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第20話『一緒に食べるか』


「――おっはよう!!」


「――ッ!? 力強ぇって!」


 朝、教室で自分の席に座っていたら、後ろから思いっきり背中を叩かれた。振り返ってみると、憎たらしいニヤニヤ顔をした優奈(ゆな)と目が合う。


「……なんだよ」


「またまたーわかってるくせに。エマにちゃんと言ってあげた?」


「……まあ。だが、あいつめちゃくちゃからかってきたぞ?」


「あららー、エマったら恥ずかしがっちゃって」


 あれのどこが恥ずかしがってるんだ? あれは確実に俺をバカにする顔だっただろ。

 そんなことを考えていたら、


「あれ、言ってなかったっけ? アタシが零をからかうのは面白いとかバカにしたいからとかだけど、エマは恥ずかしいときにからかってるんだよ?」


「――。じゃお前の方がタチ悪いじゃねえか!?」


 ……にしても、恥ずかしいときに、ねえ。

 ――いやいやいや、思い出しても、あいつがからかってるときに恥ずかしがってる様子はないんだが?


「お前の勘違いだろ。あいつもお前と一緒でタチ悪いだけだ」


「は、従姉妹の言葉を信じないわけ? やっぱり零はアタシよりエマのことよく知らないよねー」


「いや、俺の方が――」


 俺の方がよく知ってる、なんて豪語する気はないが、この場では言いたくなってしまった。だがそこまで言って、失敗に気づいた。


 だって、優奈がニヤリと口角を上げたんだから。


「へぇー? 従姉妹のアタシより知った気でいるんだ? 子供の頃からよく遊んでたし、アタシの方がエマのこと知ってるよ?」


「俺だって幼馴染だからよく遊んでたわ。今だって同居してるし」


「うっわーそれ持ってくるのズルくない? まいいけど。それよりさ」


 急に話を変えるのかと思って、俺は「なんだよ」と返した。すると、


「なんで張り合ってきたの? エマのことでアタシに勝ち誇って欲しくなかったとか? 独占欲ですかー?」


「だ、だからちげえって!! なんかその……とにかく違うからな!」


「ムキになってるねー。面白いなー」


 本当に、なんなんだこいつは……。



◆◇◆◇



「――ふぅ、やっと昼休みか」


 四限が終わって、ご飯の時間だ。(みなと)と食べようかなーと思いながら、カバンを開けると、


「……あれ? え?」


 おかしい。弁当がない。エマが朝から作ってくれたはずなのだが。

 ――あ、まずい。机に置かれてた弁当、持ってくるの忘れてた。


「ヤバ……せっかく作ってくれたのに……。机に置いたままだから、帰ったら食べられないよな……」


 冷蔵庫に入れていたら、帰ってからでも全然食べられるだろうが、机に朝から置きっぱなしだともう食べれないと考えるべきだ。――エマに悪いことしてしまった。あとで謝らないとな。


「……はぁ、パン買ってこよ」


 購買でパンを買おうと、俺は財布を持って教室後方のドアまで歩く。

 そのときだった。


「――え?」


「あれ、れーくん。ちょうど良かった!」


 なにがちょうどいいのか、なんでここにいるのか聞こうとしたが、それより先にエマが右手に持つなにかを伸ばしてきた。


「はい、お弁当! 持っていくの忘れてたでしょ? 机に置いたままだったよ?」


「ま、じか……。持って来てくれたのかよ。ありがとう」


「もーう。れーくんって頭いいのにちょっと抜けてるよねー。せっかくアタシがお弁当作ったのにさー?」


「それはマジですまん……」

 

 こればかりは本当に悪いことをした。少し頭を下げたのだが、エマの左手にもう一つ弁当箱があった。


「……エマ? それなに?」


「これ? アタシのお弁当だよ?」


「ああ、優奈と食べようと思ったのか?」


「ううん! れーくんと食べに来た!」


 そんな笑顔しなくても……。と言いたくなるくらい明るい笑顔で俺を見てきた。まあ、断る理由もないから、俺はエマを連れて自分の席まで行った。


「あ、でもれーくんってお姉ちゃんの彼氏と仲良いじゃん? 食べなくていいの?」


「良いんだよ。あいつとはいつも食べてるし」


「ふーん。あ、そうだそうだ! お弁当見てみて? 今日頑張ったんだよ?」


 自信ありげにエマが言うから、俺は弁当箱を開く。そしたら、美味しそうな卵焼きや唐揚げが入ってた。


「へぇ、美味しそう。あれ、この唐揚げって?」


「そうだよ! 昨日のがちょっとだけ余ってたからさ。入れてみたんだー」


「じゃあ、いただきます。――は?」


 さて、食べようとしたら、箸で掴もうとした唐揚げを、エマが箸で取った。

 もう意味がわからん。弁当箱とエマを交互に見ていたら、


「れーくん、口開けて?」


「え? は――ッ!?」


 喋るときに口を開けたら、そこに唐揚げを突っ込まれた。目を見開きながらも、吐き出すわけにもいかないから、ちゃんと噛んで食べる。


「――はぁ、急になんだよ」


「どう、美味しい?」


「そりゃ美味いけど。お前が食わせる必要あったか?」

 

「うーん、どっちかって言うとないかな?」


「ないのかよ」


 エマのことだから、「アタシに食べさせて貰ったら嬉しいでしょ」とか言いそうだと思ったのに。


「――ま、いい。早く食べるか」


 ――そして、俺はエマと雑談しながら昼休みを過ごした。

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