第31話『夏祭り2』
「これも美味しい! 買ってよかった!」
「……そうか。良かったな」
俺は、焼きそばを食べているエマと歩き回っていた。
――たこ焼き、かき氷、焼きそばと、かなりの量を食っているエマ。それなのに、全然つらそうじゃないし、さらになにか食べようと考えていそうだ。
「よくそんなに食べれるな?」
「普段だったら食べないけど、祭りだからねー。いっぱい食べて楽しまないと!」
まあ、そうだな。それに、いっぱい食べてる姿も元気でいいと思うし。
「――よーし食べ終わった! あ、ちょうどそこにゴミ箱あるから捨てに行こ!」
「わかった。――走るなって。危ないだろ」
ゴミ箱まで走ろうとするエマの左手を掴んで引き寄せる。浴衣で走ろうとするとかバカか。絶対転ぶだろ。
「えへへ〜。そんなにアタシの手を繋ぎたかった?」
「浴衣で走ったら転ぶんじゃ? って思っただけだわ」
「アタシの心配してくれてたんだ〜? 嬉しいなあ〜」
本気で嬉しいと思ってんのか、からかおうとして言ってんのか、その判断は俺にはできん。
顔を見てみても、どっちにも思えてしまう。
――ま、そんなことどうでもいい。
「早く捨てるぞ」
そのままエマをゴミ箱まで引っ張って、俺とエマはそれぞれゴミを捨てる。
「次はどこ行く?」
「もうちょっとで花火始まるし、場所取りに行くか」
「花火! 良いね! 行こ行こ!」
それから、俺らは花火を綺麗に見れる場所を探しに歩き始めた。――のだが、
「お前近くね?」
「えー? だって、転んじゃったら大変だしぃ? れーくんにくっついてたら安心でしょ?」
「……まあ」
だからといって、俺の右腕にぎゅーっと抱きついてくるのはどうかと思うが。てか、力強いしちょっと痛い。
――まあいいや。良い場所探して、花火までゆっくりしよ。
そう、思っていたら、
「――あれ、エマと零じゃん」
「あ! お姉ちゃん!」
「なんだ、お前らも来てたのか」
偶然出会ったのは、俺の親友の湊と、エマの従姉妹の優奈だ。
恋人だから、夏祭りデート中なのだろう。
湊も優奈も、浴衣を着ていて本格的だ。
「……ん? どうした?」
「いやぁ、なんか二人の距離近いなーって思ってさ。アタシが知らない間に、恋人になったとか?」
「違うわ」
変な勘違いをされそうだったから、俺はキッパリと否定する。――なんか、俺の腕を抱きしめる力が強くなった気がするが。
「ふーんそう。――それにしても、エマ可愛いね〜。さっすがアタシの従姉妹! 浴衣も髪型も似合ってるし、めっちゃ可愛い!」
「えへへ〜! ありがとお姉ちゃん! お姉ちゃんも可愛いよ!」
「えーそうかなぁ? ありがと!」
――。そんな従姉妹の様子を見て、俺と湊は目を合わせる。考えてることは一緒だろうな。
「身内バカだな」
「身内バカだね」
「「バカってなんだバカってー!」」
それもハモるのかよ。まあ俺らも人のこと言えねえけど。
「――じゃ、アタシたちは行くねー。二人も楽しんでよ? じゃ、湊、行こ!」
「うん、行こっか。じゃあね」
手を振ってくる二人に俺も軽く振り返す。あいつら本当にラブラブだな。優奈のやつ、ずっと湊の腕に抱きついていたし。
――うん、やっぱなんでもねえわ。
俺は、腕に抱きついているエマを見る。そしたら、青い瞳と目が合った。
「お姉ちゃんに、恋人に勘違いされちゃったねー。ほかの人達にも、アタシたち恋人に見えるのかな?」
「……まあ、普通の友達同士ならここまでくっつかないだろうし、うん。そう見えてても不思議じゃないか」
「ふーん。れーくん、嫌がらないんだね? お前と恋人に見えるなんて嫌だ。とか言ってきそうだったのに」
「俺をなんだと思ってんだよ。そんなことは思ってねえし言わねえよ」
――と、本音を言ったところで、俺はまずいと思ってしまう。「そんなこと言わねえ」なら、問題はなかった。しかし、「そんなこと思ってねえ」って言ってしまえば、
「それじゃあ、アタシと恋人になるのは嫌じゃないってこと!? えへへ〜。照れちゃうなぁ〜。嫌とかは思ってないんだぁ〜」
