第七話 上洛 ――京へ
第七話 上洛 ――京へ
道は、京へと続いていた。
長く、険しい道。
だがその先にあるのは――
権威。
そして、天下への扉。
織田信長は、進んでいた。
その背後には、整えられた軍勢。
もはや尾張の一大名ではない。
一つの“勢力”だった。
京。
都は、荒れていた。
戦乱が続き、
秩序は崩れ、
人々は疲れ果てていた。
将軍の力も、すでに形だけ。
この地には、支配者がいなかった。
その中に、一人の男がいた。
足利義昭。
将軍の座を望みながら、
その力を持たぬ男。
「織田殿の力を、お借りしたい」
義昭は言う。
その言葉の意味は明白だった。
力を貸せ。
代わりに、正統を与える。
信長は、静かに聞いていた。
やがて、口を開く。
「よかろう」
それは、単なる協力ではない。
利用。
互いに、互いを使う関係。
やがて――
織田軍、入京。
人々が道の両側に並ぶ。
ざわめきが広がる。
「あれが……織田信長」
噂はすでに届いている。
桶狭間の勝者。
常識を壊す男。
その中心を、信長は進む。
堂々と。
一歩一歩、確かに。
やがて、義昭は将軍となる。
だが――
誰もが気づいていた。
本当に力を持っているのは、誰か。
城の中。
信長は、静かに座す。
京を見渡しながら。
ここは終着点ではない。
出発点だ。
「次だ」
その一言に、すべてが込められていた。
やがて、歯車が軋み始める。
将軍と信長。
表と裏。
光と影。
その関係は、長くは続かない。
だが、この時はまだ――
誰も知らなかった。
この出会いが、
新たな戦の火種になることを。
風が吹く。
京の空に。
その風は、静かだった。
だが――
嵐の前触れでもあった。




