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第17話『やはり同じ血だ』


「――どんな感じだ?」


「えーっとね、みんな楽しそうにプレーしてるよ! やっぱりバレーって良いなー」


 体育館の外から、窓を通して女子バレー部の練習を見ているエマ。俺は壁に背もたれして見ていないのだが、エマは目を輝かせて見ている。


「やっぱりバレー好きなんだな」


「うん! ――でも、れーくんはなんでそこにいるの? 見ればいいのに」


「バレー部でもない俺が見てたらヤバいやつに思われるだろ!?」


 バレー部でもないのに練習を覗き込んでいたら、どれだけ女子に引かれるか。想像しただけで怖い。


「――あ、目が合った」


「誰と?」


「わかんない! 二年か三年かな?」


 まあ、外からずっと見ていたらそりゃ目は合うだろう。まさか勧誘に来るんじゃないだろうなと思っていたら――、



 案の定だった。


「――君、一年生? どうしたの?」


「え、あ! バレー部が気になるなーって思いまして! 見てたんです!」


「へー。中学のときはバレー部だったの?」


「はい、そうですね!」


 ――うん、勧誘が始まった。エマは身長が170cmあるし、元バレー部となると相当引き入れたいのかな。


 あの女子の顔は見たことないから、先輩だろう。部長なのかも。


「――それで、入部する気はある?」


「そうですねー、今ちょっと悩んでまして。もうちょっと観戦してて良いですか?」


「うん! どうぞどうぞ!」


 休憩が終わったのか、先輩はまた戻っていった。


「どうするんだ?」


「まだ悩み中だよー。たしかに見ていても楽しいし、面白そうだけど、時間がなー」


「あーそうだな。部活に集中してたら帰るのが遅くなって、勉強できないもんな!」


「いや、別に勉強じゃないんだけど……」


 なんだ違うのか。と俺は呟きつつ、腕を組んで、


「じゃあなんの時間だ?」


 と聞いてみる。そしたらエマは頬に手を当てて、視線を俺から逸らし、


「れーくんと過ごす時間が短くなっちゃうじゃん」


「――。――――。え?」


「な、なにその顔? なんか言ってよお!」


 顔を赤らめて、そう叫んできた。予想外の答えだったため、俺はただぼーっとしていると、


「もう、信じらんない! れーくんもなにか言ってよ! ばか!」


「えぇぇ……」


 謎にディスられて、俺はただ呆然と立ち尽くすしかなかった。



◆◇◆◇



「――と、いうことがあってだな。俺はなんて返すのが正解だったと思う?」


「……うん、零って頭はいいのにバカだよね」


「エマといいお前といい、なんで急にディスってくるんだ……」


 あのあと、エマはもう少し観戦したいと言い出した。仕方なく、俺は優奈(ゆな)の天文部の部室で時間を潰すことにした。


 なんであんな叫ばれたのかわからなかったから、エマのことをよく知る優奈に聞いてみようとしたのだが、こいつも地味に酷いこと言ってきた。


「だってさ、要は零と一緒にいる時間を減らしたくないってことじゃん? 『俺も短くなるの嫌だな』くらい言えばよくない?」


「――? なんで?」


「ああ、バカすぎるこいつ……」


「でも、あいつはバレーを楽しそうに見てたんだよ。それなのに、もし俺がそんなこと言ったら、入部やめちゃうかもしれないだろ?」


「え? ま、まあ、それはそうだけど……」

 

 仮に俺が言ったとしたら、なんとなくエマは入部をやめてしまう気がする。俺のたった一言で、あいつの高校生活を左右させたくない。


「まあ、そうだね。零がそんなこと言ったら、エマは入部とか絶対しないだろうね」


 従姉妹の言葉だ。信用に値する。俺も同じように考えてたし。


「とはいえ、このまま何も言わないまま過ごすってのもあいつに悪い。どう返すか……」


 エマはなにか言って欲しそうだったし、家に帰ったあとにでも言ってやろうと思う。が、何言えばいいかマジで思いつかない。

 

 俺が「うーん」と唸っていると、優奈も同じように唸りだした。

 

「あ、じゃあこういうのはどう? 『俺もお前と過ごす時間がなくなるのは寂しい。でも、俺はお前を応援するから入部しろ』とか? ぎゅーって抱きしめながら言えばいいんじゃない?」


「うん、ふざけてるか?」


「ふざけてないですー」


「はぁ……でもまあ、行動はともかく言葉はいいかもな。寂しいだけ言っちゃえば、あいつ入部しなくなるからな。――応援するから、か」


 抱きしめながら言う。とかできるわけないが、発言は結構いいと思う。エマに対して合った返しだ。よし、早速帰ってから言おう。


「よし、ありがとな、相談乗ってくれて。体育館行って、エマと帰るわ」


「うん! じゃあねー」


 軽く手を振りながら俺はカバンを持って教室から出ようと――、


「ねえ」


 優奈に呼び止められ、俺は「ん?」と振り返る。そしたら、優奈はめっちゃニヤニヤしながら、


「話してるときは思わなかったけどさ? 零ってエマが部活入ったら寂しいとは思ってるんだよね? アタシの言葉を否定しなかったし」


「え? あ、いや、えっと……」


「やっぱりー。じゃあちゃんと言ってあげなよ? 『俺はエマがいないと寂しいです』って」


「お、お前な!?」


「アハハハハ、顔真っ赤! マジで面白い!」


 本当になんなんだこいつは……。やっぱり、エマと同じ血を持ってるだけある。このからかい気質は(あまね)家の血の運命なのか。


「も、もういいだろ! 帰るからな!」


「はいはい。ばいばーい」

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