第九十九話
目玉が砕けると、鏡の湖はズゴゴッと地震のような音を立てて暗黒の地面へと飲み込まれていき徐々に消えていく。
あれが敵の弱点ではあるという思いは確実だろうが、あのモンスターの心臓部ではないことはわかっているのでこれで終わりではないだろう。
弱点はあの目玉1つだけという可能性は極めて低いだろう、だからすぐさま敵襲に備えて短刀を構えつつ周囲を警戒をしていると髪がなびく程度の風が吹き始めた。
しかも犬や猫の吐息のような生物特有の生温く湿気のある風であり、目の前にそういった動物がいると思うと鳥肌が立ってしまった。
今の今まで風など吹いていないのに突然吹き始めたということは次のイベントが始まるのではないか?それもあの鏡はフェイクで本体が出てきて最終局面へと向かうとか。
ここ最近はゲームなどの創作物に詳しくなるために色々と勉強もしているところ。
自分一人であれこれとネット上で探してみたはいいものの何から見始めたらいいのかがよくわからず、1つ初心者向けという作品を買って見てみたはいいもののてんでわからなかった。
初心者向けという言葉はオタクたちにとっての初心者で私のように本当に一からその世界に入るものにとってはそうではないことを体感した。
これだからオタクは自分の世界だけで生きているのものだから人に作品の良さを伝えることが出来ない人が多いんだ。
そう思ってソフィアちゃんとヒビキちゃんと博識な女の子とまともそうな社会人におすすめを紹介してほしいと連絡を取った。
結果として、私でもわかりやすいものであり、ドラマなどに近い現実よりの王道ファンタジーものを紹介してもらえれた。
その作品の最後のラスボスとも呼べる存在は分身を操作していたに過ぎず、今まで手に入れた力を吸収されて世界が破滅に向ってしまう2部構成だったのは面白かった。
その面白かったことは記憶に新しいのでこのユニークモンスターもそういった展開を持っている可能性はぬぐいきれない。
突如目の前に視界が真っ白になるほどの光が発生して思わず腕でその発生源から守るように前に突き出す。
警戒が解けた一瞬の隙を狙われたのか吹いていた生温い風は突如台風以上、烈風が背後から吹き荒れ抗うことが出来ず地面から足が離れてしまったことがわかった。
自分で飛んだわけではなく浮かされた状態では無防備であり危険な状態となったわけだ。
光による暗転は腕で咄嗟に防いだこととゲーム内だからか徐々に視界が元に戻っていく。
吹き飛ばされた先には金縁の人一人が収まりそうな大型の鏡がそこにポツンと置かれていてこのままだと鏡面にぶつかってしまう。
おそらくだけど、この世界から放り出そうとしている。
「そんな!?まだこの魔法の雨の中で戦っておきたいのに強制退場はないでしょう!!!」
3,2,1。鏡と接触して鏡の中へと入ってしまった。
中に入ったのはいいものの黒い霧だけが立ち込めており身動きが取れなくなった。
そして、黒い霧が意識を持ったかのように私をスイカの種を口から飛ばすかのように外の世界である砂漠に投げ出された。
頭から飛ばされたので砂漠に頭が埋まるような形で刺さったのは女の子なのだから配慮ぐらいしてほしいものよ、AIよ。
何週間ぶりかのように感じられる砂は日中の熱をまだ保持していたのか意外と熱かった。
「遅いですぞ!サイレント殿!!!!こっちは2人であの鏡の化け物とやりあって防御に専念して何とか凌いでいたのでボロボロですぞ!!」
「それはいいとして、あいつ急に暴れだしたけどあんたあそこで一体何をしでかしたんだよ?小さくなって胃の中をチクチクと指してきたのか?」
ルイスは泣きながら今も鏡が繰り出す小さな鏡をすんでのところで躱しながら文句をいい、ハルは私のことをトラブルメーカーみたいに馬鹿にしている。
私はこれでも君たちのリーダーであるのだけどね。
「残念ながらあの世界の奥には打ち出の小槌なんて伝説上の代物は全くなかったよ。その代わり目の玉がふよふよ泳いでいたから切り裂いてやったわ」
「「切り裂きジャックだ(ですぞ)...」」
「私を勝手に凶悪な連続殺人鬼に仕立て上げないでよ。で、こっちの状況だけどあいつがなんか苦しんでいるのを見る限りはあれは弱点だったてことで間違いないようね。あいつの体力状況はどんな感じかしら?」
ルイスは自分は全く攻撃していないですぞって顔で横に首を振る。
ハルは指先で少し程度だけ間をあけたポーズをしている。
こいつは本当にプロゲーマーなのだろうかと疑うような戦果であり、ヒビキちゃんに後でどんな下手なプレイヤースキルを持ったやつなのかを聞いておこうと脳内にメモをしておく。
「私が弱点破壊によるダメージがほとんどということね。さてと、3人に戻ったからには戦闘継続よ、ルイスは小さいやつの破壊を優先、ハルはそろそろゲーマーとしてあいつにダメージをしっかり与えてよ。」
2人とも頷き行動を開始していく。
鏡は悲鳴を上げつつ体を不規則に揺らし続ける奇妙な動きをしているものの、小さな鏡を破壊した分を追加する仕事だけはしっかりとしている。




