第15話
エーレイルとドラグリーゼの止められない戦いが始まった!!
かなり長い間投稿止まっていた……
治安部隊の狂戦士エーレイルと竜王バハルードの娘ドラグリーゼ。
今、二人の戦いが始まろうとしていた。
「……って、いや、ちょっと待て!! さっき、バハルードって……まさか竜人族の竜王バハルード!?」
バハルードの名を聞き、急に驚き、声を上げるサイカ。
「(竜王バハルードって竜王バハ〇ートみたいな名前やん)」
普段からゲームばかりやってる藍染はそんなことを思っていた。
「うん。アタシ五兄妹の末っ子なんだ」
「まさかのお姫様だったとは……なんてこったい」
「しかし、かの竜王の娘がなんでこんなところに?」
サイカはドラグリーゼに問う。
「んあ? ああ。故郷が退屈になったから武者修行の旅に出ると言って旅してたんだ。そこで、たまたまこの中立都市を見つけたんだ。気分転換に力比べでもして、ついでにアタシの物にしちゃおうかなって思って」
「「(なんてはた迷惑な……)」」
藍染とサイカは目を細めながら心の中で呟いた。
「竜人族は弱肉強食。強いものに従うのは当然なのだ~」
「ああそうかい。とりあえずエーレイルとドラグリーゼちゃんの対決の続き、聞かせてくれや」
「だから、ちゃん付けするな」
藍染の言葉にツッコむドラグリーゼ。
「そうだな。あたしとこいつの戦いっぷりをたっぷり語ってやるぜ」
「手短にお願いしますね」
「おま、切り刻むぞこら」
「幽霊だから切り刻めませんよ~」
あっかんべーして、小馬鹿にするサリア。
「こいつは……」
サリアのちょっかいに眉を引くつかせるエーレイル。
「お二人さん、コントはいいから、早く武勇伝の続きを聞かせてくれや」
藍染は頬杖を突きながらそう言った。
「あ、ああ、そうだな。じゃあ、耳をかっぽじってよく聞けよ」
「ほらほら、どっからでもかかって来なよ」
エーレイルを挑発するドラグリーゼ。
「そんじゃあお言葉に甘える……ぜ!!」
エーレイルは手始めにといきなり蛇腹剣をドラグリーゼにめがけて伸ばした。
しかもものすごい速度で。
「ふ~ん随分珍しい剣……じゃない!!」
ドラグリーゼはエーレイルが伸ばした剣を左手で掴んだ。
「嘘だろ!?」
「あの速度を掴んだだと!?」
「やっぱ竜人族半端ねえ!!」
「エーレイルの奴勝てるのか!?」
「竜人族相手だとキツイだろ!?」
「だけど、エーレイルだったらいけるんじゃねえか!?」
「いけぇ!! やっちまええええ!!」
後退した冒険者達や治安部隊の兵達は二人の戦いを観戦し、盛り上がっていた。
何故かその場にはジュースと菓子を売っている商人もいた。
「やるじゃねえか、てめえ」
「ふふん♪ よおし、これをこうやっ……て!!」
ドラグリーゼは掴んだ蛇腹剣思いっきり引っ張る。
「うおっ!?」
エーレイルは思いっきり引っ張られ、ドラグリーゼの方まで引き寄せられた。
「このまま顔面パンチだぁぁぁ!!」
ドラグリーゼは右手の拳を握り、思いっきり右ストレートをかまそうとした。
「ちっ!!」
エーレイルは蛇腹剣の柄を強く握ると剣の刃が突然バラバラになった。
「!?」
エーレイルはそのまま横転して、すぐに立ち上がり、後ろに跳んで、距離を空ける。
「へえ、やるじゃん。でも、バラバラになっちゃったよ?」
「そんなことわかってる……ての!!」
エーレイルはそう言うと、蛇腹剣の柄をまた強く握ると、先程バラバラになった刃達が宙に浮き、一気にエーレイルの方へ向かった。
刃達は蛇腹剣の元に繋がり、元に戻った。
「どうだ?」
「……面白いじゃん」
互いに不敵な笑みを浮かべる二人。
二人からは凶悪な竜が二匹、ものすごい睨み合っているように見えた。
『お、恐ろしや…………』
観戦者達は恐れ慄いた……。
「あの二人の間に入ったらどうなるかな♪」
「一瞬で肉片になるぞ♪」
「そっかぁ♪」
『あはははははは♪』
一部は気でも触れたかのようなイカれた会話をしていた。
「怖えこと言ってんなよ……」
「だけど、迂闊に近づけねえだろこりゃ」
「確かにな……」
他の観戦者達はそれぞれ喋りながら観戦していた。
「それじゃあ、こいつは……どうだ!!」
エーレイルはまた蛇腹剣をドラグリーゼにめがけて、先程と同じ速さで剣を伸ばした。
「おいおい、さっきと同じじゃ――」
