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彼女の隣で、僕は眠る  作者: 粗川燕(あらかわつばめ)
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宿、船、これからの事。

 あまりにも気持ち良さそうに航海しているので、どうしたものかと悩んでいると気配を感じたのか、厨房の奥から健康的な身体つきの、店主と思われる男性が歩いてきた。


 「……待たせて悪いな。宿泊でいいか?」店主の男性は、仕事を任せた優秀な船乗りを一瞥したあと気恥ずかしそうに聞いた。

 辞書をチラ見しつつ頷いて応じる。

 「1泊なら銅貨5枚で、3泊以上するなら安くしてやる。それでよければここにサインだ。」店主は宿帳とペンを取り出しカウンターに置いた。

 「……しまった。お金の事忘れてた……。」とりあえず1泊しようと、サインを書くため左手をカウンターに置かれたペンに伸ばした時、冷や汗が流れた。少し考えれば気づいた物だが、完全に失念していた。


 「お金なら私が持っているわよ。はいこれ。」彼女の言葉に心底助かった……。と安堵する。そのまま左手に硬く少し不格好な金属が現れた。店主が手の甲の宝石を見てギョッと目を剝いていたが、すぐに立ち直ったのを見て銅貨5枚を渡し、宿帳にサインする。簡易な鍵と錠前を渡され、諸々の注意事項を聞く。


 「見ての通りの襤褸宿だ、鍵は掛かるが寝るときは一応警戒しろ。もし侵入されでもしたら、部屋で殺しても文句は言わん。ただ物は壊すな。」この街の治安どうなってるんだと思ったが、頷き続きを聞く。

「夜は自由に出歩きしてもらって構わない。俺か、かみさんが起きてれば一応声だけかけてくれ。……それと夜中はなるべく静かにな。部屋は二階の奥だ、それじゃあな。」店主が言い終わると同時に船乗りに拳骨を落として娘に戻す。娘はア゛ダッと言いながら頭を押さえ涙目になって、店主に叱られていた。


 「……あの子、部屋連れてかない?」彼女は優秀だが、その提案だけは受け入れられそうにない。



 「ようやく一息つけるよ。」部屋に入り一応鍵を掛けると、一人で寝るには少しだけ大きめのベッドに転がる。

 「色々有ったし疲れてるとこ悪いけど、今後の打ち合わせをしておきましょう。」彼女の言に頷き、座り直し向き合う。

 「まず判ったことは、この世界が割と物騒ってこと。店主も言ってたけど、夜半に襲撃なんてことも稀に有るなんて、どこの世紀末よって思ったわ。」彼女はそう言うと、続けてこんな提案をした。

 「対策として変装を使い続ける事、ただ見た目と口調をもう少し変えましょう。……背高くて、何回か頭ぶつけてたの見てたわよ。」バレてないと思ったのに目敏い奴……。少し恥ずかしい思いはしたが、身体の感覚が違いすぎても、行動に違和感が出るかと思い了承する。


 「よろしい。次はこれからの目的地ね。」彼女の言葉に呼応して、生命の書を開き地図タブを表示させた。

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