不届き、騒音、睡眠不足。
チェックインを済ませて、まだ食堂で食事が出来ると教えてもらい、追加で鉄貨を渡し食堂での晩餐と相成った。
食堂に入りテーブルに着く、他にもチラホラ宿泊客が食事をしていた。
談笑の声、食器のぶつかる音、料理の匂い、様々な情報を五感で受け取っていると、店主が料理を運んできてくれた。
「こんばんは。旅の人ですか?この街はどうです?」店主は料理を配膳すると、当たり障りない話を振ってきた。
「ええ。旅の途中で錬金術に興味が有ったので、立ち寄りました。活気が有っていい街ですね。気に入りました。」素直な感想を述べると、店主は気を良くしたのか、機嫌が良さそうに言った。
「観光でしたら、錬金術師様のお墓が有りますので、一度参られると良いですよ。没後に慕っていた人々によって立派なお墓に埋葬されましたから、壮観ですよ。」
それは良い事を聞いたと、店主に礼を言い、晩餐を楽しんだ。
それから店主はマメな性格なのか、食事をしている各テーブルの宿泊客に挨拶をして回っていた時だった。
「おい。この街にはなんかおもしれぇもんはねぇのか?」そんな声を上げたのは少し後ろに座っていた、赤い髪の女だった。赤い髪の女は、冒険者の様で連れの男とこの街へ流れてきたと思われた。
店主は少し緊張してはいたが、その二人組に、自分と同じ様に錬金術師様のお墓を観光地として紹介していた。
「墓なんぞが観光地ぃ?随分しけた街みてぇだな。いっその事その墓暴いてお宝でも探してやるか!」そんな不届き極まりない物言いをしながら大声で笑っている二人組に、店主は顔を顰めたがすぐに表情を、元の柔らかな笑顔に戻した。
「何時までそこでボーっと突っ立ってんだよ!早く酒持ってこい!愚図が!」店主は言い返す訳でもなく言われるがまま厨房から酒を出した後、速やかに奥に引っ込んでしまった。
「碌でもないのが多くて嫌になるね。」そう独り言ち、部屋へ向かう。
このまま静かに寝てくれればいいんだけどと思いつつも、そうはならないであろう確信めいた予感が有った。
その予感は的中し、更に宿泊している部屋まで近かったのが運の尽きだった。騒音が鎮まるまで悶々とした時間を過ごし、ようやく寝付いたのは空が白んで来てからだった。