ドラグリーゼがまた蛇腹剣を掴もうとした瞬間、ドラグリーゼにめがけて直進する蛇腹剣が突然右に曲がった。
「!?」
曲がった剣はドラグリーゼを素早く囲み、そのまま縛り上げた。
「な、なんじゃこりゃ!?」
「どうだ! こういう使い方もできるんだぜ!!」
エーレイルはそう言うと蛇腹剣を左手に持ち替えて、蛇腹剣で縛ったドラグリーゼを思いっきり引っ張った。
「!?」
「今度はこっちの番だな」
エーレイルはそう言うと右手の拳を握り、ドラグリーゼにめがけて思いっきりグーパンしようとした。
「な、なめるなぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ドラグリーゼがそう叫ぶと、突然、彼女の両腕と身体が大きくなり、蛇腹剣がバラバラになった。
「!?」
そして、ドラグリーゼはそのまま空高くジャンプし、上空からエーレイルにめがけて、巨大な右腕で叩き潰そうとしてきた。
エーレイルは寸でのところで回避した……が、ドラグリーゼが地面に叩きつけた衝撃が大きく、エーレイルは吹っ飛ばされるが、宙返りしてすぐに態勢を立て直した。
ちなみに前側にいた観戦者達の数名はドラグリーゼの衝撃により思いっきり吹っ飛ばされてしまった。
「いたた……」
「な、なんて威力だ……」
「おい、大丈夫か!?」
「ぺっぺっぺっ!! なんか砂埃が口に入った……」
吹っ飛ばされた観戦者達やその影響でぶつかり、倒れた後ろ側の観戦者達はそれぞれ立ち上がる。
「お、おい!! あれを見ろ!!」
一人の観戦者がドラグリーゼを指さして叫んだ。
突然大きくなったドラグリーゼの身体と両腕は竜そのものになり、目つきはまるでトカゲのようで、口からは火が溢れていた。
「おい……これ、やべえぞ……」
「ああ……これはやべえな……」
観戦者達が戦慄する中、エーレイルはバラバラになった蛇腹剣の刃を元に戻し、構える。
「いいじゃねえか。楽しくなってきたじゃねえか」
「アタシを本気にするなんて……人間のくせに……」
二人は構えると……同時に駆け出した。
「ブッ潰してヤルァァァァァァァ!!」
「やれるものならやってみな!!!!」
ドラグリーゼの巨大な右腕に対し、エーレイルは蛇腹剣で攻撃を繰り出す。
巨大な右腕と蛇腹剣がぶつかると、ものすごい火花が飛び散った。
「ウラァァァァァァァァァァァァァ!!!」
ドラグリーゼはとにかくエーレイルに強大な腕で連続殴打を繰り出した。
それに対し、エーレイルは蛇腹剣で全て受け流す。
二人の闘気がものすごいせいか、幾度なく衝撃波が観戦者達の方に飛んできて……。
「こいつはマジでヤバい!! 逃げろ!!」
「急げ!! ここにいたらマジで危ねえ!!」
「命がいくつあっても足りねえぞ!!」
全員ビビって都市の中へ逃げ込んだ。
逃げ込む観戦者達の中にはエイも紛れ込んでいた。
「これはもうどうしようもないな。あとは野となれ山となれ……だな」
彼女はそう呟きながら観戦者達の中に溶け込むように消えた。
全員が都市内に入ると、エーレイルがまだ戦っているのにも関わらず、門を閉じた。
だが、エーレイルは目の前の戦いに夢中でまったく気づいてなかった。
二人の激しい戦いはさらに増し、地面があちこちへこみまくっていた。
二人の戦いは止まらない。
日が暮れ、夜になっても……。
「いや、どんだけやってんだよ!?」
ツッコむ藍染。
「まあ、あの時はそうとう派手にやり合ってて、それ以外のことは全く気にしてなかったな」
「あの時はアタシも50%以上本気出したね」
「あれで全力じゃねえのか!?」
「アタシが全力出せばもっとすごいんだぞ~。でも……」
「でも?」
「マジで本気出すとマジでドラゴンな姿になっちゃうんだ。アタシあれだけはあんまり好きじゃないんだよ~」
「「(なんだそりゃ……)」」
藍染とサイカは心の中でツッコんだ。
「おい、これいつまで続くんだ?」
「知るか」
見張り台でずっと二人の戦いを見ている治安部隊の兵士二人。
「……んん………」
気絶していたエリオットが意識を取り戻し、起き上がった。
「まったく、ひどい目にあった……。もう真っ暗じゃないですか」
「あ、気づきましたか?」
「ええ……あれからどうなりましたか?」
「エーレイルが出てきて竜人族とずっとやってますよ」
「は?」
エリオットは外側の方を覗いてみる。
「マジですかこれ……」
