そして、夜。
「まず、今日私たちが降り立ったのがローディアの街ね。」彼女は表示された地図に指を落とし、現在地を指し示す。この国はノルフェイル王国というらしく、王都を中心に見て国土全体の南東方面にいる様だった。
「一先ず、王都に向かうのが良いと思うのよ。この国の中心だし、色々な情報が集まってるはずだわ。神様の頼み事も、そこにヒントが有るかも知れないし。その後各地を周ったり異世界探索に出るのはどう?」
かなり現実的なプランだと感じ、首肯し答える。
「じゃあそれで行こう。良さそうなルートは有るかい?」問うと即座に二つ提案してくる。
「一つ目はまず、北の城塞都市に行くルート、城塞都市はかなりの大都市で、情報を優先するならこっちかしら。二つ目は此処から西に真っすぐ向かうルート、こちらには錬金術師が作ったと言われる、中程度の規模で、交易が盛んな都市ね。此方の利点は物資も、情報も見込めるってところかしら?」続けて彼女は言う。
「どちらに行ってもある程度の成果は見込めるわ。貴方の好みで決めちゃっていいわよ。着いて行くだけだし。」そう言われては自分の興味がある方へ向かおうと、西にある都市を指さした。
「錬金術師の街に行こう。面白い道具なんかも売ってるかもしれないし、錬金術って言うのが気になる。」学者肌の自分にとって、未知の技術というのは非常に興味をそそられる。選択肢は無かったと言っていい。
「決まりね!早速明日、馬車を探して向かいましょう!」彼女は善は急げといった様子で、やる気を漲らせていた。
「そうと決まればやる事やって、さっさと寝ようか。あんなことが有って気分最悪だし。」転移初日に、日に二度も人の悪意を経験し、一つは子どもまで看取ったのだ。気分が良い訳がない。表に出さないよう気にしてはいたが、そろそろ限界の様だ。聡い彼女が気を使って、いつもより燥いだ様子でいるのが、余計に自己嫌悪に苛まれる。
「あまり思い詰めるんじゃないわよ。貴方に非は無かったんだから。」彼女は真剣なトーンに戻し励ましの言葉を掛ける。
「そうだね。心配掛けてごめん。」そう返すと彼女は嬉しそうに言う。
「じゃあストレス発散に食事でも行きましょ。お腹空いたでしょ?」悪気なく言った彼女の言葉に、夕方の出来事を思い出してしまい、胃の奥がムカムカしてくる。自分の小ささが嫌になる。
「ごめん。食欲が出ないんだ。」そう告げると、
「……それじゃあ別の事で発散するしかないわね……。」
そして部屋の明かりが消えた。




