第11話
勝利の後の宴が始まる♪
中立都市に戻った冒険者、治安部隊達は冒険者ギルドに戻った。
そして……。
「それじゃあ、僕達の勝利を祝して……乾杯!!」
『乾杯!!』
フリングの乾杯の音頭を取り、全員がそれぞれグラスジョッキを掲げて声を上げた。
彼らはあの戦いの後、冒険者ギルドで祝勝会を開いていた。
祝勝会には今回の戦いに参加した冒険者達や治安部隊の兵士達も混ざって、飲んで食べてと盛り上がっていた。
そして藍染達もフレンやエリとリエ、サイカらと共に飲んで食べていた。
といっても藍染達はお酒ではなくリンゴジュースであった。
この世界でもお酒が飲めるのは20歳までであり、藍染はもちろんのこと、フレンやリエ、エリまでも未成年であるため、お酒は飲めないため、リンゴジュースであった。
サイカはお酒を飲める年をとうに越えているが、本人はお酒が苦手であるため彼女もリンゴジュースであった。
「よお、てめえら!! 飲んでるかぁ!?」
藍染とサイカの間にエーレイルが割って入ってきた。
エーレイルはもうかなり酔っていた。
「おいおい、出来上がるの早くないか!?」
急に絡まれてぎょっとする藍染。
「ああ!? リンゴジュースだぁ!? 酒飲めや、酒ぇ!!」
「ちょ、ちょっと!?」
エーレイルはジョッキを藍染の頬にぐいぐい押し付ける。
「おいおい、あたしの酒が飲めないのかぁ?」
「おいおい、勘弁してくれ――」
「おい人間、姐御の酒が飲めないのか!?」
「へ?」
突然幼い声が聞こえ、藍染は辺りを見渡す。
すると、小さな少女がちょこんといた。両腕を組んで。
その少女の両腕と両足には赤い鱗に覆われており、頭に小さな角が生えていた。
そして少女の服装は袖も短く、短パンであるが、治安部隊の制服を着ていた。
「なんだこいつ?」
「それとも、姐御の酒が飲めないのか~? ざぁこ、ざぁこwww」
「(このガキ……)」
「お~、グリーゼ来たか~」
「姐御~、今回も派手に大暴れしたみたいだね♪」
「はっはっはっは~♪ 当たり前だろ~」
エーレイルとドラグリーゼは楽しく談笑していた。
「で、この子はなんだ?」
「ああ、あいつは――」
「ドラグリーゼだよ」
藍染がフレンに問い、フレンが答えようとすると、フリングが割り込むようにして答えた。
「見ての通り竜人族でね。性格はかなり生意気で他人をよく小馬鹿にしてるけど、エーレイルにだけは何故か慕っていて、しかも仕事面はきっちりこなすんですよね」
「そういえば出撃する時に姿がなかったけど」
「あの子は居住区の警備を担当してましたけど……ドラグリーゼちゃん、なんでここに?」
ドラグリーゼの所に歩み寄り、何故ここにいるのかを問うフリング。
「あ?」
「居住区の警備は?」
「リュヴィエルの奴が来てあとは任せろって言ってくれたから、こっちに来たんだけど~? あとちゃん付けで呼ぶな!」
「ああ、なるほど……」
フリングは辺りを見回す。
「リュヴィエルさんったら相変わらずですね……」
苦笑いしながら呟く。
リュヴィエルは騒がしい所が好きではないのであった。
「どうですか、藍染。楽しんでる?」
フリングは藍染に話しかける。
「ああ」
「それはなにより。たくさん飲んで食べてくださいな」
フリングと藍染は小さく乾杯をした。
そしてフリング立ち上がって叫んだ。
「さあ、皆さん! 遠慮せずに飲んで食べてください!! 全部治安部隊エンフォーサーズの奢りです!!」
『イエエエエエエエイ!!!』
フリングの一声に皆が喜んだ。
しかし、エミエルだけは渋い表情をしていた。
「(おいおい、また費用が……)」
本来なら治安部隊の統治をしているのは彼女なのだが、フリングがほとんど仕切っていしまっているのであった。
「(まあ、いいか)」
エミエルはやれやれと言わんばかりの表情をした。
「よおし、てめえら!! 今日は朝まで飲むぞぉぉぉぉぉ!!」
『おおおおおおおお!!!』
エーレイルの言葉に全員が大声をあげた。
『え!?』
それに対し藍染とフリングは間抜けな声を漏らしながらエーレイルの方に顔を向けた。