「もうずっとやってますよ」
「もう流石に見てるの飽きた」
「……撤収しましょう」
エリオットはそう言った。
「マジですか?」
「早く交代来ないかな……」
「そうですね」
その時だった。
『おーい』
「ん?」
エリオットの小型インカムから声が聞こえた。
相手はフリングであった。
「あ、フリングさん」
『やっと応答してくれた。今までどうしたんですか?』
「エーレイルに飛び蹴り喰らって気絶してました」
『それはご愁傷様。で、状況は?』
「ボクが気絶してる中、ずっとやりあってたそうです。今も継続中」
『うわぁ、マジですか』
「とりあえず、今いる見張りの奴らはもう見飽きて退屈してますし……丁度交代が来ましたので、交代していいですよね?」
『いいですよ。あとは彼女に任せましょう。お疲れ様』
そうして交信は終わった。
「じゃ、交代してあがりましょうか」
「「賛成!!」」
見張りの時間が終わった治安部隊の兵達は嬉しそうに声を上げた。
「あの、エリオットさん。外のあれ、どうすれば……」
交代する治安部隊の兵士がエリオットに問う。
「ああ、あれは別にほっといても構いませんよ。それ以外の所を見張っといてください」
「は、はぁ……」
交代する治安部隊の兵はエーレイルとドラグリーゼの激闘をチラリと見やる。
今もなお激しい火花が散りまくっていた。
「まあ、とりあえずあとは頼みます。お疲れ様です」
「お疲れ」
「じゃあな」
そうしてエリオット達はその場をあとにした。
「……とりあえず、仕事するか」
「そうですね」
二人は外……森の方へ目を向けたのであった。
そうして二人の激闘は続き……なんと朝になって、さらに昼になって……否、二人の戦いは三日三晩ずっと続いていたのであった。
「「いや、どんだけ続けてんだよ!?」」
藍染とサイカは大きな声でツッコんだ。
「いやあ、もう自分でもわからんぐらいまで」
「姐御に同じく」
エーレイルとドラグリーゼは笑いながらそう答えた。
「ほんとイカれてますわね、この二人……」
サリアは呆れながらそう呟いた。
そう、この二人がこうして三日三晩戦い続けている間、正門はしばらく封鎖された。
都市内にいる冒険者達はしばらく外に出れず、遊んでいたり、飲んだくれたり、都市内での簡単な依頼(主に農業エリアの農作業のお手伝いや動物の飼育の手伝い、脱走した動物の捕獲、他)を受けたりしていた。
二人の戦いを封鎖された正門の覗き穴から見ている者達もいた。
あるいは見張り台にまで行って、見に行く者もいた。
見張り台は普通、治安部隊関係者以外立ち入り禁止なのだがフリングが勝手に特別許可し、ついでに入場料も取ろうとしていたがリュヴィエルに腹パン喰らって気絶。入場料徴収して自分の小遣いにしようとしたセコイ作戦はあっさり失敗した。
だが、見張り台への入場は特別に許してくれたのであった。もちろん無料で。
ちなみに気絶したフリングは正門付近で放置された。
とはいえ、見張り台にそんなに人は入らない(せいぜい10人くらい)。
だけど、来ても、三十分ぐらいですぐに見張り台から出てしまう者が多かった。
理由は単純。中々決着つかないから飽きてしまったからだ。
中には長時間いる者もいた(最長2時間ちょっと)
なお、遠征から戻ってきた冒険者や外の見回りから戻ってきた治安部隊は二人の戦闘場所から離れた場所から治安部隊に特別に輸送ヘリで運ばれて帰還した。
ちなみにこの中立都市の外と中の出入りは正門と後ろの南門以外どこにもない。
中立都市は全方位に壁に囲われており、そこには防衛兵器(機関銃砲にキャノン砲にミサイル砲)が設置されている。
一応、防衛兵器で二人を鎮圧する案がフリングからあったらしいが、流石にエーレイルも無事じゃ済まないし、無事であっても彼女から復讐されそうなのをフリング以外みんな恐れて防衛兵器で鎮圧案はなしとなった。
ちなみに南門には海岸があり、遠回りして海岸の方へ行けばいいのであったが、そこにも壁が作られてあり、海岸は南門以外入れないのであった。
完全に中立都市専用の海岸である。
一応泳いで行けばと思ったらそうは問屋が卸さない。
何故なら海には凶暴な水棲の魔物が潜んでいるからだ。
急いで泳ごうとしても襲われたら一巻の終わり。
しかも魔物除けの結界のようなものは中立都市には基本張っていないのし、南門を開けようにも、内側からしか開かないので、結局まともに出入りできるのは北の正門のみである。
