第12話
新しい朝……はとっくに過ぎたあと
朝帰りをした藍染に限界が来ていた。
ようやく部屋に帰れた藍染はようやく一息つけたせいか、急激な眠気に襲われた。
重たくなる瞼、止まりかける思考……。
藍染はともかくシャワーだけ浴びて、歯を磨き、適当に着替えて、自室に入り、そのままベッドにダイブした。
そしてそのまま深い眠りに落ちてしまったのであった……。
藍染は夢を見た。
どんな夢かと言うと……。
真夜中の森の中で藍染の目の前に黒い何かが次々とせまり、それらを銃で撃ち倒していくが、圧倒的な数の前に藍染は……。
「!?」
藍染は目が覚め、勢いよく身体を起こす。
「……嫌な夢を見た…………」
藍染が見た夢はあの時蛮族達と戦った森と似ており、敵と交戦するも圧倒的な数に襲われてしまい、そこで目が覚めた。
「生きてるよな……俺……」
とりあえず藍染はスマホを覗く。
「うげ、もうこんな時間……なんてこったい」
時間はすでに17時であった。
「……とりあえず起きよう」
藍染は部屋に戻った。
部屋に戻るも特に何もすることもなく、今からギルドに行って冒険者稼業をしようにも、今日はあまりやる気が起きなかった……。
なので、今日は出かけずに自室でアニメ、ゲーム三昧……のつもりだったが。
「……腹減った」
藍染の腹の虫がなり、とりあえず何か食べ物を……と思ったが、食べ物が一つもなかった。
「やべぇ……何にもないじゃん」
大きなため息をつく藍染。
「……とりあえず何か買おう」
ちなみに金銭は先日の薬草採取に蛮族討伐の報奨金(結構多額)があるので問題はない。
しかし、ここは異世界。
何が売っているのかわからないがとりあえず買い出しに出ることにした。
外に出るともう夕暮れ時だった。
階段を降りると、ある人物と遭遇した。
「あ……」
「よお、おはよう。いや、こんにちはか?」
そこには寝ぼけた表情をした女性……治安部隊所属の狂戦士にして同じアパートに住む102号室の住人、エーレイルがいた。
彼女が今着ている治安部隊の制服は昨日のままでヨレヨレであった。
「こ、こんにちは……」
「お前……確か、昨日フリングの奴と一緒に森の方へ行った冒険者か?」
「ええ、まあ」
「思えば見ない顔だが最近ここに来たばかりか?」
「ええ。ここに来て挨拶が遅れてすみません」
「いいよ。そういうのあんまり気にしないから」
「は、はあ……」
「そんな堅苦しくすんなって。気軽に行こうや」
エーレイルは藍染に近づき肩を抱き寄せる。
「ちょっ!?」
「そういえば自己紹介がまだだな。あたしはエーレイルだ。お前は?」
「あ、藍染」
「アイゼンか。よろしくな」
そう言ってエーレイルは藍染の肩をさらにぎゅっと抱き寄せる。
「あ、あの、まだ酔ってます!?」
「ああ? もう酔ってねえよ。つか、昨日の祝勝会で飲んでからまったく記憶がねえんだけど」
「ええと、あの後なんですが――」
藍染は今朝までの事を話した。
「というわけです」
「マジか。なんか悪かったな」
「いえいえ」
「しかしお前もルミの奴の紹介でこのアパートに越してきたとはな」
「お前も、ということはエーレイルさんも?」
「呼び捨てでいいよ。冒険者だった頃、宿で生活してたんだけど、ちょっとトラブル起こして追い出されちまってな」
「何してんですか」
「あれはいきなりナンパしてくるバカが悪いんだ。しつこいから半殺しにしただけなのに、半殺しにした仲間の奴が寄って、たかって、襲いかかってきたから――」
