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第30話『夏祭り1』


「――わー、すごい、人がいっぱいだねー」


「だな。屋台もたくさんあるし、人多いし」


 週末、俺とエマは夏祭りに来た。俺は普段通りの白シャツを着ているだけだが、エマは朝顔柄の浴衣を着ていて、本格的だ。

 背中まである長い金髪もまとめて団子にしていて、花柄の簪でとめている。


 普通に似合ってるな。


「ん? ジロジロ見てきてどうしたの? 可愛くて目が離せなかった?」


「別に。ただ似合ってるって思っただけだ」


「あれ、意外と素直じゃん。でも良かった! 似合ってるって思ってくれるなら!」


 そう、エマは笑顔で言ってくる。――本当に、驚いた。今日になって突然、浴衣を着るとか言い出したから。

 元々、俺の部屋に住み始めた日から浴衣を持ってきていたらしい。

 

 俺の持っている服は少ないし、クローゼットのスペースのほとんどはエマの服だから、浴衣があるとか知らなかった。


 まあ、俺も動画を見ながら着付けを手伝ってあげた。

 まさか、こんなに似合うとは思ってもいなかったが。


「――どうした?」


 人混みの中を歩いていると、エマが突然足を止めた。一体どうした? と思って顔を見ると、


「えーっと……たこ焼き、かき氷、焼きそば……美味しそう! 全部買っちゃおう!」


 なんて食い意地が張ってるんだ。一気にそんだけ買うつもりなのか? どうやって持つの?


 という俺の気持ちを伝えるより先に、エマは早歩きし始めた。

 ――仕方ない。


「――ふぇ……? れ、れーくん?」


「お前は目を離すとすぐ迷子になるからな。手握ってろ」


「え、あ、うん!」


 エマは昔から、お祭りの日ははしゃぎすぎてすぐどこかにいなくなってしまう。俺がエマの左手を繋いで、勝手にどこかに行かないようにしないと。


「じゃ、まずはたこ焼きから!」


「わかった」


 エマと一緒にたこ焼き屋まで歩いていくが、これまた人が多い。だがまあ、エマは身長高いし金髪で目立つから、見失ってもすぐ見つかりそうだな。

 ――まあ、俺が手を離さないようにすればいいだけか。

 

「――ありがとうございまーす!」


 エマがたこ焼きを一パック買うと、俺は手を引いて列から抜ける。俺は買わなかったが、六個入りで美味しそうな匂いがする。


「ねえれーくん、爪楊枝持って?」


「ん? わかった」


 パックに付いていた爪楊枝を渡され、俺は左手に持つ。そしたらエマはパックを俺に向け、


「食べさせて?」


「自分で食えるだろ」


「だってアタシの左手はれーくんが繋いでるしさ? 離せないじゃん? アタシの右手はパックを持たないといけないからさぁ」


「はぁ、仕方ない。――ほら」


 たこ焼きに爪楊枝を刺し、エマの口に持っていく。パクッと口に含んで、エマはもぐもぐし始めた。


「美味し〜。れーくんも食べてみてよ」


「そうだな。――うん、熱いけど美味い」


「でしょでしょぉ〜」


 できたてだから熱いが、普通に美味い。何個でも食える美味しさだな。

 俺は共感を求めようとして、エマを見る。

 そしたら、ニヤニヤしているのが目に入った。


「なんだよ」


「最近のれーくんって、平気で間接キスするよね? 海に行ったときも、アタシのスプーンですくったかき氷をすぐ食べてたしさ?」


 ――。――――。あ。しまった。完全に、無意識だ。間接キスとか、全然気にしていなかった。でもそれが、エマにとってはからかうための材料になってしまうようだ。


「む、無意識だったんだよ。お前も何も言ってこないし」


「へぇ、無意識ねぇ〜? まーいっかー。そういうことにしてあげよーう」


 ――いや、本当に無意識なんだが。変な勘違いしないでくれ……。だが、どれだけ弁解しても煽るのは止まらないだろう。何も言わずにしておくか。

 


「――よし! 次はかき氷!」


「温度の差えぐいな」


 アッツアツのたこ焼きを食べたあとに、冷たいかき氷を買いに行く。口の中がおかしくなりそうな気がするが、良いか。


 大量にあるかき氷屋の中から一番空いているところに並びながらも、エマは俺が爪楊枝で刺したたこ焼きをパクパク食べている。


「――あ、あと一個。アタシが四つも食べちゃったし、最後はれーくんが食べていいよ」


「ああ。――美味いな」


 最後の一つを食べると、俺はエマが持つパックを取って、持ってきていたゴミ袋に入れる。


 ――そしてしばらくすると順番が回り、俺はブルーハワイ味、エマはイチゴ味のかき氷を買った。

 先日、海に行ったときはエマがブルーハワイ味で俺がイチゴ味を食べていたが、逆になったようだ。


「冷た……でも美味え」


 かき氷のカップとスプーンストローを一緒に持てるわけないから、繋いでいた右手は離して、俺はかき氷を一口。

 頭がキーンとするが、さっきまで熱いたこ焼きを食べてたからちょうどいい。


「頭痛ーい!」


「ゆっくり食え」


 目を細めて、頭をおさえながらパクパク食べているエマ。――本当に美味そうに食べるんだな。めっちゃ笑顔だし。


「花火まで時間あるけど、次はどうする?」


「じゃあ、お話しながらたくさん歩こ? それに、焼きそばもりんご飴もフライドポテトも食べたいし!」


「その身体のどこに入るんだ……?」


 祭りでテンションが上がってるのか、食べることばかり考えているエマに、俺はそうツッコんだ。

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