中立都市の警備力はとにかく厳重なのであった。
輸送ヘリだって基本は治安部隊の兵器なので関係者以外の者においそれと使用するものではないので。
なので、中立都市は現在、あの二人のせいで外との出入りが不可能であった。
はた迷惑な話である。
二人の戦いはかなり熾烈を極めていた。
エーレイルは距離を取っては蛇腹剣で鞭のように切り刻み、時には縛って叩きつけたりしてはまた接近戦に持ち込んだり。
一方でドラグリーゼは殴る、引き裂く、炎のブレスを吐いたり。
ドラグリーゼの攻撃はどれも普通の人間なら確実に死ぬ威力なのだが、それをエーレイルはほとんどそれらの攻撃を捌きまくっていた。
とにかく二人の攻防はものすごかった。
「エーレイルがホントに人間なのか疑いたいのだが……」
サイカは顔を青ざめながら呟いた。
「ほんと、人間とは思えない戦闘力ですよね」
サリアもそう呟いた。
二人の戦いが始まって48時間が経った。
見張り台には今、エイとリュヴィエルがいた。
「あいつら、もう丸二日やってるぞ。あの竜人族の奴ならともかく、エーレイルの奴はいったいどうなってんだ? 人間なのか、あいつ?」
エイは無表情でリュヴィエルに問う。
「元々戦闘好きの狂戦士だが、あんなのと丸二日以上もやってるとなると、人間なのかどうか疑いたくなるな。いったい何でできてるんだ、あいつ?」
リュヴィエルは眉間にしわをよせながらそう言った。
「あいつって確か、元は聖王国の騎士だったか?」
「ああ。まあ、あの性格だと古巣の方でも相当暴れまくったりして、迷惑ばかりかけまくりだったろうよ」
その通りである。
「だろうな。……で、あれはいつになったら終わるんだ?」
「知らん」
「フリングは止めに――」
「行くわけないだろ、あの馬鹿が。それに、あいつでもあれを止めるには命がいくつあっても足りないぞ」
「ですよね」
二人はそう言ってそのまま見張り台をあとにした。
数秒後に治安部隊が見張り台に入ってきたのであった。
二人の戦いが始まって50時間後
「……そろそろ飽きてきたなぁ」
ドラグリーゼはため息をついてそう言うと――。
「それじゃあこれで――」
ドラグリーゼの身体がさらに変わりだして……。
「終わりにしようか!!」
ドラグリーゼは完全にドラゴンの姿に変身した。
「この姿、あんまり好きじゃないけど、さっさと終わりにしてやる!!」
「……おいおい、そんなこと言うなよ………」
エーレイルがそう呟くと……。
「まだまだ戦り足りねえんだよ……もうちょっと付き合えや!!!」
突然、エーレイルから紅いオーラが溢れ出し、彼女の目がまるでドラグリーゼと同じ竜の目のように変わった。
歯もまるで肉食動物のような鋭くなり、獣のような感じになったエーレイル。
「なっ!?」
エーレイルの突然の豹変に驚くドラグリーゼ。
エーレイルはドラグリーゼにめがけて突撃し、エーレイルの蛇腹剣とドラグリーゼの竜鱗がぶつかり、火花が散る。
「さあ、もっと楽しもうぜぇぇぇぇ!!」
「いいよ……上等だぁぁぁぁ!!」
そして、二人の戦いはさらに激しさを増したのであった……。
「……あの、ほんとにエーレイルは人間なのか?」
訝しみながら問うサイカ。
「人間だよ……一応な」
エーレイルは間を開けてからフッと笑って答えた。
二人の戦いが始まって53時間。
冒険者達の不満が高まり始め、二人の戦いをいい加減なんとかしろと、治安部隊に抗議しに、詰め所に殺到して来た。
流石にフリングもこの状況をどうにかするべく動き出した。
とりあえずフリングは見張り台に立ち、二人の戦いを見ると。
「あの竜人族はともかくエーレイルさんはバケモノですか?」
フリングは双眼鏡で二人の戦いを覗きながらそう呟いた。
「竜人族の方は完全にドラゴンになってるし、エーレイルさんはなんか凶暴性増してるんだけど……これ止められるのかな?」
フリングは双眼鏡を下ろし、不安げになる。
「だけど、この二人をいい加減にどうにかしないといけないのは確かになんですけど……これをどうにかするにも命がいくつあってもなぁ……というわけで」
フリングはそう呟くとある物を同伴して来た治安部隊の紫肌の男性魔族兵士と人間の女性兵士の二人に渡す。
「こ、これは……?」
渡された物を問う人間の女性兵士。