「それで大暴れして追い出されたと」
「まあ、その時にフリングにスカウトされて治安部隊に入ったんだけどな。そこには兵舎もあるから、衣食住に問題はなかった」
「え、じゃあ何故ここに?」
「兵舎の部屋は複数人との共同部屋なんだが……隣の部屋の野郎どものいびきがうるせえのなんの。ルームメイトの奴らは慣れちまってるのか、気にしてなかったが、あたしは我慢ならなかった。それならグリーゼに抱き着かれながら寝るか、上の部屋から聞こえる歌声の方がまだマシだ」
「そりゃまた……(あんたも相当だったけど)」
当の本人は酔い潰れて大きないびきをかいて寝てたなんて知るわけがない。
当然、お前もだろ、なんていえば彼女に半殺しにされかねないので口には出さない。
「マジでうるせえから、隣の部屋に殴り込んで、ブッ殺して永眠させてやろうかと思ったけど、ここでトラブルは流石にマズいと思ったからそこだけは我慢したさ……」
「野蛮だなぁ」
「とりあえずあそこじゃあ、寝られねえから、安くていい部屋ないかなと探してる最中にルミと会ってな。あいつが他の冒険者に絡まれてめんどくさがってたから、とりあえずそいつらをすぐにぶちのめして助けてやったのさ」
「とことん野蛮だな……」
「で、ルミの奴がお礼したいっていうから、どっか安くていい部屋知らねえか? と聞いたらここを紹介されたのさ。上の階の部屋がいわくつきのな」
「なんで真ん中の102号室にしたんですか?」
「最初は101号室と103号室には他の冒険者が住んでいたけど、そいつら三ヵ月経っても帰ってこなくて、そのまま家財道具とかは全部回収されてたな」
「そ、それって……」
「どっかでくたばったんだろうな。行方不明になった冒険者は他の冒険者か暇な治安部隊の奴が半年ぐらいまでには探しに行くけど、半年経たずに片付けられたということは、死体となって見つかったんだろうな」
「なんてこったい……」
「お前も冒険者なら、そうならないように気をつけな」
「あはは……死なないように気をつけます」
「まあその後、中央の役所の奴にどっちか隣に移るか聞かれたけど、いちいち荷物動かすのが面倒だから蹴った」
「な、なるほど」
「まあ、その後にいろいろあってグリーゼの面倒まで見ることになって、あいつに隣の部屋を住まわせたが、あの馬鹿、壁に穴開けやがって……まあ、あの兵舎で奴らのうるさいいびきを聞きながら寝るよりかはマシだけどな。それにグリーゼの寝顔は案外可愛いんだぜ」
「それは気になりますな」
「そして今に至るわけだ」
エーレイルは腕を組んで満足気に頷く。
「なるほど。今もここに住んでるのはやっぱ引っ越しが面倒だからとか?」
「それもあるし、グリーゼが開けた壁穴もあるからな。引っ越そうにも引っ越せん」
と、笑いながら言うエーレイル。
「確かにあの大穴じゃあ……」
「ま、そういうことだ。ところでお前は今からギルドの方か?」
「いや、今日はもう遅いのでちょっと買い物を」
「そうか……よし、せっかくだ。今からあたしと出かけようじゃねえか」
「いきなりですな」
「せっかく同じアパートに住んでるよしみでさ」
「俺は構いませんが、同居人のドラグリーゼちゃんは?」
「ああ、あいつはあたしの部屋でぐっすり寝てる。とりあえずちょっと着替えるから待ってな」
そう言ってエーレイルはそのまま自室に戻った。
しばらくすると凶悪そうな狼のイラストが描かれた黒のTシャツにデニムのショートパンツとかなり大胆でワイルドな格好をしたエーレイルが現れた。