「朝までは行くぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
『おおおおおおおお!!!』
ドラグリーゼの言葉に全員が大声をあげた。
「……マジですかこれ」
「なんてこったい」
藍染とフリングは苦笑いした……。
藍染はフレンやリエ、エリ達と談笑していた。
「それにしてもよく生き残れたな、アイゼン」
「でもフリングとかいたんでしょ? いくら新入りでも大丈夫だったでしょ」
「で、でも無事でよかったです……」
フレン、リエ、エリがそれぞれ藍染に話かけてくる。
「ま、まあなんとかな……」
「いろいろ危うかったが、よく頑張ったものだ」
藍染の頬にジョッキでつつくサイカ。
「それはどうも」
藍染はそう言いながらジュースを一飲みしたのであった。
「そういえばそっちはどうだったんだ?」
藍染が三人に問う。
「そりゃもうあの酔っているエーレイルの姐さんが大暴れしたもんでよ」
「おかげで負傷者もそんなに出なかったからよかったよ。とゆうより治安部隊の治療が得意な人のおかげでこっちは苦労しなかったわ」
「そんな奴もいるんだ」
「はい。フラメイアって人で、聖術師としての実力はかなりのものです」
「ほら、ルーカスの旦那の所にいるあの眠ってるような目をしたあの人だよ」
フレンは指を差し、藍染はその方へ見ると、ルーカスと一緒に飲んでいる、眠っているような目をしている人物……フラメイアを見つける。
藍染の視線を感じたフラメイアは小さく手を振った。
藍染も小さく頷きながら小さく手を振った。
「なんだか不思議な人だなぁ……」
「そうねぇ。治安部隊の人達でもすごい穏やかな人だよ」
「不愛想エルフに狂戦士女とは大違いだぜ」
フレンがそう言うと――。
「なんか言ったかぁ、欲張りゴブリン!!」
「何も言ってねえよ」
「欲張りゴブリン?」
藍染は首を傾げる。
「フレンったら、宝箱を目にしたらたとえ罠でも飛びつき、開けるとんだ欲張りさんなのよぉ」
「止めても聞かないから大変なんです……」
リエとエリはフレンの事について不満を垂らす。
「マジかよ、お前」
「おいおい、アイゼン。目の前にお宝があったら取りに行くのは当然だろ?」
「……まあ、気持ちは分からなくもないかな(ゲームでお宝は全部回収するのは当たり前だったからな)」
「だろ?」
「ちょっと、そんなんじゃあ命がいくつあっても足りないわよ」
「冒険者は危険を冒してなんぼだろ?」
「確かにそうかもな」
そうして藍染達の談笑は続いた。
「少年」
藍染の所にあの時の獣人の女剣士が話しかけてきた。
「ああ、あの時の。怪我とかは大丈夫なのか?」
「ああ。ポーションのおかげで何の支障もない。助かったよ」
「礼ならフリングに言ってくれ。そういえば自己紹介してなかったな。俺は藍染だ」
「アイゼンか。私はヤエカだ」
二人は互いに自己紹介をして、乾杯をした。
「しかし、まだ新入りなのによく頑張ったものだ。これからも死なないよう頑張りな」
「ああ」
そうしてヤエカはその場をあとにし、今度はサイカに話しかけたのであった。
少し経つと、藍染の所に二人の冒険者が近づいて来た。
アークスとラムネアの二人であった。
「やあ、新入り君」
「あなたは確か……」
「アークスだ。こっちはラムネアだ」
アークスに紹介されたラムネアはぺこりと一礼をする。
「あの森で一度会っただけだが、改めてよろしくな」
そう言ってアークスは手を出した。
「ああ。俺は藍染だ」
藍染も手を出し、握手した。
「アイゼン君ね。これからもよろしくね」
ラムネアは微笑みながら彼女とも握手した。
「それにしてもあの男に振り回されてよく生き残れたな」
「運が良かっただけさ」
「運も実力のうちですよ」
「ま、同じ冒険者として、これからもよろしくな、アイゼン」
「ああ」
その後も藍染とアークスとラムネアは他愛もない雑談をした。
アークスとラムネアと別れてしばらくすると今度はエミエルが藍染の所に寄ってきた。
「やあ、楽しんでるかい?」