「強力な催眠ガスと麻酔ガスを混ぜた榴弾ガス。このライフルグレネード(スコープ付き)で二人を鎮圧させてください。ちなみにこの榴弾ガスは真っすぐ飛ばせるようになってますので、狙ってぶちかましてください」
「は、はあ……。これでおとなしくなるのですか?」
疑問の声を上げる魔族兵士。
「やってみなきゃわかりませんよ」
「効果がなかったらどうなります?」
女性兵士は目を細めて問う。
「撃った君達に襲いかかってきたりして」
あははと笑いながら答えるフリング。
「シャレになってませんわよ、フリングさん。あなたでこれの効果を試して差し上げましょうか?」
笑顔で(目が笑ってない)催眠麻酔榴弾ガスをフリングの頬を小突く女性兵士。
「怖い怖い」
「とゆうより榴弾ガスで俺もあなたも大変なことになりますよ」
ツッコむ魔族兵士。
「ま、まあ、とりあえずやっちゃってください。襲ってきたらなんとかしますから」
「お、お願いしますよ……」
魔族兵士は不安になりながら、女性兵士と共にライフルを構え、スコープを覗く。
魔族兵士はドラグリーゼに、女性兵士はエーレイルに狙いを定める。
だが、二人が動き回るせいで中々狙いが定まらずにいた。
ガス弾とはいえ、なるべく対象の近くに着弾させてガスを撒いた方がいい。
いや、対象に直接榴弾ガスをぶつけないと駄目な気がすると思う二人の兵士。
万が一、二人に榴弾ガスが弾かれても、その瞬間に爆発してガスが撒かれる。
これで鎮圧してくれることを祈るばかりの二人の兵士であった。
その時、二人が動きを止め、一旦距離を置いて呼吸を整え始めた。
『………………』
今なら狙いを定めるチャンス。
二人は息を止め、つばを飲み込み、引き金を引こうとした……その時だった。
『!!!!』
エーレイルとドラグリーゼはライフルを構えた治安部隊の兵士に気づいたのか、二人同時に見張り台の方へ睨みつけた。
『ひっ!?』
二人の治安部隊の兵士は小さな悲鳴をあげ、一瞬で身を隠す。
『…………』
エーレイルとドラグリーゼはしばらく見張り台を見つめたあと、二人は目を合わせ、バトルを再開した。
「そういえばあの時、正門の見張り台から野暮な真似しやがろうとする奴がいたな」
「あー、そういえばそうだったね。睨みつけたら、すぐに嫌な気配が消えたね」
エーレイルとドラグリーゼは思い出したかのように、二人で呟いた。
「(二人の戦いをいい加減に止めるために治安部隊の人達が何かしようとしたけど、二人にビビッて、怖気づいたんだな)」
藍染はそう思った。
身を隠した二人は心臓をバクつかせながら小鹿のようにがくがくと震えだした。
「ムリムリムリムリ、絶対無理だ!!!!」
「殺される!! 絶対に殺されてしまいますわ!!」
二人の兵士は完全に怖気づいてしまった。
「駄目だこりゃ……」
フリングはため息をついて、エーレイルとドラグリーゼの様子を見る。
「……よし、僕しーらない――」
「じゃねえよ」
「ゴフッ!?」
踵を返してこの場から去ろうとしたら、いつの間にか現れたリュヴィエルに思いっきり腹パン喰らったフリングは悶絶した。
「ここまで来て投げるなよ。お前腐っても元は聖王国では名を馳せた聖騎士だろう」
「この尋常じゃない戦闘を止めろと? 無茶言わないでくださいよ」
「RPGで吹っ飛ばせばいいだろう?」
リュヴィエルは持ってきたRPGをフリングに差し出す。
「いや、流石にそれはちょっとねぇ……」
「冗談だ」
リュヴィエルはそう言ってRPGを適当な所に立てかけた。
「(冗談かよ……)」
「……とりあえずこのライフルグレネードで鎮圧させればいいんだな」
リュヴィエルはそう言って、女性兵士からライフルを取り上げる。
「え、ええ」
フリングも魔族兵士からライフルを取り上げる。
そして二人はライフルを構える。
フリングはドラグリーゼに狙いを定め、リュヴィエルはエーレイルに狙いを定めようとする。
しかし、二人がかなり動き回るから狙いが定まらない。
その時だった。
『!!!!』
突然、エーレイルが蛇腹剣を伸ばして、ある方向へ剣を振り下ろし、ドラグリーゼはある方向へ口から火球を吐き出した。
その方向は……見張り台だった。
「げっ!?」
「ちっ!?」
二人の攻撃がこちらに飛んでくることに気づき、踵を返し、退避するフリングとリュヴィエル。
そして…………。
ずどーーーーーん!!
