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第16話『ちょっとくらい付き合ってやる』


「――一昨日は部活で遊べなかったんだけど、昨日は優奈(ゆな)と水族館に行ったんだ。楽しかったよ」


「――。うん、惚気話を聞かされる俺の気持ちになってみろ?」


 今日から月曜日。学校が始まった。昼休みにご飯を食ったあとに親友の(みなと)と話していると、そんな惚気話を振って来やがった。机に乗せた腕に頬を乗せ、呆れたように俺は言った。

 そしたら、


「でも、(れい)はエマちゃんと一緒に住みはじめたじゃん? 好きな子と同棲って幸せじゃない?」


「おい待て、俺はエマを好きとか言った覚えないぞ。何を勝手に言ってんだ」


「まあ言ってないけどさ。めちゃくちゃ仲良いじゃん?」


「そりゃ幼馴染だし、あいつが一番素で話せるからな。――あ、お前もだけど」


 俺は結構、湊のことを信用している。なんせ、男友達の中では一番仲がいい。それに幼稚園から高校までずっと同じだ。仲良くないはずがない。

 そのことを伝えると、「ハハハ」と笑いながら俺の肩を叩いてきた。


「……なに?」


「いやなんか、零がそんなこと言うとは思わなくて。まあそうだね。僕も男友達なら零が一番喋りやすいよ。――女の子なら優奈だけど」


「うんそれはわざわざ言わなくて良いんだよ」


 このままなら、また惚気話に持っていかれると思ったため、止める。


「はいはい、何の話してるのー? アタシも混ぜてよー」


 そう、聞き覚えのある声が耳に入る。と同時に、左肩に手を置かれた。


「――。なにしてんの?」


「んー? 零と湊がなんの話してるのか気になってさー。アタシの話してた?」


「いや、されそうになった。――ってか、俺に体重乗せるのやめてくれ」


 湊にやればいいのに、わざわざ俺の肩に手を置いて体重をかけてくるのはやめてほしい。重……くはないが、肩が痛い。


「ああ、ごめんごめん。――あそうだ! 昨日さ、湊と水族館行ったんだけどねー」

 

「うんその話をさっき止めたばかりなんだよ」


「あれ、そうだったの? やっぱアタシたち気があうねー」


 優奈と湊が一緒に、「だよねー」といってまた惚気出した。俺はただ、頬を手に乗せて、


「なんだこいつら」


 とだけ、呟いた。



◆◇◆◇



「――じゃ、これで終礼を終わる。気をつけて帰れよー」


 担任の若い男の先生が、終礼を終わらせて教室から出ていった。するとクラスメイトたちは部活の着替えをしだしたから、俺はもう帰ろうと思う。


「湊も……部活だしな。早く帰ろ」


 一人で勉強でもしよう。そう思って準備を終わらせ、立ち上がろうと――、


「――れーくん!! いる!?」


「……は?」


 急にでかくて聞き覚えのある声が耳に入り、俺は教室の後ろのドアを見る。そこには、俺の方をじーっと見つめるエマがいた。


 エマが来てから、教室がシーンとした。そりゃそうだ。金髪青眼の少女が二年の教室に現れたら、誰だって驚く。


 なんか、俺にクラスメイトからの視線が来てる気がするが、無視してドアまで行く。


「なんだ?」


「暇?」


「今から帰るとこ」


「じゃあさ、アタシと部活見て回らない?」


「部活……? うーん……」


 今から帰ろうとしていたのに。まあ、ちょっとくらいなら付き合ってあげていいとは思うが。


「どこ見に行くんだ? やっぱりバレーか?」


「とりあえずそのつもりかなー。行こ?」


「はぁ、わかったよ」


 やっぱり、中学の時にやっていたバレーをする気なのだろうか。もしエマが部活を始めたら、先日のように一緒に帰ることも少なくなるのだろうか。

 ――。――――。何考えてるんだ、俺は。


「ま、仕方ない。付き合ってやる。行くぞ」


「わーい! やったー! 行こ行こ!」


「あ、ちょ、力強……」


 相変わらずの強い力で腕を引かれ、俺は教室から出ていった。

 ――教室からも、廊下からも。大量の視線を受けながら。

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