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第14話

パーティーはまだまだ続く

「そういえば、ドラグリーゼはどのような経緯でエーレイルを慕っているんだ?」

「こいつと出会って、めちゃくちゃ戦ったら、懐かれてな」

「またバイオレンスな理由だな………」

「竜人族にとっては力が全て!! よわよわのザコザコ共は強者に淘汰されるのが当たり前なのだ」

「要は弱肉強食ってやつだな」

 エーレイルが付け足すようにそう言った。

「よわよわザコザコって、言い方がうぜえ……」

 そう呟く藍染。

「ん? ということは、ドラグリーゼちゃんはエーレイルに負けて服従したと?」

 藍染は問う。

「そうなのだ! 負けたアタシは身も心も全て姐御に屈服されたのだ!! あと、ちゃん付けで呼ぶな!」

「お互いボロボロだったけどな」

 エッヘンと威張るように言うドラグリーゼと付け足すように言うエーレイル。

「威張って言う事ですか」

 サリアはさりげなくツッコむ。

「嘘だろ……。幼くても竜人族を相手に並大抵の人間がどうこうできる相手じゃないはずだぞ……」

 エーレイルを見て言うサイカ。

「竜人族ってそんなに強いのか?」

「ああ。奴らの強さは一騎当千。人間にも魔族にも属さず、常に強者としてあり続ける最強の存在。聖王国と魔帝國の争いには当然関与しないが、時折持て余した一部の竜人族は暇つぶしにと戦いを仕掛けては破壊の限りを尽くす、質の悪い奴もいる」

「そいつはシャレにならねえな」

「そして……奴らの怒りに一度でも触れれば最後。世界の三分の一は焦土と化す」

「マジか……」

「と、言われているらしい」

「らしいかよ」

 サイカの説明に最後にツッコミを入れる藍染。

「でも一族全員本気出せば世界の半分は吹っ飛ばせるぞ♪」

 ドラグリーゼが満面の笑みで言う。

『余計シャレになってねえよ』

 藍染とサイカは同時にツッコむ。

「ともかく、私でも苦戦する相手だってことだ。それなのにエーレイルはよく勝てたな……」

「エーレイルは聖王国でも持て余された狂戦士ならぬ狂騎士でしたから、竜人族相手でも当たり前のように戦える人ですよ」

「人を獣みたいなこと言うな。しかも狂騎士ってなんだよ」

 小馬鹿にするサリアに言い返すエーレイル。

「しかし、こいつとこうして一緒にいて半年以上か……あの時はお互いかなり派手にやり合ったなぁ……」


 半年前。

 時刻は昼過ぎの頃。

「ああ……退屈だ……」

 中立都市の北方エリアでイライラしながら巡回警備をしていた。

 傍らには無表情でナイフをクルクルと回している少女のエイがいた。

「お前が先日、戦闘訓練で今日の警備担当を病院送りにしたのが悪い。ぼやくな」

「うっさいな、仕方ねえだろ。こうでもしねえと訓練にならねえだろ」


「病院送りってどんな訓練したんだよ」

 回想中にツッコむ藍染。

「あたしは常に全力全開さ」

 自慢げに言いながら鼻息を鳴らすエーレイル。

「この人の訓練なんか受けたら絶対死ぬかも……」

 藍染は目を逸らしながら呟いた……。


「もう少し加減しろ。フリングのボケナスですらできるぞ」

「相変わらずフリングには手厳しいな」

「あいつ嫌い。なにかとサボってばかりだし、師匠に迷惑かけるし」

「あんなの日常茶飯事じゃん。あれで元聖騎士だから笑っちまうぜ」

 そう言って笑うエーレイル。

「ちっ」

 それに対し舌打ちをするエイ。


「そんなんで大丈夫なのかよ、治安部隊エンフォーサーズ」

 またツッコむ藍染。

「それでも不思議とちゃんと機能してるからな」

 それに答えるエーレイル。



「それにしても退屈だ。なんか起きねえかな……」

「起きてたまるか、そんな簡単に――」

 ズドーーーーーン!!!!