『うぎゃーーーーーーー!?』
見張り台が見事に吹っ飛んだ。
魔族兵士と女性兵士の二人もどこかへ吹っ飛んでしまった。
「あの時、正門の見張り台からまた誰かが邪魔しようとしたから」
「あの見張り台を吹っ飛ばしちゃった」
エーレイルとドラグリーゼは笑いながらそう言った。
「その後、しばらくリュヴィエルとエイにはずっと睨まれたよ。あれはそうとうブチギレてたな」
「そりゃそうでしょうよ。あんなことしでかせば」
サリアは呆れながらそう言った。
フリングとリュヴィエルは見張り台が吹っ飛ぶ前に何とか脱出した。
見張り台は無残なものとなってしまった。
「あーあ、見張り台が……」
「クソ、あの二人……あれはもはや手の付けようがないな」
「そうですね。とりあえずもう少し様子を――」
そんな時だった。
「おい、フリング!!」
「いったいいつになったら外出れるんだよ!!」
「明日、武器と防具の材料採取してえんだよ!!」
「あんたらが止めてくれないと、ダンジョン行けねえだろうが!!」
「治安部隊のあの空飛ぶ乗り物また乗せてくれよー!!」
荒くれ系の冒険者達がフリングに詰め寄ってきた。
「ちょ、ちょっとちょっと!?」
リュヴィエルには女魔道士や女剣士が詰め寄っていた。
「リュヴィエルさん、このままですと、不安で仕方ありません!!」
「エーレイルさん達をなんとかなりませんでしょうか!!」
「またあの空飛ぶ乗り物に乗せてもらえませんでしょうか!!」
「お、おい……」
「リュヴィエルさん。焼き菓子焼いたのでエイちゃんと一緒にどうぞ」
一人だけパティシエの女性がリュヴィエルに焼き菓子をあげた。
「む、すまん。ありがとう」
「あ、リュヴィエルさんずるいぞ!」
フリングは文句を言うが。
「やらんぞ」
リュヴィエルはあっさりそう返した。
「はぁ……早く終わらないかな……」
詰め寄る冒険者達から目を逸らしながらそう呟いた。
「おい、フリング!!」
厳つい大男の冒険者がフリングに怒鳴る。
「わかった、わかった。どうにかしますから、もう少し――」
「リュヴィエルさん!!」
女性聖術師が不安そうな表情で詰め寄る。
「な、なんとかするから少し待て――」
フリングとリュヴィエルはその後も詰め寄る冒険者の対応に追われていたのであった。
そして二人の戦いが始まってついに72時間経過。
流石に三日三晩も戦い続けたために、二人はもう限界寸前だった。
「に……人間のくせに……やる……じゃねえ……か……」
ドラグリーゼの息が荒く、立っているのがやっとだった。
彼女の竜鱗はかなりボロボロになっていた。
「(どうなってんだ……あいつ……ホントに人間なのか……?)」
「へっ……やっぱ竜人族……強えな……」
エーレイルも息が荒く、彼女も立っているのがやっとだった。
あちこち傷だらけで、口から血を吐き、頭からも血が流れていた
「(はは……我ながらこんなに暴れたのは……久しぶり……だな……つか、こいつと戦って、いったいどれぐらい経ったんだ……)」
「も、もう……立っているのが……やっとでしょ……そろそろ……これで……終わりに……してやるぅ…………!!」
ドラグリーゼは限界状態の中で、右手の拳を握り、エーレイルに殴りかかろうとした……が。
「あ」
ドラグリーゼはコケてしまった。
「くそ……こんなところで……」
ドラグリーゼはよろけながら、ゆっくり立ち上がる。
すると、竜の身体が崩れ、人の姿に戻ってしまった。
「う、うそ…………」
「はっ、限界……か……ってありゃ?」
エーレイルはドラグリーゼに近づこうと一歩足を踏み出した瞬間、彼女の身体がぐらついた。
「(やべえ……視界が……ぼやけてきた……)」
エーレイルはふらつきながらもなんとか踏ん張る。
「く……人間如きに……アタシが……負けるわけには……」
ドラグリーゼはふらつきながら、エーレイルに近づく。
「おいおい……そんなボロボロで……何ができるんだ……?」
エーレイルもふらつきながらドラグリーゼに近づく。
そして二人は同時に躓くと……。
……ゴツン!!