「解釈がめちゃくちゃすぎる!」
「えー。じゃあ、れーくんはどんな女の子がタイプなの?」
「質問が急すぎるだろ」
なんでそっちの話になるんだよ。と、文句を言おうと思ったら、
「そういえば、聞いてなかったなーって思ってさ。答えてよー。明るい子? 大人しい子?」
「お前が主導権握るのか……。――うーん、まあ、明るい方が……」
どっちかというと俺は暗い方でインドアだから、明るい子に引っ張ってもらった方がいい気もする。
「明るい子ねー。じゃあ次は、頭良い子とおバカな子、どっち?」
「頭良い子かな。やっぱり一緒に過ごすとなると、その方が安心できる」
「はいはいはい頭良い子ねー! じゃあ次は〜」
なんかどんどんハイテンションになっていくんだが、なにこれ。
といった俺の不安を打ち消すように、エマは質問をしてくる。
「身長とかどれくらいが理想? キスしやすいのは十五センチ差とか言うよねー」
「いや、別に高くても低くても良いけど……」
「じゃあ! 強いて言えば、高身長と低身長どっち!?」
「ん……高身長かな? 自分と同じくらいの身長が一番いいんじゃないか?」
俺は顎に手を当てながらそう言うと、
「やったー! 全部アタシに当てはまってるじゃん!」
「へ?」
「だって、アタシは明るくて頭良くて、れーくんとの身長差はたったの五センチ! れーくんの言ってた、自分と同じくらいの身長に当てはまるよ!」
「い、いや、そ、それは……」
別に意識して答えてた訳じゃないのに、全部こいつに当てはまっていた。
――にしても、なんでこいつこんなに嬉しそう? なんだ?
そんなに俺の好みに当てはまってたのが嬉しかったのか?
――おっと、やばい。自意識過剰な考え方になってきたな。やめよう。考え直せ。
そう思っていると、
「それじゃ、今度はお返しにアタシのタイプを教えてあげよう!」
「いや、別に……」
「アタシのタイプは、かっこよくて頭良くて身長が高くて……」
「理想高っ!?」
そんなやつなかなかいないだろ。ドラマの見すぎだ。
「ところどころ天然なところもあって、いつも大切にしてくれて……」
いやまだあるのかよ。どんだけ強欲なんだこいつ。
「アタシが引っ張ってあげないといけないくらい大人しい人で、いつも一緒に過ごしてくれて……あとは……」
どんだけあるの? まだ続きそうな勢いだけど!?
「あとは……こんなアタシのために、色々と頑張ってくれた人……とか?」
俺の腕をさっきよりも強く締め付けながら、なんかちょっと顔を赤くして言ってくる。
理想高すぎてビビるわ。
「へー。そんな理想に当てはまる男はいないだろ。夢見すぎ」
「えーいるよ! 絶対いる!」
「いないって。ドラマの見すぎだぞ」
「違うから! 本当にいるの! アタシが一番よくわかってるんだから……!」
そう言って、頬を膨らませてさらに俺の腕を締め付けてくる。そろそろ痛いんだが?
そんな理想的なやつがいるわけねえのにな。
――ん? そういえば、なんか理想のタイプっていうより、実在するなにかを言うような口ぶりだった気が?
「お前……今のって理想のタイプじゃなくて、もしかして本当にいる人のこと言ってる?」
「ふぇ……!? あ、え、えと……それは……」
なんか急にタジタジし始めたぞ。いるのか!? 誰!? 新しいクラスメイト!?
「クラスメイトか?」
「もう、違うよ! バカバカバカ!」
「バカ言い過ぎ」
「もういいから、黙って!」
めっちゃ顔を赤くして、頬を膨らませている。からかいがいがあるが、ここでやめといてやるか。
――にしても、本当に誰だ?
お知らせ
本作を読んでいただきありがとうございます。
これからも更新を続けていきたいところですが、作者の私が受験生ということもあり、ここで一度投稿をやめようと思います。
再開時期は未定ですが、来年の3、4月くらいには投稿できるようにしたいと思っております。
よろしくお願いします。




