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狩人と銀色の花嫁  作者: 榊原シオン
第4章

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第121話 子供の戯言(たわごと)?

 家を出て、暫く歩いた時の事である。


 ニッキは、皆がちゃんと付いて来ているかどうか確認する為、自身の背後を確認する。


 振り返った視線の先では、アルス、ゼスト、マーレの三人共が付いて来てはいるものの、一番背後から付いてくるアルスが、きょろきょろと辺りを見回しながら付いて来ていた。初めて訪れる王都が物珍しいのだという事は容易に想像出来る。


 ニッキは、アルスが皆とはぐれ、迷子にでもなったら困ると、アルスの隣へと並ぶ。


「ニッキさん、どうしたの? 僕に何か用?」


「アルス様、私と手を繋ぎませんか?」


「手を? 別に良いけど……。でも、どうして?」


「アルス様はどうやら、王都の建物などが珍しいご様子。私と手を繋いでいれば、はぐれる心配もありませんので、存分に色々な所に目を向けても構いませんよ」


 アルスはニッキの説明に納得すると、差し出された手を握る。ただ、手を握って歩くなど、いかにも王都に慣れていないお登りさんだという事を証明しているようで恥ずかしいのか、言い訳を口にする。


「でも、ニッキさん。別に僕は迷子になっても大丈夫なのに……。皆んなともし、はぐれちゃった時は、幼精さんに聞けば教えて貰えるから……」


「幼精さん? アルス様、幼精さんとは一体……」


 アルスはニッキに問いかけられた事で、自分が口を滑らせた事を自覚する。あっ! とばかりに、繋いでいない方の手を口元へと持っていき覆うが、今更口から出た言葉を取り消せるはずもない。


(そういえば、幼精さんの声が聴こえるって事は秘密なんだったっけ……)


 アルスは以前、辺境地の家でマーレがグロックとベティスの二人にアルスの事を説明した時の事を思い出す。あの時、確かアルスが幼精の声が聴こえるという事実は、あの時にいた人だけの話だという事だったはず……。


 アルスはバツの悪さから前を歩く両親へと視線を向けるが、二人はどういった家具を買うかを話し合っているようで、アルスが口を滑らせた事には気付いていないようであった。


 アルスはホッと胸を撫で下ろすものの、ニッキにどう言い訳をするか思い悩む。ただ、口を滑らせたのは他ならぬ自分自身である。仕方ないとばかりに続きを話す事にした。


「ニッキさん、今から僕が言う事を信じてくれる?」


「え~と……。それは、聞いてみない事には何とも言えないですね……」


「それも、そうか。じゃあ、今から僕が言う事を誰にも言わないって約束してくれる?」


(あえて約束を取り付けねば為らぬほど、重要な事柄なのでしょうか……。もしや、ベティスお嬢様がアルス様を好いておられる理由に関係が……?)


 ニッキは事の重大さに気付き、再びゴクリと唾を飲み込む。


「分かりました。誰にも言わないと約束します」


「実は僕、幼精さんの声が聴こえるんだよね……」


「アルス様、その幼精さんというのはどのような存在なんでしょうか?」


「う~ん。口で説明するのは難しいんだけど、幼精さんは至る所に居るんだ。今、僕たちの周りにも居るんだよ?」


「今もですか? アルス様、私にはその幼精さんというのが見えないようなんですが……」


 ニッキは念のため自身の周りをきょろきょろと見回してみるが、視界に映るのはいつもの王都の風景である。もしや、からかわれている? 若しくは、子供の戯言だろうか? と思いつつも、相手はベティスの殿方になるやもしれぬ相手である。あえて口には出さず、続きを聞くことにした。


「うん。実は僕にも見えないんだよね……」


 アルスはそう言うと、苦笑いを浮かべる。


(どういう事!? やはり私はからかわれているのでしょうか?)


 ニッキはアルスに対し不信感が若干首をもたげるものの、表情に出すわけにはいかない。頑張って平静を装ってみたものの、眉だけがピクピクと動いていた。


「ただね……。姿は見えないんだけど、声は聴こえるんだ」


「声ですか? それって、その幼精さんとやらの声という事でしょうか?」


「うん。実はそうなんだ。ニッキさんにさっきお願いしたのは、僕が幼精さんの声が聴こえるって事を秘密にして欲しいんだよね……」


(もしや、アルス様は幻聴でも聴こえるのでしょうか?)


 とはいえ、所詮子供が言う事である。狂言の可能性もあると、軽い気持ちで聞き流す。


「判りました。アルス様が幼精さんの声が聴こえるという事を秘密にすれば宜しいんですね」


「うん。お願い」






 その言葉を最後に、暫し二人は手を繋いだまま無言で歩く。


(それにしても奇妙な話ですね。子供の狂言とも取れる言葉を秘密にしておかなければならないとは……)


 そして、ニッキの中で好奇心が、メイドと自負する自分を(いさ)めている心を上回ってしまい、疑問が口をついて出てしまう。


「アルス様、先ほど幼精さんの声が聴こえるという事でしたが、それは本当なのでしょうか?」


「う~ん。やっぱり口で言っただけでは信じて貰えないよね。う~ん、そうだなぁ~。じゃあ、ベティが今、何をしているのか幼精さんに聞いてみる事にするよ」


「判りました。では、お願いします」




 暫し、また無言で歩く二人。


 だが、不意にアルスが立ち止まる。ニッキもアルスと手を繋いでいる以上、止まらざるを得なくなる。


 どんどん離れていく、ゼストとマーレの背中。


 ニッキがどうしたのだろう? と(いぶか)しんでいると、アルスが遂に口を開く。


「ニッキさん……」


「はい。何でしょう? アルス様」




「ベティが……。ベティスが……部屋で一人叫んでるようなんだけど、これって一体どういう事っ!?」

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