「それさっきフリングにも言われた」
「なんと先を越されたか~。フリングめ……」
「おいおい、妬くな、妬くな」
「……ねえ、藍染君」
「ん?」
「この世界に来てどう?」
「……まだここに来て二日しか経ってないぞ? まあ、けど……」
「けど?」
「楽しい!」
藍染は満面の笑みで答えた。
「そう。よかった!」
エミエルも満面の笑みで答えた。
「ここはいい所だな」
「それはそうさ。こうやっていろんな種族が手を取り合って楽しく過ごす場所だもん」
「そうか。だけど、クラスの皆は……」
「……彼らは聖王国の勇者としてきっと、人間達のために他の種族と戦うことになるかな」
「……俺と同じように君に連れられてこられたらまた違ったのかな」
「そうかもしれないね。きっと……」
二人はそんな会話をしながらジョッキに入ってる飲み物を飲み干した。
「だけど今は目の前の事を楽しみましょう、藍染君」
エミエルは藍染に向けて微笑んだ。
「ああ……そうだな。今はあれこれ考えても仕方ないな。よし、今日はたらふく食べて飲むとするぞー!」
「ふふ、その意気だよ♪」
そうして彼らは朝まで騒ぎまくった。
そして……。
宴会の場はすでに死屍累々となっていた。
先頭に立って飲んで食いまくったエーレイルは大きないびきをかきながらぐっすり眠っていた。
他の者達も酔い潰れて、大きないびきをかいて眠っていた。
当然、外は朝日が昇りかけていた。
「ホントに朝まで行っちまったよ……」
「外がいつの間にか明るくなってる……」
藍染とフリングは朝日を目に呆然と立ち尽くした。
「……これ、どうしよ…………」
フリングは辺りを見渡しながら呟いた。
「まったく情けない連中じゃのう」
エミルコはそう言いながらいまだに酒を飲んでいた。
酒を飲んでいてなお立っているのは彼女とドラグリーゼだけだった。
あと起きているのは酒を飲んでいない連中だった。
ちなみに藍染らは少し食べ過ぎた。
「うぷ……ちょっと食いすぎたかな」
「大丈夫、藍染君?」
「大丈夫かな」
エミエルに心配される藍染であった。
そんな時、死屍累々と化した宴会の場に二人の人物が現れた。
「……なんだこれは」
ジト目でフリングを睨むリュヴィエルとナイフの手入れをしている一人の少女がいた。
「や、やあ、リュヴィエルにエイちゃん……」
ナイフの手入れをしている無表情の黒髪少女がエイである。
「詰め所に貴様らがいないから来てみればこれか」
「だ、だってエーレイルが……」
「それを諫めることぐらいしたらどうだ」
「……はい」
「……この惨状、どうするつもりだ?」
「……どうにかします」
「……フン」
リュヴィエルはその場をあとにし、エイも何も言わずにそのままリュヴィエルの後について行った。
「はあ、やれやれ……」
ため息をついたフリングは手をパン、パンと叩いた。
「さ、さて、これでお開きにしましょう。酔いつぶれた連中はあとで他の治安部隊に適当な所に運ばせて、ここを片付けましょう。ふ、フレン達も手伝ってください」
「あいよ」
「まったく、しょうがないわね」
フレンや双子の二人はフリングの所へ駆け寄った。
「俺達も手伝うか」
「そうだな」
藍染とサイカもフリングの所へ駆け寄ろうとした。
「藍染君、サイカさん。ちょっといい?」
「ん?」
「なんだ?」
エミエルに呼び出された二人。
「ドラグリーゼと一緒にこの酔いつぶれたエーレイルを家まで運んでくれない?」
「家までって、この人の家どこだよ?」
「君と同じミテクレ壮だよ」
『……え!?』
藍染とサイカとドラグリーゼは同時に声が出た。
そして互いに見つめ合う。
「サイカもあのアパートなのか?」
「ああ。201号室だ」
「あたしは101号室」
「俺は203号室だ」
そして三人は酔いつぶれているエーレイルを見つめる。
「エーレイルは102号室だからよろしくね」
『…………』
藍染とサイカは二人で酔いつぶれたエーレイルを運んでいた。
ドラグリーゼはエーレイルの蛇腹剣を運んでいるだけだった。
