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4 ディルク

 どこから話そうか。ディルクは自分の出自について語りだした。

 ディルクの生まれた村はとても鄙びていて、このクルス村よりもずっと田舎だった。

 その村では迷信深い人が多く、閉鎖的な場所で毛色の違う者を忌み嫌った。


 その忌み嫌われていた者がディルクであった。


 幼い頃から銀色の髪を持ち周囲の者たちから人狼ではないかと疑われて育てられた。子供たちもディルクと接することはなかった。大人から人狼だから遊んではいけないと言われていたようである。子供たちはディルクをみるとそそくさと逃げ出した。それはまだましな方である。ときどき石を投げつけられたこともあったのだ。

 実の親ですらディルクを人としてみていなかった。

 母が金髪で父が茶髪であったから。

 どちらとも異なる髪色に親は本当に自分の子供なんだろうかと疑問を抱いていた。

 ディルクは子供ながらに親から受ける疎外感を感じ取っていた。


 大人になってから知ったことであったが、ディルクの母方の祖先は大陸のずっと北の異民族の血が混じっているという。北の方では銀色の髪の者はいて、この国程は珍しいことではなかった。

 おそらくディルクの髪の色は祖先からのものだ。

 それでもディルクは親とそのことを話すことはしなかった。話す前に病で死んだというから。


 話を戻すが、ディルクが狩人にとらえられたのは八歳のころであった。

 ディルクは突然母から疎遠であった祖母の見舞いに行くように言われた。

 今までそんな話は聞いたことがない。

 不審に感じながらもディルクは母の言うままに村はずれの小屋に暮らしている祖母を訪ねた。

 しかし、そこには祖母の姿はなくいたのは銀十字の狩人であった。

 どうやら村の者たちが銀十字に直訴し、狩人派遣を依頼したのだ。


 人狼の子ディルクを退治してくれと。


 村の大人たちは早速ディルクを狩人に捕らえさせる為にどうするかを話し合った。そして、親はディルクを狩人のいる小屋へ行かせることを条件に村八分に合わないようにしてもらうことになっていた。

 親はこの条件をあっさり飲み、ディルクを小屋へ向かわせた。

 狩人たちに捕らえられたディルクは手に持っていた荷物を暴かれた。それは母に見舞いの品と言われ持たされたものだった。

 その中は血のついた子供の服であった。

 まったく身に覚えのないものにディルクは混乱した。しばらくしてようやく理解した。


 自分は確実に狩られるために陥れられたのだ。


 これを見て狩人はディルクを人狼と確定し、処刑することにした。

 そのまま殺されるところだったディルクであったが、後からやってきた別の狩人によって助けられた。彼はディルクを一目見て人狼ではないと確信し、検査を行いディルクが人であることを証明したのだ。

 それによりディルクは無事村へ戻されようとしたが、ディルクはそれを拒否した。

 親ですら信じてもらえず、しかも陥れられたのだ。

 そこに戻っても自分はもう暮らせないと思った。

 ディルクは救ってくれた狩人に願った。自分を銀十字に入れてほしいと。

 ディルクは欲しかった。人狼ではないと証明するものが。


 銀のロザリオ。


 人狼をはじめ異端者がそれに触れると火傷をしてしまう。つまりそれを肌身に着け平然としていれば自分は人狼ではないと証明できる。そして安心できた。


 これが、僕を証明してくれる。人であるということを。


 銀のロザリオを持つ狩人となったディルクは多くの人狼を狩っていった。

 その時に身に着けていたのは赤いフードのついたコートであった。

 赤は銀髪より目立つ。

 ディルクは銀髪を隠すためにわざと赤を選んで身に着けた。

 親でも信じてもらえなかったこの銀髪を人に見られるのは嫌だった。

 人狼にもみられるのは苦痛だった。仲間だと思われたらどうしようと思った。

 そうしているうちにディルクは「赤ずきん」という異名を持つようになっていた。―――



「というのが僕の話」

 そうディルクは話を終了させた。ニコルの方をみてディルクはぎょっとした。ニコルの眼からぽろぽろと大粒の涙が零れ落ちていたのだ。

「な、泣くほど嫌な話だったかい?」


「違うのっ………私、自分の無知さに腹が立って……あなたを疑ってごめんなさい」


 両手で顔を覆い謝るニコルにディルクは困ったなぁと笑った。

「いいんだよ。未だに僕をみて「人狼!」て怒鳴る人は多いし。ま、いざとなれば銀のロザリオで証明できるし慣れているし平気平気」

「慣れるわけないじゃない!」

 ニコルはディルクの言葉を否定した。

「うぅん、慣れるということはそれだけ辛い思いを何度も繰り返したのよね。悔しい………あなたの苦しみをきちんと理解できない自分が。ごめんなさい」


「ニコル………ありがとう」


 ディルクはそう言いニコルの肩に手を添えそっと抱きしめた。


 いいんだよ。

 親でも信じられなかった僕を君は信じてくれている。

 君は僕の為にこうして涙を流してくれる。

 それだけで僕は嬉しいんだ。

 同時に君に泣かれるのはつらいことだけどね………


 それでもうれしい。

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