腰には蛇腹剣も帯剣していた。
「(わーお……)」
エーレイルの胸に目移りしてしまう藍染。
「(こ、これはまた中々……)」
「どこ見てんだよ?」
にやけながなら問うエーレイル。
「ベ、別に!!」
藍染は目を逸らした。
「ま、いいや。じゃあ行こうぜ」
「お、おう」
こうして藍染はいきなり治安部隊の狂戦士エーレイルと二人きりで出かけることになった。
「それにしても随分現代的な《変わった》服装ですね」
「オオカミの絵が描いてあって中々カッコいいだろ? ズボンも結構気に入ってるんだ」
「中々ワイルドですな」
「そうだろ」
中立都市西方の居住区エリアにて二人はファーストフード店で食事をしていた。
しかもそのファーストフード店は元の世界にあるマク○○ルドだった。
「(異世界でもこれが食べれるとは思わなかった……)」
ポテトを作っている機材やドリンクサーバー等、元の世界のと同じでとても異世界とは思えない物ばかりであった。
おまけにハッ○○セットもあった。
ただ、やはり使われる食材はこの世界の食材……なのだが、元の世界と同じようによく再現されていた。
問題は味である。
藍染はハンバーガーをほうばる。
「美味い!」
藍染は目を見開かせた。
「だろ? この店、けっこう気に入ってんだ」
さらにフライドポテトも何本も食べる藍染。
「(味も元の世界と同じだし、ポテトも良くできてるし……再現度やべえな)」
「マ〇クの他にもモ〇やケン○○キーとかヨシ○○ウって名前だったかな?」
「(どれもこれも元の世界にある店だらけだー。どうなってんだ中立都市)」
「とにかく美味くて安くて持ち帰りもできるいい店ばかりだ」
「へ、へえ。そうなんですねぇ。便利でいいですね……」
どれもこれも知ってる藍染にとってはあまり驚かない。
むしろ驚いているのはここまで再現しちゃってるこの都市だった。
「にしてもこの居住区エリアだけ、まるで別世界だと思わないか」
「ああ……言われてみれば確かに(とゆうより……)」
藍染にとっては元の世界とほぼ同じであった。
この中立都市西方の居住区は名前の通り、この都市に住む住人達の家があり、スーパーもあり、デパートもあり、ファーストフードにカフェもある。
さらに居住区エリア内にはバスやタクシーまでも走っている。
ただ、普通の車やトラック、電車は走っていない。
しかし、治安部隊の軍用車両が走っている。
あと、ケータイショップはない。
だが、電化製品がある(実際に藍染の部屋の明かりは電球でしかもL〇D)。
このように一部を除いて元の世界とほぼ同じだった。
しかし、この居住区エリアがどのようにできてるのかは誰もわかっていないらしい。
「(ホントどうなってんだ中立都市……特にこのエリア)」
中立都市居住区エリアはまるっきり別世界であった。
「(今度エミエルの奴に聞いてみるか……)」
「そういえばこの中立都市の住み心地はどうだ?」
「悪くないですね。いろんな種族がいて、賑やかで楽しいですよ」
「ほお、お前は他の種族に対してあまり偏見は持たないタイプか」
「まあね(むしろ人外娘最高とか叫んじゃう俺だし)。そういうエーレイルは?」
「あたしもねえよ。くだらないし」
エーレイルそう言ってジュースをストローで一気に吸い上げて、コップをトンと置く。
「ホントにここは賑やかで楽しい場所だぜ。あの場所と比べたらな……」
エーレイルは頬杖をつきながらほくそ笑む。
「…………」
そんな時だった。
ガシャーーン!!