エーレイルとドラグリーゼは躓いた拍子に頭と頭をゴッツンこした。
『がっ!?』
二人はそのまま仰向けに倒れてしまった。
「うう……力が……入らない……」
「くそ……やべえ……頭がぐらぐらしやがる……」
「「(あ……意識が……遠のいて……)」」
二人の意識はそのまま落ちてしまった。
「ようやく終わったか……」
「三日三晩でよくもまあ……」
藍染とサイカの二人はそう呟いた。
あれから数時間後。
二人は治安部隊詰め所の救護室で寝ていた。
手足を鎖で厳重に拘束されて。
エーレイルは目が覚めると自分が拘束されてることに気づき。
「な、なんじゃこりゃあ!?」
そう言ってじたばたと暴れ出す。
「やあ、おはよう」
傍らにはフリングがいた。
「おい、てめえ!! これはどういうつもりだ!?」
「あはは。いやあ、すみません。目を覚ました直後にいきなり暴れるかもしれないと思って」
笑いながら答えるフリング。
「あたしをなんだと思ってやがる!!」
「狂戦士だとは思ってますね」
「だとしてもそこまでするか!?」
「ごめんごめん。すぐに外すよ」
フリングは笑いながらエーレイルを縛る鎖を外した。
「ったく、ふざけやがって……」
「ごめんよ」
「……で、あいつは?」
「ああ、竜人族の子? それならまだ寝てるよ」
フリングはそう言って、眠っているドラグリーゼの方へ視線を向ける。
ドラグリーゼもエーレイルと同じように手足を鎖で縛られているにも関わらず、すやすやと眠っていた。
「気持ちよく寝やがって……」
苦笑して言うエーレイル。
すると……。
「んん…………」
ドラグリーゼも目を覚ますと……。
「な、なんじゃこりゃあ!?」
エーレイルと同じようなリアクションをし、じたばた暴れる。
「無駄だよ。君の腕に弱体化の腕輪を着けておいたから」
「はぁっ!?」
ドラグリーゼは自分の腕をみようとするが、着けられたとされるその腕輪は鎖の中だった。
「あと、その鎖は力自慢の戦士やオーガでも簡単には引きちぎれないほど頑丈だから、今の君じゃあ引きちぎれないよ。エーレイルさんにだって無理なんだから」
「へえ、そりゃ随分ご大層な鎖を縛り着けたな。……こいつはともかく何であたしまで?」
「だって、あの時のエーレイルさんが狂犬みたいでかなりおっかなかったから、起きて、いきなり暴れ出して、噛みつかれないように――」
「ブッ殺すぞ、てめえ」
エーレイルは眉間をぴくつかせながら、フリングの襟首を掴んだ。
「悪かった、ごめんって!!」
苦笑しながら謝るフリング。
「く、くそ!! ぬぐぅ……ぬぐぐぐぐぐぅぅぅぅ!?」
ドラグリーゼは力いっぱい、鎖を引きちぎろうとした。
しかし、弱体化されたドラグリーゼには鎖を引きちぎることはできなかった。
「だから無駄だって」
「ち、ちくしょう……」
ドラグリーゼは悔しさのあまり、涙目になる。
「に、人間如きに……アダジがぁ……」
「あーあ、エーレイルさんが泣かした」
エーレイルを見て言うフリング。
「竜人族のくせになに泣いてんだか……ってなんであたしのせいみたいになってんだ!?」
「ここに寝かしつけてこんな風にしたの君でしょ」
「鎖で縛ったのはお前らだろ。あたしまで縛りやがって」
「こんな危ない人物達をそのまま寝かすのは危険じゃん」
「マジブッ殺すぞてめぇ……」
そんな風に言い争っているその時だった。
「フリングさん、ちょっと」
フリングの補佐をしているエリオットが、手招きしながらフリングを呼び出した。
「ちょっと、席を外しますけど、面倒な事はしないでくださいね」
フリングはそう言ってその場をあとにした。
去り際に、フリングは鍵を落として行った。
……明らかにワザと。
「…………」
エーレイルは落っことした鍵を拾うと、エーレイルはドラグリーゼを縛る鎖を外した。
「!?」
ドラグリーゼはエーレイルの行動に驚く。
「腕輪は自分で外せるから、自分で外しな」
「ど、どういうつもりだ、お前」
「別にどうもねえよ。てめえがこれ以上、中立都市で暴れなければ、あたしらはどうこうしねえよ。まあ、まだ暴れたりねえっていうなら、またあたしが相手してやるぜ?」
エーレイルは不敵な笑みを浮かべながらそう言った。
すると……。
「…………姐御!!」
