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織田信長  作者: 本間敏義
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第三話 骨肉の争い

第三話 骨肉の争い



尾張は、まだ一つではなかった。




表向きは織田家当主――


織田信長が統べている。




だが、水面下では違う。




もう一人の男の名が、静かに広がっていた。




――織田信勝。




「信長では、織田は守れぬ」


「信勝様こそ、真の当主にふさわしい」




家臣たちの中にも、その声は確実に増えていた。




無理もない。




奇行を繰り返していた兄と、


礼儀正しく穏やかな弟。




どちらが主にふさわしいか――


答えは明白に見えた。




だが、それは“見えているもの”に過ぎなかった。


夜。




静まり返った城内で、


ひそやかな動きがあった。




信勝のもとに、人が集う。




灯りを落とし、声を潜める。




謀反――。




その言葉が、確かにそこにあった。




兄を討ち、織田を奪う。




それが、この場に集った者たちの結論だった。


数日後。




その動きは、信長の耳にも届く。




報せを受けた信長は、


ただ静かに目を閉じた。




怒りはない。


驚きもない。




あるのは――




覚悟だけだった。


戦は、避けられなかった。




尾張の地に、再び刃が交わる。




だが、それは外敵との戦ではない。




兄と弟。




血を分けた者同士の戦だった。


戦場。




兵がぶつかり合い、叫びが響く。




その中で、信長は冷静だった。




迷いがない。




ただ、勝つために動く。




結果は――




決まっていた。




信長軍の勝利。




信勝は敗れ、


その命は、兄の手に委ねられる。


静かな部屋。




向かい合う二人。




信勝は、何も言わなかった。




ただ、兄を見つめる。




そこにあるのは、恐怖か、後悔か。




それとも――諦めか。




信長は、ゆっくりと口を開く。




「織田は、割れぬ」




短い言葉だった。




だが、それがすべてだった。




次の瞬間。




決断は、下された。


やがて、尾張から“もう一つの声”は消える。




反対する者も、疑う者も。




すべてが静まり返る。




残ったのは――




ただ一つの意思。




信長。


人は言う。




――冷酷だと。




だが、違う。




これは選択だ。




生き残るための。




そして、前へ進むための。


風が吹く。




尾張の空の下。




一つだった織田は、


ようやく“本当の意味で一つ”になった。




その中心に立つ男は、


もう“うつけ者”ではない。




敵も、味方も、理解し始めていた。




この男は――




止まらない。

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