突然、ものすごい物音がした。
「いい加減にしろや、てめえ!!」
「ああ!? やんのかゴラァ!!」
別の席で荒くれ冒険者二人が喧嘩していた。
「お前があそこでヘマしなければ、こんな目に遭わずに済んだんだ」
「なんだと!? 勝手に突っ走りやがったのどこのどいつだ!?」
二人の喧嘩に他の客がざわめき出す。
店員が慌てて、二人の喧嘩を止めに入る。
「あの、お客様方!! 当店での騒ぎは――」
『すっこんでろボケ!!』
「ひいっ!?」
二人の剣幕に店員は驚き、しりごみしてしまった。
「おいおい、なんてこったい」
「ちっ、仕方ねえな……」
エーレイルは頭を掻きながら立ち上がり、喧嘩している二人の所に向かう。
『だいたいてめえはよぉ――』
二人が言い争っていると、突然、二人の間に剣が差し込まれた。
エーレイルが蛇腹剣を抜いて、二人の間に割り込むように剣を前に出していた。
「なぁに、バカやってんだ、お前ら……?」
「お、おめえは……」
「治安部隊の……エ……エーレイル……」
「今ここでやり合うってんなら……二人まとめて切り刻むがいいか?」
エーレイルが狂気の笑みを浮かべてそう言うと、蛇腹剣の刃がギラリと光る。
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃ!!!!????」
「すみませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
二人は慌ててトレーを持って、ゴミをゴミ箱に捨ててトレーを置いて、一目散に店を出て行った。
「こ、怖え……」
藍染はエーレイルに恐れおののいた。
一部の客はホッとして、別の客はエーレイルを恐れてそそくさと店をあとにした。
「まったく、やれやれ……」
エーレイルはそう呟くと、ドカッと席に座る。
「おい、大丈夫か?」
藍染の顔を覗き込むエーレイル。
「あ、いや、ちょっとびっくりして」
「あっはっはっは。こういう事はしょっちゅうさ。冒険者・商業エリアの酒場なんざ、日常茶飯事さ」
「物騒な事で」
「そういう時こそ、あたしら治安部隊の仕事ってわけさ」
そう言って、エーレイルは剣先を藍染に向け、藍染は目をギョッとし顔をのけ反る。
「ああ、アイゼンも、もし変な事起こしたら……こいつで切り刻んでやるからな?」
エーレイルは狂気の笑みを浮かべてそう言った。
「き、気をつけます……」
「よろしい」
藍染の答えにエーレイルは頷き、剣を収める。
「そ、その剣って確か蛇腹剣でしたっけ」
「ああ、そうだぜ。あたしの最高の愛剣だ」
エーレイルは再び剣を取り、見せびらかす。
「こいつを手に入れたのは中立都市に来る前……あたしが聖王国騎士団から脱走した時だったな」
「なんだよ、似合わねえって言いてえのか?」
「そんな事思って……(ないわけねえよ。絶対、不良騎士だよこいつ)」
「おい、あたしを不良騎士とか思ってるな?」
「心の声読むなよ」
「まあ、あながち間違っちゃいねえさ。昔から騎士団でバカやっては他の連中や家族にまでも冷めた目で見られてたけど、あたしは全然気にしてなかった」
「何やってんですか、いったい……」
「ちょっと、前線で派手に暴れただけだぜ?」
昔も今も全く変わらないエーレイル。
「まあ、いろいろ暴れすぎたのが原因で前線から外された挙句、別の部隊に配属されちまってな。だけど、その部隊は魔帝国内でただ弱ってる魔族や平和に暮らしている魔族を狩るだけのつまらない部隊でな。やる気ないから適当にサボってたけど、だんだんストレスだけが溜まって……気づいたら騎士団を脱走してたわ」
「飢えに飢えた獣が脱走したのか……」
「誰が狂犬だぁ?」
「そこまで言ってません」
「まあそんでな、脱走中に数人の同僚があたしを捕まえに追ってきたみたいなのだが、気づかずに全員ブッ殺しちまった」
「あーあ……」