 突然、どこからか爆発音が響いた。

「!?」

「なんだ、今のは!?」

「行ってみるか!」

 エーレイルは颯爽と、音の方へ向かっていった。

「おい……ちっ」

 エイは舌打ちをして後を追う。

 すると、一人の治安部隊の兵が歩きながらメガホンで何か宣伝していた。

「ただいま正門に竜人族が出現中~。腕に自信のある冒険者や手の空いてる治安部隊、我こそはと思うならば挑んでみてくれ~」

「おい、なにがあった」

 エーレイルはその治安部隊を捕まえ、聞き出す。

「エーレイルか。実は正門前の所で竜人族の少女が突然現れて、なんでも、アタシと勝負しろ、出ないとこっちから仕掛けるぞとか言っちゃて……」

「ちっ、また面倒な……」

「それで今、正門付近にいた冒険者達や治安部隊から腕試し気分で挑んでいるんだ」

「ちなみにさっきの爆発音は例の竜人族が何かやったのか?」

 エーレイルが問う。

「いや、多分誰かが爆発系魔法ぶっ放したか、手榴弾投げたか、ロケットランチャーぶっ放したんじゃないのか?」

「おい……」

 エイは顔に手を当てて、呆れるようにうなだれる。

「……ところで、さっきから何宣伝してんだ?」

 エイが問う。

「いやね、フリングさんがなんか面白いから他の奴らを呼んでどんどんそいつに相手してやればとエリオットさん経由で伝えられて……」

「馬鹿なのか、あいつは?」

 エイは完全に呆れていた。


「めちゃくちゃ自由だな。マジで大丈夫なのか治安部隊」

 ツッコむ藍染。

「治安部隊は本気になれば聖王国や魔帝國が大隊規模の軍隊出しても三分で木端微塵にはできるぞ?」

 そう答えるエーレイル。

「なにそれ、怖いな……」

 戦慄するサイカだった。

「(まあ、戦車や戦闘ヘリといった近代兵器がこの都市にはあるそうだからな……)」

 と、藍染は心の中で呟いた。


「はっ、おもしれえじゃねえか!!」

 エーレイルはそう言って、かなりのスピードで駆けだして行ってしまった。

「おい!?」

 しかし、エーレイルはもうすでに向こうまで行ってしまった。

「ちっ、あの狂戦士め……」

「もしかして、あいつの闘志ハートに火つけちゃった?」

「最初から燃えてる所に油を注いでさらに燃え上がった。そして貴様は灰になれ」

「ぴえん」

 エイに罵倒された治安部隊の兵は落ち込んだ。

「……ちっ」

 エイは舌打ちすると建物の影の中に入り込んだ。

 まるで水の中に入ったかのように波紋が広がった……。


 中立都市正門の外では竜人族一人に冒険者、治安部隊が束になって挑んでいるが、まったく歯が立たない状況だった。

 そして正門見張り台にはエリオットと治安部隊二人の兵が戦いの場を監視していた。

「全然ダメじゃん」

「あいつ、さっきRPGロケットランチャーを裏拳で弾き飛ばしやがったぞ……」

「正門の方に飛んでったらヤバかったな……」

「しかし、流石は竜人族。やはり手強いですね。あと、ランチャー系は使用禁止にしましょう。手榴弾とか魔法系もできたらデカすぎるのは勘弁で。後始末が面倒ですし」

「わかりました……おーい!! ランチャーや手榴弾は禁止だ!! 他に被害が出かねないし、後始末も面倒だ。あと魔法もデカすぎるのはやめろよ!!」

 ところが、一人の魔道士が爆裂魔法を繰り出してしまった。

「うおおおおおおい!!! デカすぎる魔法はやめろつってんだろおおおおお!!」

「あーあ。また派手に爆発させたなぁ。それでも全然効いてねえし」

「まったく、フリングさんも困った人だ。連絡とってみれば、せっかくだから相手させてやればとか無責任な事を言って……」

「そのうえ、他の連中も呼ばせる始末ですもんな」

「それで、当の本人は?」

「今忙しいから任せると。どうせエッチな本読んでサボっていますよ」

「エリオット殿は参戦しないのですか?」

「ご冗談を。竜人族の竜鱗は銃弾も弾くほどの硬さです。9mm程度じゃ敵うわけがありません。500S&Wのマグナム弾でも怪しいくらいです」

 そう言ってエリオットは踵を返し、歩き出す。

「せいぜい徹甲弾ぐらいならヒビぐらい入るでしょうね……」

 エリオットはそう呟いた。


 一方でエーレイルは正門の所まで猛ダッシュで走る。

 しかし、正門は挑戦待ちの冒険者や治安部隊共で溢れていた。

「ちっ、邪魔くせえな……だったら」

 エーレイルは建物の屋根の上までジャンプした。

 屋根の上にたどり着いたエーレイルは端っこまで行くと、蛇腹剣を抜き、見張り台の上の壁にめがけて剣を伸ばし、突き刺した。

「ん?」

 エーレイルが剣を伸ばして壁に突き刺してるのが見え、目が点になるエリオット。

 そう、エーレイルは蛇腹剣をフックショットのように使って、見張り台に入り込もうとしていた。


