錬金術、シンボル、怪しい薬。
「やっと到着したわね!」無事に交易都市“ソーマリヲン”に辿り着き、臀部を擦りながら返答する。
「長かったね……。疲れた……。」そんな事を言う自分に、彼女はやはり厳しく言う
「今後体力増強も課題ね。このままじゃ襲われた時にすぐ死んじゃうわよ。」ゲッと思ったが、死ぬと言われては是非もない、黙って努力するとしよう。……散歩くらいからでいいかな。
「宿を取るにはまだ少し早いね。場所だけ調べて街を探索しようか。」そう提案すると彼女も賛成なのか、何も言わなかった。
時刻はまもなく夕方といったところ。日が傾き始め、大通りには仕事終わりの者、買い物をする女性や、遊び耽る子ども達、皆一様に忙しなく動いていた。
「活気が有っていいね。」大通りを歩きながら周囲を観察していく。錬金術師の街とは名ばかりではなく、見た事もない道具を取り扱ってる店が多く、露店ですら怪しげな薬の様な物が売っていた。そして至る所に街のシンボルであろうか、薬研とフラスコ、蒸留器を模した旗が靡いていた。
「あのシンボル良いね。科学の街って感じ。」異世界で初めて良い気分になった気がする。辺りを何か気になるものが無いかキョロキョロ探していると、ある露店が目に留まった。
「すいません。少し見ていいですか?」退屈な馬車での語学学習の結果、簡単なやり取りは出来るようになっていた。店主である皺の目立つ老人は、俯き無言で手を商品に向けジェスチャーをした。許可を貰えたので並んだ商品を見ていく、何に使うかよく解らない物から、錬金術に使うであろう、シンボルにもある道具が並んでいた。
「これ何かしら?」興味を引く物が有ったのか彼女が口を開く。店主は一瞬目を見開いたが、すぐに俯き、説明をしてくれた。
「これは、錬金術で作られた満開薬という薬じゃ。この薬を植物に掛けると、時期を問わず、花を咲かせる事ができる。但し、木なら花が咲くくらい成長していること、ただの花なら掛けた後花が咲いたら数分で枯れてしまう、条件つきじゃ。」短い時間しか咲かないがね、と老人は言うと薬瓶の栓を開け、路傍の雑草に一滴垂らした、するとたちまち、白い花が咲いた。
「面白いじゃない!これ一つ貰うわ!」彼女の琴線に触れたのか珍しく欲しがった為、銅貨数枚を渡し購入する。それをポケットにしまい、老人に礼を言い、店を後にする。
「そろそろいい時間だから、宿を探そうか。」その後、一時間ほど散策し、必需品などの買い出しもある程度済ませて宿に入った。