「でもあの時は久しぶりに戦いができたおかげか、少しすっきりしたなぁ。満足はできなかったけど」
「言ってることサイコパス!?」
「まあその後、しばらく逃亡生活送っているある時に、一人の魔族の剣士に襲われてな。とりあえず遠慮なくブッ殺した」
「容赦ねえな」
「当たり前だろ。相手がかつての仲間であろうと知らない奴であろうと神だろうと魔王だろうと、殺しに来たら当然ブッ殺すに決まってるじゃん」
「スケールデカすぎ! どこまで野蛮人なんだ……」
「まあそれで、その魔族の剣士が持ってたのがこいつってわけさ。あいつは竜鱗でできた剣とか言ってたけど、こいつの本当の使い方を知らなかったみたいでな」
「と言うと?」
「こいつはどうやら魔力を通すことで本来の蛇腹剣として扱えるのさ。こいつを振り回した時や、新手の追手をこいつで切り刻んだ時は最高の気分だったぜ」
「そ、そりゃあ良かったことで……」
「ちなみにあたしは地水火風といった属性魔法は使えないが、武器に魔力を流したり、自分の身体強化することぐらいならできるのさ」
「ホントに狂戦士のようなステータスのお持ちで」
「今は誉め言葉として受け取ってやるよ」
エーレイルは不敵な笑みを浮かべる。
「で、ようやく追手がいなくなって、しばらく放浪したらいつの間にか中立都市に流れ着いたのさ。そんで今に至るわけさ」
「そういえばエーレイルって元聖王国の騎士だから、魔族の人達とからなんか言われたり……」
「何言ってんだよ。中立都市は治安部隊の連中はおろか、ここにいる連中はいろんな事に嫌気さして国や故郷等捨てて、ここに集まった場所だぜ? あたしもフリングの野郎も元は聖王国の騎士。ルーカスだって元魔帝國戦士だって話だ。おまけに冒険者の中には天使や悪魔もいるし、他にも出自不明の奴もたくさんいるぜ。まあそういう奴らも故郷を捨てたか、あるいは古巣を追い出されたか、なんかやらかした連中が大半だ」
「大丈夫なのかよ、それ」
「そのために治安部隊がいるんだろ?」
「ああ、それもそうか」
藍染は苦笑いした。
「……ちなみに先日襲ってきたあの蛮族に成り果てた奴らとかは……」
「……あいつらはいろいろ手遅れな連中さ。奴らは両国の争いのせいで心が荒み、生きるために悪事を働きすぎて、だんだん理性を抑えられなくなった、哀れな奴らさ」
「…………」
「辛気臭え話しちまって悪いな。そろそろ行くか。買い物するんだろ?」
「あ、ああ。そうだな」
二人はトレーの上のゴミを捨て、トレーを置き場に置いた後、店をあとにした。
二人は居住区エリアをしばらく歩く。
「そういえば、あいつと一緒に森の方へ行ったんだろ。そっちはどうだったんだよ?」
「ああ、俺達の方では奴らを率いてる頭がいたな」
「へぇ、どんな奴だった?」
「ガラの悪い奴で元聖王国の騎士とか言ってたな」
「会話してきて奴らを率いていた……ということは相当なクソ野郎中のクソ野郎だったわけだな。で、強かったのか?」
「フリングが最初は剣で戦ってたけど、最後は拳銃で倒したな」
「なんだ、大した事ねえじゃん」
「え? すごい互角のように見えたけど……」
「あのな、あいつが銃を使ったということは、そいつは遊ばれてたんだよ。野郎は聖王国の中ではかなり名のある騎士だったんだ。若くして聖騎士の称号までもらった奴で、さらには聖王国教会騎士団って呼ばれる、聖王国でもかなり権威を持った教会所属の騎士団の団長も務めてたんだ」
「なんてこったい。そんな有名人だったのか?」
「ああ。だからそんな奴が突然行方をくらました時は国中大騒ぎだったぜ。そして、あたしが国を出てこっちに流れ着いた時に、その行方不明だったあいつがまさかこんな所にいるなんて思わなかったけどな」
「それはそうだろうな」
「で、話を戻すが、他にどんな奴がいた?」
「確か、同じように会話ができる魔族の老魔道士がいたな。転移の魔法で仲間と共に都市に攻め入ったらしいけど――」
