彼女が唐突に言う。
「足元、地下に空間があるわね。」それを聞き足元に目を落とす。
そこには人間の生首が転がっていた。
「うわっ!」あまりの出来事に、大きな声で驚嘆の声を上げてしまった。
周囲の人々に一斉に注目される。咄嗟に周囲に謝る。
「誰にも見えていない……?」恐る恐る生首を見ると、生首の目が開き、視線が交わった。
「私が見える人なんて何時振りだろうか。」
生首はそのまま浮かび上がると、首と共に足元から身体がすり抜けて、眼前に立ち上がった。
「初めまして、お二方。街では偉大な錬金術師と呼ばれております。ソーマと申します。以後お見知りおきを。」
ソーマと名乗った生首は、恭しく一礼した。