だが、身長的にドラグリーゼは小柄であるため、彼女だけに任せたら引きずって行きそうなので藍染とサイカの二人で運ぶのが一番だった。
「朝日が眩しい……」
「長い一日だったな……」
「それにしても、まさかサイカもあのアパートの住人だったとはな……」
「わたしも驚きだ。しかもこの二人までもな……。しかし、あのルミとやら。なんでわたしが住んでいる場所を知ってたんだ?」
「さ、さあ……」
藍染は目を逸らした。
サイカは冒険者としてのエミエルことルミしか知らないのである。
当然だろう。こんな間近に女神がいるなんて思ってもいないのだから。
「そういえばサイカは俺より先に入居したんだろ?」
「ああ、二日前……いや、三日前にな」
「(俺がこの世界に来る1日前だな。かなり最近じゃん……)」
「この中立都市に来て、最初は宿で過ごしていたのだが、いろいろあってあのアパートに引っ越したのさ」
「なるほど……で、隣の202号室については?」
「あそこに何かいるのは確かだな。……もちろん生者ではないがな」
「……あれ? 確かあそこに表札が……」
「それって外し忘れただけでは?」
「…………なんてこったい」
やはりあの部屋には誰も住んでおらず、生者ではない何かがいるのであった。
「そういえばドラグリーゼちゃんやエーレイルは気にしてないのか」
「別に~? あとちゃん付けで呼ぶな。ちなみにあの部屋から、週に三日には夜中にあの部屋から歌が聞こえるんだよ」
「「……マジですか」」
「まさかビビってるの? ぷくくー、このチキン共め~」
「(このクソガキ……)」
そうして話しているうちにあっという間にミテクレ壮にたどり着いた藍染達。
「そういえば本人でないと開かないんだよな。どうしよう」
「それならアタシの部屋に運んでよ。姉御と一緒に住んでるから」
「え、まさか同棲してるのか!?」
サイカは驚き声を上げる。
「いや、壁ぶち破って一つの部屋にした」
『なんでだよ!?』
藍染とサイカは同時にツッコんだ。
「だって姐御と一緒にいたいから~」
「こいつ……」
藍染は呆れ顔をする。
「それにしても、竜人族までもこの都市にいるのも驚きだが、一人の人間を慕うのももっと驚きだ。竜人族は昔からどの種族に対しても見下す傾向があると聞くが……」
「そう言えばこのエーレイルだけ姐御と呼んでたな」
「姐御だけは特別なのだ!」
フンスと鼻息をしながらドヤ顔で言うドラグリーゼ。
「……幼いとはいえ、竜人族をここまで慕わせるなんて、只者じゃないな」
「そりゃそうさ。治安部隊で最強と言ったら姐御に決まってるんだ! とゆうか、あの時姐御の活躍見てなかったのか!?」
「フリングと一緒に別行動してたからな」
「わたしもだ」
「むぅぅぅ、フリングめぇ……」
フリングの事を恨むドラグリーゼ。
「まあ、いずれエーレイルの実力とやらを嫌でも見るだろう」
「そうだな。さて、さっさと運ぼうぜ。ドラグリーゼちゃん、開けてくれ」
「指図するな! あとちゃん付けするな!!」
エーレイルを運んでドラグリーゼの部屋に入ると……いろいろ散らかっていた。
そして隣の部屋を隔てる壁には見事に大穴が開いていた。
「こりゃあすげえや……」
「さっさと運ぼう、アイゼン」
「そうだな」
二人は壁穴を通り抜けてエーレイルの部屋に入り、エーレイルをベッドに寝かせた。
ちなみにエーレイルの部屋も散らかっていた。
「じゃあ、俺達は帰るぜ」
用事が済んだ藍染達はさっさと切り上げる。
「おう。ありがとな~」
ドラグリーゼはそう言って手を振った。
藍染とサイカはドラグリーゼの部屋から出て行った。
二人はそれぞれの部屋へ戻るべく二階へ上る。
「それじゃあ、またな。アイゼン」
「ああ、サイカ」
サイカと別れ、自分の部屋に戻る藍染。
その時だった。
「アイゼン!」
「ん?」
サイカに呼ばれ、振り向く藍染。
「これからもよろしくな、アイゼン」
サイカは微笑みながらそう言った。
「ああ!!」
藍染も笑顔で応えた。
二人はそれぞれの部屋へ戻る。
こうして藍染の日付を越えた長い一日が終わったのであった……。
お疲れ様