「返り討ちされたろうな。あの時、都市の方で銃声が聞こえたし。フリングはいい加減そうに見えて抜かりがねえからな。奴もそのジジイもここを甘く見ていたのさ」
「流石は中立都市ですな」
「しかし、そのジジイもそっち側に協力してる上に、そのクソ野郎と組んでるとはな……ま、そっちの事は興味ねえけど」
「……ちなみに外の方は大群だったと聞きましたけど、大丈夫だったのですか?」
「ああ、むしろ楽しかったぜ。大群相手に大暴れするのは最高の気分だったぜ?」
狂気の笑みを浮かべるエーレイル。
「こ、怖え……」
「また派手に暴れてえなぁ……」
エーレイルはそう呟きながらある場所に立ち寄った。
その場所はスーパーで名前はやっぱり元の世界であったものと同じであった。
「カ○○安くと来たか……」
「ここだったら品揃えもいいし、お惣菜も時間によっては豊富だからな。ちなみにお前自炊するほうか?」
「炊飯器で米を炊く程度なら」
残念ながら藍染の料理スキルは全然であった。
「あたしやグリーゼなんて料理なんてできないし面倒だから、基本は惣菜か冷食か外食か治安部の食堂のどれかだな」
「そりゃまた……って、多分俺も人の事言えなくなるな」
「自炊してる冒険者なんて、あんまりいねえだろうよ。遠征に行くときなんざ、非常食や総菜パンが当り前さ。ま、こういうの売ってるのはここ《居住区エリア》だけだろうけど」
「でしょうね(ここだけ進歩しすぎだから)」
「あとはどっかで生えている植物や倒した魔物を調理して食う奴もいるらしいぜ。まあ、大半の奴は腹下してるのが多いけどな」
「冒険者の事に関して随分詳しいですね」
「ああ、たまに冒険者の真似事もやってんだ。あたしは基本、退屈しのぎにダンジョン散歩でもな」
「そりゃまた」
「そういうことする治安部隊は十人に一人はいるさ。フリングの野郎もそうだしな」
「随分自由な事で……」
「それこそ中立都市さ」
二人は総菜コーナーで何を食べるか品を見ていた。
すると……。
「……アイゼン?」
「ん?」
声をかけられた藍染は振り返ると……そこには長い黒髪に漆黒の鎧を纏った女騎士にして藍染と同じアパートに住む201号室の住人、サイカがいた。
「サイカ!?」
「やっぱりアイゼンか。奇遇だな」
「ん? 誰だ」
「俺と一緒にあんたを運んだ同じアパートの……」
「ああ、確か同じアパートに住んでる奴か。確かお前もフリングと一緒に同行した奴だよな?」
「ああ」
「へえ……」
エーレイルはサイカに近づき、まじまじと見つめる。
「なんだ?」
「お前、中々強そうだな。一戦交えてみたいぜ」
「生憎、わたしは無駄な私闘はしない主義だ」
「そいつは残念。ああ、そうだ。来月南側のエリアで闘技大会があるんだ。興味はあるか?」
「ほう。そういう場での腕試しなら上等だ」
「なら、来月が楽しみだな」
「わたしもだ」
二人の視線に火花がバチバチとちりばめた。
『ちなみにアイゼンも出るか?』
二人同時に藍染に問う。
「出ません」
即答だった。
『なんで!?』
「拳銃メインの俺が出たらそんなのに出たら死ぬわ」
「死にやしねえよ。病院送りになるかもしれねえけど」
エーレイルは二ヒヒと笑う。
「シャレにならんわ!」
「あははは。あ、ちなみに射撃大会もあるからそっちなら大丈夫じゃね?」
「まあ……それなら大丈夫かな?」
「アイゼンの射撃技術……か。見ものだな」
サイカはフッと鼻で笑う。
「(あれ? なんか参加する流れになってる?)」
来月、ホントに参加することになる藍染であった。
「と、ところでサイカも買い物?」
「ああ。と言ってもわたし、料理は不得手でな。いつもここらの物で済ませている」
「なんだ、全員同じか……お、そうだ!!」
エーレイルは手をポンと叩いてあることを提案した。
「そうだ、今からあたしの部屋で交流会しねえか?」
エーレイルはそんな事を言い出したのであった。
エーレイルの部屋でレッツパーティ!?




