表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/14

第6話『ジャージを間違えた、体育の時間』


 ――昼休み終了のチャイムが鳴り、女子たちは全員いなくなった。なぜなら、次の五限は体育だ。昼飯の後で辛いが、授業に組み込まれているので仕方ない。


「体操服着て……ジャージも……。――は」


 体操服とズボンは履き替えた。そして、ジャージを上から着ようとしたのだが、取り出したジャージを見て俺は動きが止まった。

 なんか、俺のじゃない匂いがする。


「なんだこれ……こんな柔軟剤使ってな――。あ」


 気づいた。これ、俺のジャージじゃない。エマのだ!

 間違えて入れてきたのだろう。となると、エマは俺のジャージを持ってるはず。


「取りに行く……いや、無理じゃねえか」


 取りに行こうと思ったが、やめた。無理なのだ。この学校は一学年に八クラスあるのだが、体育の授業は一年の二クラス、二年の二クラス、という感じで行うのだ。


 そして、俺は二年二組、エマは一年一組だ。同時に授業があるため、無理だった。


「仕方ない。これ着るか。多分怒ったりはしてこないだろ」


 良かったことに、俺とエマは身長がほぼ一緒だ。多分、同じサイズを買っているだろう。

 ――そして、着てみるとやはり俺と同じサイズだった。

 ――が、しかしだ。何か、違和感がある。


「……なんかダボッとしてる? 胸周りがめっちゃ楽になってるな……」


 何か、胸周りが楽だ。なんでだろう、と思ったが、すぐ分かった。

 ――エマ、胸大きいんだった。


「それにしても、一年は今日から体育だってのに、こんななるか? あいつ、学校の服買ってから結構これ着てただろ」


 体育は今日からだというのに、エマが初めて着るはずのジャージの胸周りが楽なのはおかしい。真偽は分からないが、多分、服を買ってから、エマが何回も着ていたのだろうと俺は結論づける。


「――あ、やべ、早く体育館行かないと!」


 刻一刻と迫る時計を見て、俺は教室から出ていった。


 

◆◇◆◇



「――で、体育のオリエンテーションは終わります。これからの授業では、一年が外、二年が体育館で授業を行いますが、今日は自由なので好きなことしていてください」


 体育の先生による、これから一年間の授業の説明が終わった。一年と二年それぞれの二クラスが体育館にいるが、自由と言われ、何人もの男子生徒は「サッカーしようぜ」と言って、外に出ていった。


 ――一方、俺はというと、


「別にやることないんだよなー。お前どうする?」


「僕もすることないからね。バスケやってる人たちいるし、混ざろうかな」


 幼稚園からずっと一緒の親友で、同じクラスである久我(くが)(みなと)と、体育館の壁を背もたれにしながら話していた。

 湊は爽やか風のイケメンで、勉強も運動も出来る文武両道なため、めっちゃモテモテだ。


 ――まあしかし、実は湊はエマの従姉妹である(あまね)優奈(ゆな)と付き合ってるのだが。


「俺はここいるから、混ざってくれば?」


「そう? じゃあバスケしてくるね」


 そう言う親友に、俺は「おう」と返すと、そのまま地面に座る。そして、バスケをやってる湊を見るのだが、これはまた上手なものだ。

 俺はバスケのルールが分からないのだが、それでも上手いなあと思う凄さが見せられる。


 ――そうしていると、声をかけられた。


「れーくん、何してるの?」


「エマ? 何もすることないから、湊を見てるだけ」


「ああ、お姉ちゃんの彼氏の?」


「そうそう。お前も座れば?」


 俺は自分の横を手のひらで叩く。すると、エマは嬉しそうな顔をして座り、くっついてきた。


「近いな」


「れーくんが座ればって言ったんじゃん? 近づくに決まってるでしょー」


「はいはい。――って、そうだ、ジャージが……」


「あ、これ、れーくんのだよね? アタシのじゃないなーって思ったけど、入りそうだし着てみたんだ」


 エマも、俺のジャージを着ていた。同じサイズだったし、入るのも当然か。――そう思うのだが……。


「……エマ? なんかキツそうじゃないか?」


「え? ああ、なんか胸周りがキツくて。伸びちゃったらごめんね?」


「いや、それは別に良いけど」


 俺のジャージのため、胸周りがキツそうに見えていたのだが、やはり、キツかったらしい。だったら、


「じゃあ着替えるか。俺も脱ぐから、エマも脱いで」


 ジャージを脱いで、交換しよう。そう提案したのだが、エマは「待って」と言って、着ている俺のジャージを握っている。


「このままで良いから。うん、このままが良い」


「そう? ま、良いけどな」


 ――別に、会話はない。しかし、気まずいことはなく、普通に安心出来る。俺はただ、バスケをしている湊を見て、「あー上手ー」と思っていると、エマが「ねぇ」と話しかけてきた。


「今日さ、アタシのためにカレーパン買ってくれたんでしょ? お姉ちゃんが言ってたよ?」


「ああ、お前も弁当買ってないと思ってたから、一応買ったんだよ。で、持っていこうとしたら、お前が男子に囲まれてて、行くタイミングを見失ったってわけ」


「あーだからお姉ちゃんが持ってきてくれたんだ。不思議だったんだよね。買ったんだったら、自分で渡せばいいのにって」


 なんで俺が渡しに来なかったんだろうと、エマは思っていたらしい。で、俺の説明で納得したエマは胸の下で腕を組んでいっぱい頷いた。

 

「やっぱ、れーくん優しいよね? アタシ、れーくんのそういうところ大好きだよ♡」


「ああ、ありがとう」


 俺がそう答えると、エマは俺の右腕にぎゅーっとし始めた。「力強!?」とも思ったが、幸せそうな笑顔をしているし、離すのも可哀想だ。


 ――それに、嫌な気持ちもしないしな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