魂、獣人、猫。
「……行こう。」何度か深呼吸をした後、子どもの亡骸をその場に横たわらせ、立ち上がる。
「気に病むことないわよ。可哀想だけど、ここはそういう世界なんだから。」そう彼女に言われたが、気分は晴れる物ではなく、その心境を悟ったかそれ以上彼女は口を開くことはなかった。
亡骸を背に歩きだそうとすると、背後に気配を感じて思わず振り返る。
「これは……?」視線の先には淡く光る薄い青色の靄が浮かんでいた。それは手で払えば、すぐにでも散ってしまいそうな、儚い印象を持てる程度の弱々しい光だった。
「……君なんだね。」青い靄から弱々しい意思を感じる。これがジョブに依るものだと確信し、問い掛ける。
靄は少し明滅し、縋り付いてくるように近付いてきた。
何をすればいいかが直感的に解る。左手をゆっくりと靄を散らさないように翳し、意志を込め唱える。
「死霊術、吸収」瞬間、靄が手の甲の宝石に吸い込まれていく。途中、靄からは最早意思を感じず、全てを吸い込むまで然程の時間も掛からなかった。
宝石に吸い込まれた靄は、やはり魂だったのだろう。初めてジョブの力を実感しながら、先程の男の子の顔を思い出し、点滅する宝石を見やる。
「……生命の書。」唱え、開かれたアプリに表示される感嘆符。スキルのタブを開き、新規記述を見る。
<ジョブ固有スキル> 吸収 習熟度1 開放 習熟度0
新しく追加された内容に軽く眼を通して、生命の書を閉じる。
「ちょっと周りが騒がしくなってきたわよ。行きましょう。」彼女に促され、頷くと亡骸に一瞥してその場を後にした。
街が暗くなり始めたころ、人通りが多く、賑やかな大通りを歩く。周囲を練り歩き、露店を始め、雑貨屋の様な店や飲食店を覗き、当初の目的である宿を探しつつ、周囲のあらゆる物を観察していった。
「これは異世界って感じね……!」彼女は大通りの雑踏の中に、獣の様な見た目をした人を見つけると、少し興奮した面持ちで言った。
「獣人?って言っていいのかな?今までで一番ファンタジーかもしれない。」先程までの陰鬱な気持ちが少し和らぎ、彼女と会話をする。
「猫っぽい人……可愛いわ。」彼女は猫派だった。
「あんまりジロジロ見るのも悪いね。そろそろ離れよう。もう充分、集まっただろうから。」そう彼女を窘め、宿屋を探してまた歩き出した。