「あの剣、そんな風にも扱えるのか?」

 サイカはエーレイルに問う。

「あの剣はただ伸ばして振り回すだけじゃねえ。ずっと使ってりゃ、いろいろ思いつくものさ」

 と、エーレイルはそう答える。

「しかし、随分とまあスタイリッシュな入り方しようとしましたな(まるでゲームに出てくるどこぞの女スパイみたいだな)」

「いやぁ、流石にあいつらを薙ぎ払って行くわけにはいかんだろ?」

 藍染の反応にエーレイルはそう答える。

「へえ、そういう思考あったんだ」

「それはどういう意味だ?」

 サリアの言葉に眉をぴくつかせるエーレイル。

「別に」

 サリアは目を逸らした。


 エーレイルは剣を引っ張り、しっかり刺さったのを確認すると、自身を壁の方へ引き寄せた。

 そのまま引き寄せられる勢いで、エーレイルは見張り台の方に入り込もうとした。

「え? ちょっと、まさか――」

 思わず都市側の方に顔を出してしまうエリオット。

「あ! おいバカ、どきやがれ――」

 そして……。

 エーレイルは見事に見張り台に入り込み……それと同時に彼女の足がエリオットの顔面にめり込み、そのままエリオットを踏み倒してしまった。


「何やってんだよ……」

 藍染は呆れるような声でツッコむ。

「あいつが、急に顔を出してくるなんて思わなかったんだよ」

 エーレイルは目を逸らしながらそう言った。


 見張りの二人は突然の事に振り向き、ギョッとした。

「やっべ、やっちまった」

 そう呟いたエーレイルは伸ばした剣を戻した。

「え、エリオット殿!?」

「おま、なにしてけつかんねん!?」

「悪かったよ。そんじゃあ」

 エーレイルはそう言って、そのまま外へ飛び出した。

「おい、ちょっと待てえええええ!!」

 治安部隊の兵は止めようとするもすでに遅い。

「あの剣って……もしかしなくても、エーレイルだよな」

「大丈夫ですか、エリオット殿!!」

「痛い…………ガクッ」

 エリオットはダウンした。

「しっかりしてください、エリオット殿おおおおおお!!!!」

「おい、誰か、聖術師兵呼んで来い!!」

 見張り台は大騒ぎになった。

 

 正門前では冒険者、治安部隊が例の竜人族の少女と交戦していた。

「なんだなんだ~? アタシ一人に誰一人勝てないなんて、ざーこざーこ♪」

 竜人族の少女の見た目は幼いが、両腕と両足、身体には赤い鱗……竜鱗に覆われて、頭には小さな角が生えていた。

 そんな竜人族の相手に全員は苦戦していた。

「クソガキが……」

「竜人族……あんな幼い小娘なのに……」

「つ、つよすぎる……」

「銃弾も通らねえとか、竜鱗の硬さが半端ないな」

「爆裂魔法も通じてねえとか、ありゃ相当な強さだ……」

「竜化なんてしたらヤバいんじゃね?」

「そんなの相手できるとしたらフリングかマーカスか――」

 その時だった。

「ちょっとどきな!!」

『!!??』

 見張り台からエーレイルが降り立ってきた。

「おー。派手にやってるじゃねえか」

 この惨状を見てご機嫌そうに言うエーレイル。

「んげ!?」

「あ、あれは……」

 エーレイルの登場に全員が声を上げた。

『え、エーレイル!!』

「よお、てめえら全員ボロボロじゃねえか」

「てめえ、どっから出てきやがった!?」

「あそこの見張り台から」

 エーレイルが指を差してそう言うと……

『ああ。なるほど』

何故か全員が納得してしまった。

「へえ……随分面白い登場のしかたするじゃん」

 竜人族の少女は腕を組みながら不敵な笑みを浮かべる。

「こいつが例の……ってガキじゃねえか。お前ら全員立ち向かってこのざまか」

「あはは……みんなボコボコに返り討ちにされまして……」

「竜人族相手にこのざまですわ」

「俺はあいつに顔面パンチ喰らった」

 顔がめちゃくちゃへこんでいる治安部隊の兵を見てエーレイルは吹いた。

「ぎゃははははは!! 顔面めちゃくちゃへこんでるぞお前!!」

 エーレイルは大爆笑した。

「そういえば爆発音してたけど、あんなガキンチョ相手に何したんだ?」

「RPGや爆裂魔法をぶっ放したけど全然ダメだった」

「ロケット弾は裏拳で弾かれたし、爆裂魔法まったく効いてなかったぜ」

「竜人族とはいえ、よくもまあ、あんなちっこいのにそんなもんぶっ放したな」

「挑発されてつい……」


「挑発されてとんでもないもんぶっ放すなよ」

 ツッコむ藍染。

「RPGやロケット弾ってなんだ?」

 サイカが問う。

「RPG―7っていう銃火器……飛び道具の中でもかなりヤバい物でロケット弾はそれに使う弾。まともに当たれば大抵の相手は木っ端微塵になるかな(ゲームでもそうだったし)」