突然、ドラグリーゼがベッドから降りて、そのまま跪いた。
「……え、なに?」
「竜人族たるアタシは姐御に負けたうえにこんな情けまでかけられた!」
「負けたって、あたしもてめえも同時にダウンしちまったろ。引き分けだろ」
「いや、アタシは人間に勝てなかっただけでも竜人族にとっては許されないこと。故郷にまで知れ渡ればアタシは勘当される……いや、それどころかアタシをなかったことにしようと他の同族がアタシに襲いかかってくる……」
ドラグリーゼは俯く。
「流石は最強種族たる竜人族。それより弱いのに勝てなかっただけども大変なことになっちまうとはな……」
腕を組んでそう言うエーレイル。
「姐御……どうかアタシをあんたの眷属にしてくれ!!」
「眷属ってお前なぁ……はあ、わかった。眷属云々はともかく、今日からあたしの部下として、治安部隊で働いてもらう。それでいいな」
「喜んで!!」
ドラグリーゼは満面の笑みで答えた。
「……さて、あいつにはなんて言っておこうかなぁ」
エーレイルは首を捻りながらそう呟いた。
「で、とりあえずフリングに許可取ってみたらあっさりOKもらったわけさ」
「よくOKもらえたな……」
ツッコむ藍染。
「リュヴィエルの奴も呆れながらも渋々OKしてくれたぜ。まあ、見張り台の件やあたしらのせいで三日三晩正門封鎖の件ではいろいろ言われたけどな。おかげで給料三ヵ月も減給されてまいったぜ」
「そりゃそうだろうな」
ツッコむサイカ。
「まあそれから、こいつと同じアパートに住まわせて、プライベートは基本こいつと一緒にいるか、部屋でずっと寝てるかだな」
「ドラグリーゼが部屋の壁をぶち破った時、びっくりして跳び起きてしまいましたわ。何事かと思ってつい覗いちゃいましたよ」
「あたしらも上からサリアが覗いて来た時はびっくりしたぞ」
「まあ、幽霊ですから壁のすり抜けぐらいはね」
あはは~と笑いながら言うサリア。
「だけど仕事だと何故か別々にされるんだよなぁ……」
「ホントだよ! 姐御と一緒に仕事した事あんまりねえぞ!!」
『(こんな二人を組ませたら絶対ダメだろ……混ぜるな危険)』
三人は二人が組んだら中立都市がめちゃくちゃになるのを想像しながらそう思った。
「唯一こいつと一緒に仕事した時は確か、バカデカいトカゲのモンスターが数十体も現れた時だったな。たまには二人だけで仕事する? ってフリングの野郎が言ってきて、あの時二人で喜んでOK! って言ったら、ほんとに二人だけで対処することになったな。しかも正門閉じてな」
『(まるで猛獣を放ったみたい……)』
「ま、あんな知性のないただ図体がデカいだけのトカゲなんかに負けるアタシらじゃなかったけどね」
「ああ。二人で全部ぶちのめしてやったぜ」
エーレイルとドラグリーゼは笑いながらそんな自慢話をしていた。
「……ちなみにそのトカゲのモンスターのデカさはどれぐらい? まさか身体の色は茶色とか」
藍染はそのトカゲのモンスターについて二人に問う。
「デカさはまあ、メチャクチャデカかったな。色は確かに茶色だったな」
「そいつらかなりの肉食でそいつより小さい物は何でも食っちまうよ」
「(ティラノサウルスかな、やっぱり……)」
藍染はゲームで出て来た肉食恐竜ティラノサウルスを思い浮かんだ。
「ま、こいつと出会ってから騒がしくも退屈しねえ日々になったな」
エーレイルはそう言って、飲み物をグイっと飲み干した。
「しかし、改めて思うと本気になった竜人族を人間であるエーレイルがよく太刀打ちできるな。ホントに人間かどうか疑わしく思うぞ」
サイカが怪訝そうな目でそう言った。
「あっはっは! 昔からよく言われる」
エーレイルが笑いながら答える。
「まあ、それでもあたしは普通の人間。魔族や亜人、エルフや竜人族と違って生きられる時間は長くないさ。それに、こんなあたしだから、そう長くないうちにあっさりくたばったりしてな」
「そんなことはないぞ! 姐御に勝てる相手なんて世界ひろしとそういないぞ!」
「あはは、ありがとな、グリーゼ」
エーレイルはそう言って、ドラグリーゼの頭をポンポンと叩いた。
「にひひ」
ドラグリーゼは嬉しそうに笑った。
そうしてミテクレ壮での宴はまだまだ続くのであった。
交流会はまだまだ続く




