エピローグ 未来へ
デザイア研究所が閉所して半年後、ボクはリッキーさんの事務所で働いていた。
「クイン、その資料を取ってくれないか?」
「はいはい、どうぞ」
「この仕事が終わったら研究していいぞ」
リッキーさんに許可をもらうと、ルーカスが目を輝かせて「本当か!?」と身を乗り出した。
ここは探偵事務所……なんだけどリッキーさんがボクやルーカスのために研究室を作ってくれた。
「フフッ、本当に研究が好きなのね」
ルシールさんがクスクスと笑う。その隣でルイスが「相変わらずだな……」と少し困ったように呟いた。
ドラセナ君は、いつの間にかどこかにいなくなっていた。ただ、一枚の手紙を置いて。
――短い間だったけど、ありがとう。ようやく元の世界に戻れるよ。
それを見た時、元の世界……?とは思ったけど死人を蘇らせる石が作れるぐらいなのだ、違う世界があっても、時間を行き来出来てもおかしくない。そう割り切って、その手紙を引き出しに大事にしまった。
ボクとルーカスが研究していると、ルイスが「キリのいいところで終われよ。もう夜だからな」と声をかけてきた。
「分かってるって。ここまで終わったら一旦やめるさ」
果たしてその約束は果たされるだろうか?……多分無理だろうな、だってかなり中途半端だもん。
その予想通り、結局終わったのは深夜一時だった。
「まったく……お前達は限度というものを覚えろ」
「悪かったって」
「仕方ないじゃん……キリ悪かったんだし……」
ルイスに怒られながら、三人で帰路に着く。
変わったことと言ったら、ルイスとボクの関係だろうか。
数カ月前、たまたま休みが被ったから一緒に遊びに行っていた時のこと。
「クイン、好きだ」
水族館で一緒に魚を見ていると、突然告白された。
「ん?ボクも好きだよ?」
「いや、そういう意味じゃなくて……異性として好きってこと」
その言葉の意味が最初は分からず、一度頭の中でかみ砕いてみる。そして理解すると、顔が熱くなった。
「え、あ、そういうこと……?」
「……うん」
「……ボクも、ルイスが好きだよ」
ボクがルイスの手を弱く掴むと、彼も優しく包み込んでくれた。
恋人になったことは、なぜかすぐに周知された。クリムさんとの婚約もどうしようか悩んでいたけど、
「別に、ルイスになら君を任せられるよ。……幸せになりなさいね」
そう言って、笑ってくれた。それでいいのか?まぁいいのか、そういう契約だったし。
そんなことを思い出していると、ルイスが微笑んだ。
「さて、私はそろそろお暇しようかな」
それを見ていたのか、ルーカスがニコニコしながら自分の家に帰ってしまった。
二人でボクの家に向かっている途中、気になったことを聞いてみた。
「……ルイス、本当にボクなんかでよかったの?ボクはエキナセア家のためなら命さえ捨てるような人間なのに」
いずれ、本当に死ぬかもしれない。そうなった時、後悔するんじゃないか。
だけど彼はギュッと手を握って、
「構わないさ。私だって同じようなものなんだから」
そう、答えてくれた。それだけで胸が温かくなった。
――あぁ、やっと「幸せ」を見つけたよ。
今まで復讐しか考えてこなかったボクには過ぎた幸せだけど。許されるのならばこのままこの幸福が続きますように。そう、願った。