「木っ端微塵!?」

 藍染の答えに驚くサイカ。

「へえ、アイゼン、RPG知ってんだ」

「ま、まあね」

 エーレイルの言葉に目を泳がせながら答える藍染。

 もちろん藍染は実物なんて見たことはなく、ゲームや漫画、アニメでしか見たことないのであった。


「まあいいや。とりあえず全員どきな」

 そう言うとエーレイルは前に出て、蛇腹剣を竜人族の少女に向けた。

「待たせたな。こっからはあたしが相手してやる」

「お前、他の奴らより中々面白そうだけど、アタシに勝てるかな~?」

「やってみなきゃわからねえぜ? クソガキ」

「……言ってくれるじゃん、人間」

 互いに不敵な笑みを浮かべながら、ものすごい凄みを見せる二人。

「あたしはエーレイル。てめえは?」

「ドラグリーゼ。竜人族バハルートの娘、ドラグリーゼだ!!」

 これがエーレイルと竜人族の少女……ドラグリーゼの出会いだった。


 一方、中立都市中央区治安部隊施設執務室にて。

 フリングは仕事せずにいやらしい本を読んでいた。

 この治安部隊エンフォーサーズは隊長という人物エミエルが治安部隊の全ての指揮や運営をしているのだが、現在はこのフリングがほとんど指揮を執っているのであった。

 ちなみにこの執務室もフリングの私物が塗れなので実質フリングの私室である。

「そういえば、あっちどうなったかな……」

 フリングは小型のインカムでエリオットと連絡を取る。

「エリオット、今どう? ……あれ?」

 しかし、応答はなかった。

 何故なら、エーレイルに蹴り倒されて気絶してるから。

「あれれ? どうしたんだろ……」

 応答がないことに少し考え込むフリング。

「……まあいいや。なんとかやってるでしょ」

 そう思ったフリングは本を読み続けた。

 その時だった。

「おい」

 いつの間にかリュヴィエルがフリングの目の前にいた。

「おや、どうしました?」

 フリングは驚くこともなく、本を読み続ける。

「どうしましたかじゃねえよ。竜人族が正門前で暴れてるそうじゃないか。大騒ぎだぞ」

「知ってます。大丈夫でしょ。それに、こういう騒ぎがあれば、あの人が勝手に出ますって」

「それが面倒なんだよ。その竜人族とあいつが暴れ合ってみろ。正門はぶっ壊れる、防壁に穴が開いたらどうすんだ」

「そんな軟にできてないから大丈夫ですよ」

「能天気な野郎だ……」

「彼女ならうまくやれると信じてますから」

 呆れるリュヴィエルに対しフリングは不敵な笑みを浮かべた。

「ところで、貴様はさっきから何を読んでるんだ」

 リュヴィエルはフリングから本を取り上げた。

「あ……」 

「エルフと黒エルフの禁断の百合○○○○……」

 リュヴィエルがフリングの読んでいる本のタイトルと絵を見た瞬間、フリングをゴミを見るような目で睨んだ。

「おっと、君には流石に見せらないものだったかな――」

 フリングは苦笑いすると、リュヴィエルは問答無用でフリングをボコボコにした。

「死ね」

 そう吐き捨て、本をフリングの頭の上に投げ捨て執務室を出て行き、扉を思いっきりバンッと閉めて行った。

「痛い……ガクッ」


「そういえば、治安部隊の部隊名って確かエンフォーサーズだよな」

「ああ、なんでみんなエンフォーサーズと呼ばないか的なあれだろ。最初は呼ぶ奴いたけど、治安部隊の方が呼びやすいということで」

「ああ……なるほど」

 藍染の問いにエーレイルはそう答えた。

 藍染と先の問答を聞いたサイカも確かにそっちの方が呼びやすいなと思ったのであった


激突するエーレイルとドラグリーゼ!!

果たしてどのような戦いになるのか!?

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