第27話 side Emma『楽しい海の時間!』
「わーすごい! 綺麗な海だね!」
「ほんとだな。これなら電車で二時間かけて来た甲斐があった」
水着を買ってから五日。アタシはれーくんと海に来た! ほかにも人がいっぱいいるけど、ここは広いからあんまり気にならないかなー。
……にしても、試着のときは言ってくれたのに、今日はアタシの水着姿になにも言ってくれないなー。可愛いとか似合ってるとか言ってくれていいのに。
あ、もしかして心の中で思ってるとか?
まさかね。
「じゃ、海行くか?」
「あ、その前に日焼け止め塗らないと。今日暑いから焼けちゃうよー」
焼けたら肌も剥けるし、痛いし嫌なんだよねー。日焼け止めクリーム持ってきて良かった!
アタシはビーチバッグから日焼け止めクリームを取り出すと、
上半身と下半身に塗っていく。――あーでも、背中届かないなあ。れーくん、塗ってくれるかな。
そう思っていたら、
「塗り終わったら貸してくれ」
と、言ってきた。頼むなら今しかない!
「うん! いいよー。あ、そうだ。アタシの背中塗ってくれない? 手が届かないからさ」
「わかった」
やったー! やっぱり優しいよねーれーくんは。日焼け止めを渡してあげたら、アタシの背中を塗り始めた。
――れーくんの手あったかい。何度も触れてくるからちょっとくすぐったいけど。
「――こんなもんか?」
「うん! ありがと! じゃあ次れーくんの番ね! 背中塗ってあげる!」
「ありがとう」
今度は、れーくんが自分の身体にクリームを塗り始めた。そして、アタシは背中に塗ってあげる。
――いつも服着てるからわからなかったけど、意外とたくましいな。ちょっとびっくり。
あれ、なんかちょっと震えてるな?
「どうしたのれーくん? アタシの手が背中にあるとドキドキするとか?」
「ちげえよ。くすぐったいだけだ」
まあ知ってるけど。れーくんはこれくらいでドキドキしないだろうし。毎日一緒に抱き合って寝てるんだから!
「ふーん。そっか。ま、いいや! 今日は楽しもうね!」
「ああ、それはもちろんだ」
よし、れーくんも楽しむ気あるみたい! アタシのために海に来てくれたけど、れーくんにも楽しんでもらわないと!
「あ、おい……」
「いいからいいから〜!」
アタシはれーくんの右手を取って、海まで引っ張っていく。――やば、咄嗟とはいえ、手繋ぐのって結構ドキドキする……。顔見られないようにしないと。
「――ほら、れーくん!」
「あ、お前やったな!? ほら!」
海に入ると、アタシはすぐに水を飛ばした。そしたら、れーくんも反撃してきた。あんまりこういうのしないタイプかなーって思ってたけど、笑顔で楽しそう。
――そういえば、れーくんの笑顔ってあんまり見たことない。可愛いし、かっこいいからもっと笑って欲しいな。
――水をかけ合うのを続けていたら、お腹空いてきちゃった。ちょっと遠くを見たら、お客さんがいっぱいいる建物を見つけた。へー、かき氷か。良いね!
「あそこ、かき氷売ってるんだって! 行こ!」
アタシはれーくんの手を掴んで、また強引に連れていく。
列に並んで、アタシたちの番になると、
「――イチゴ味のかき氷と、ブルーハワイ味のかき氷を一つずつお願いします」
「はいよ。ちょいとお待ち」
れーくんがおじさんに注文したら、おじさんはテキパキした行動でかき氷を作り始めた。慣れてるんだなー。すごい。もうできちゃったよ。
しかも一つ三百円だし安すぎ!
「ありがとうございました」
れーくんからブルーハワイ味を受け取ると、アタシはスプーンストローですくって食べてみる。うん! すっごい美味しい! 今日みたいな日にピッタリ!
「ん〜! 美味しい!」
「だな。量も多いし、今日みたいな暑い日にピッタリ」
れーくんも同じこと考えてたみたい。アタシたちって所々息ぴったりなところあるんだよねー。れーくんは気づいてるのかな。
――まあそれより……せっかくだし、れーくんにあーんしてあげようかな。
「……れーくん、あーんして?」
「え? うん」
――アタシが頼んだら、れーくんは素直に口を開けた。アタシはすくったかき氷を突っ込んだら、美味しそうに食べた。
れーくんって、最近はあーんをお願いしたら素直に口開けてくれるんだよね。環境の変化かな?
「へぇ。ブルーハワイも美味しいな。お前もほら」
――まさかれーくんからやってくるなんて。でも、断る理由もないし、嬉しいし、食べよ!
「どうだ?」
「うん、美味しいね! ――あ、そうだ、知ってた? かき氷のシロップって味が同じらしいよ?」
「知ってる。確か、色と香りで違う味に感じるんだったか?」
「知らない!」
「知らんのかい」
――そんな談笑を続けながら、アタシもれーくんも食べ続けるんだけど、思ったことがある。
これ、間接キスだよね。でも、れーくんは気にしてなさそうだし、なにも思ってないのかも。
――夕方になって、アタシはれーくんと砂浜に座って海と夕焼けを眺めてる。綺麗だなー。
「――れーくん、今日は楽しかったね」
「だな。海に来たのとかもう何年ぶりか。お前と来れて良かったよ。ずっと楽しそうだったから、俺も楽しかった」
「アハハ、れーくんにしては真面目なこと言うね。でも、そうだね。アタシはれーくんと一緒にいるのが一番大好きで、楽しいからさ。二人で楽しめたのは嬉しいなー」
「……そっか。――じゃあそろそろ帰るか。二時間かかるから、早く行かないとな」
れーくんが立ち上がったから、アタシはすぐに左手を掴んで、立つ。
「どした?」
「まあ、せっかくだしさ。手繋ごうよ。良いでしょ?」
「あ、ああ、良いよ」
れーくんはそう答えたら、前を向いて歩き始めた。
――やば、今日って何回手繋いだ!? 強引すぎたかな……。ドキドキして、身体が熱いよ……。絶対に顔を見られないようにしないと。
◆◇◆◇
電車に乗って席に座ったら、アタシはすぐにれーくんの左肩に頭を乗せる。それも、目を閉じて、眠ってるように。
「おつかれ。楽しかったな、エマ」
そんな声が聞こえた。右手で頭をなでなでしてくれてる。嬉しいな。
寝たフリしないと、恥ずかしくてれーくんの肩に乗せられないよ。そうは言っても、今でも心臓バクバクなんだけど。
「ち、力強……。外れねえ……」
そっか。左手をアタシは握ったままだからね。寝た今なら外せると思ったのかな。――でも、ダメだよ。外させないよ。このままずっと、手を繋いでいたいから。
一緒に住み始めて、四ヶ月くらいだけど、アタシの気持ちは昔から変わらない。れーくんが大好き。
だから、れーくんに好きになってもらえるアタシになるんだ。
――れーくんはアタシのことを、ただの幼馴染みたいにしか思ってないようだけど。
――。――――。本当に?
アタシの気のせいなら恥ずかしいけど、最近のれーくんはアタシが近づくと身体が熱くなってる。
寝るときも、相変わらず抱き合って寝てるけど、れーくんの胸に顔を埋めてると、心音がバクバクしてる。
――まさか、ね。




