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狩人と銀色の花嫁  作者: 榊原シオン
第5章

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第131話 新しい環境

 シュヴァイゲン王都の貴族街。その、ほぼ外れて言っても差し支えない場所にある洋館。これこそ正しく、ゼストとマーレが今まで蓄えた貯蓄を崩して新たに購入した新居。


 購入した当時は荒れ放題だった庭も、雑草等は狩りつくされ、春先に向け、花壇等が整備されつつある庭先。その一角で、アルスとゼストの父子二人が、庭先に新たに(こしら)えた(まと)に狙いを定め、弓の腕前を競っていた。


 今回の競い合いは、ゼストから持ち掛けた話である。以前、住んでいた僻地では、共に狩りに赴く事が日課となりつつあったが、アルスが一人前となる前に、二週間後の初等部進学に併せ、王都へと一家全員越してくる事となった訳であるが、今後は狩りなど滅多に行えなくなってしまう。それだと、折角アルスに弓の手解きをした事が無駄になってしまうと、定期的に開催する競い合いの第一回目が行われているのであった。


 今回の事を企画したゼストも、アルスがまだまだ弓の腕前としては自分を超えられるとは、もちろん考えていない。ゼストの目的は、あくまでも弓の師として、アルスの目標であり続ける事が狙いである。


 以前、思いがけず発生した僻地の森の中での(ソル)とのバトル。ゼスト、マーレ、グロックが力を合わせ、撃破に臨んだものの、内容としては防戦一方。最早、ゼストの命すら危ういと思われたのだが、そのゼストの窮地を救ったのが、アルスの弓であった。


 アルスは、今現在も普通に射るだけでは、飛距離として十メル飛ぶかどうかといった所だろう。ゆえに、今回の的も十メル離れた位置に設置した。普通に射ればその程度の飛距離になるのだが、アルスは幼い時分から聞こえるという幼精の力を矢に込めるという荒業をやってのける。


 幼精の力を借り射った矢は、音速を超え、音を置き去りにする。正しく、目にも止まらぬ速度で走る矢は見事、奴の胸に風穴を開けて見せたのであった。


 もちろん、こんな芸当が行えるのは、全世界においてアルス只一人。世界で唯一幼精の声が聴こえる存在であるが故に行える事である。


 それゆえ、弓の最大火力という面においては、ゼストはアルスに水を空けられてしまった格好になる。だが、父として、狩人としての師として、まだまだ教えられる事があると、自らアルスの目標であり続けるが為、アルスに持ち掛けた形なのであった。


 今後も定期的に開催していくつもりではあるが、アルスは今後初等部に。ゼストは弓兵として、王国兵士となる事が決まっている。週に一度は機会を設けたいと目論んではいるが、それさえ現時点では先行き不透明な事になってしまうのかもしれなかった。


 そんなアルスとゼスト、二人のバトルを、少し離れた位置から四人の男女が、固唾(かたず)を飲んで見守る。


 一人は、アルスの母であり、ゼストの妻であるマーレ。


 一人は、アルスへの愛しさが溢れ、吸血姫(ヴァンパイア)となってしまった事もあり、実家であるエマール家に住みづらくなってしまった事で、アルス一家と生活を共にすることに決まったベティス。


 一人は、ベティスのお目付け役として、ベティス同様アルス一家と生活を共にすることになったグロック。先日行われた会合での話合いの中では、ベティスのみが行く流れになっていたのだが、伯爵家として末娘一人だけを送り出す訳にもいくまいと、ベティスの父であり、現当主であるヨークから『誰かしらのお目付け役が必要になるだろう』との発言が出た。それに際し、グロックが名乗り出たという経緯になる。


 最後の一人が、メイドとして派遣される事になったニッキ。エマール家からベティスとグロックの二人もご厄介になるのであれば、火事を一手に担うマーレの負担が大きいだろうと、グロック及びベティスの身の回りの世話役として派遣される事となったのであった。


 ニッキ自身は、エマール家内でメイド長の任を任されている立場にある。ただ、今回の事に限っては、ベティスが吸血姫(ヴァンパイア)となってしまっている事が、選択の幅を狭めていた。


 現在、エマール家内で、ベティスが吸血姫(ヴァンパイア)となってしまった事を知っているのは、祖父であるグロック。両親のヨークとチェルシー。ベティスの姉妹である、長女エルザと次女サーシャ。メイドの中では、メイド長に当たるニッキと、エマール家内でベティスの身の周りの世話をする事になったメイドのエリン。


 伯爵一家であるエマール家では、数多くの人々が生活を共にしているが、上記の七名しかベティスが吸血姫(ヴァンパイア)である事実を知らない。


 ゆえに、派遣されるメイドとしては、ニッキかエリンの二択になるのであるが、何かとアルス一家と関わり合いのあるニッキに白羽の矢が立つ形となった。それと、()えてメイド長のニッキを不在にさせる事で、その他のメイド衆の成長を促す目的もあるのであった。


 会合の席では、グロックは更にエマール家から日々の生活費の融資も打診する。これに関しては、ゼストとマーレから何度もお断りする旨の言葉が相次いだが、これからは何かと入り用になるのだからと、グロックに押し切られてしまった格好だ。


 グロックが危惧する通り、アルス一家が王都に越して以降、全く新しい生活様式に様変わりする為、エマール家からの心遣いはありがたい事は確かなのであった。

またまた四ヵ月ものの期間、お待たせする形になってしまいました。

もう何度目かの謝罪になりますが、本当にすみません。


お見苦しくも言い訳をさせて頂くと、前話130話、一番の強者でベティスがアルス一家と生活を共にする事と相成りました。

まあ、これは決めていた事ではありましたが、そこに持って行く為の道程が苦悩の連続で……。数話前にも数か月連載が途絶えてしまった経緯でもあります。


とはいえ、数か月の期間を頂いた事もあり、当初思い描いていた以上の出来でもってある程度の話で纏められたと思うのですが、如何せん話が上手く纏まり過ぎたゆえ、次の執筆が捗らない。


何度書き直しても、話が面白くないんです。


実は、今回upした話もありとあらゆる方向から、数話分書き溜めてました。ただ、やはり面白くない。


ならば、数話分を纏めて一つの話としてupしようと、今回踏み切らせて頂いた経緯になります。

ホント、お待たせして申し訳ありません。


色々と悩みましたが、今回の話から第5章とさせて頂く事にしました。


執筆活動再開に伴い、いいね!も有効にさせて頂く事にしました。



今後とも、拙作『狩人と銀色の花嫁』を宜しくお願い致します。



榊原シオン

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