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1 カトラ丘と薬草

 村から北の方向を進むと坂がありさらに進むと丘への登り道となる。

 岩肌が見え、あちこちに草木が生えていた。薬草ではと思ったものをいくつかニコルに確認してもらうが、見た目と匂いで違うという。

 頂上に生えている確率が高いので行くしかないようである。


 あれは


 道の途中に倒れた木に腰を掛けている人影がみえた。十歳ほどの小さな少女であった。

「おじさん、だれ?」

 少女はディルクをみてそう尋ねてくる。それを聞きディルクはぐさりと刺さるものを感じた。

「おじさん………て」

 横をみるとジルケがぷくくと笑いだした。

 まさか、おじさんと言われるとは。まだ二十代……しかし、この年頃の子からみたらおじさんの分類なのか。

 ふと少女の右足をみると怪我しているのがみえた。

「それ、どうしたんだい?」

「引っかかって転んでしまったの」

「ええ、と」

 ディルクは自分の荷物から布を探した。

「ディルク、これを使って」

 ニコルは自分の荷物から清潔な布と傷薬の入れ物、水筒をとりディルクに差し出した。

「ありがとう」

 ディルクはそれを受け取り、少女の足に触れた。少女は足を逃がそうとするが「治療しないとばい菌が入るから」と強く言うディルクにしぶしぶ従った。

 水で傷口を洗い、綺麗にふき取りその上に薬を塗る。

「いったい」

「よく効くから」

 痛がる少女にニコルは優しく声をかけた。

 布でくるくると足を巻き治療は完了した。

「はい、これでよしっと」

 少女はそっと右足の布に触れた。

「布は一日1回替えるんだよ」

 少女は座っていた倒れている木から降りて、くるりとディルクに向き直った。

「ありがとう、おじさん」

 そういい少女は足早にその場を去っていった。

「危ないよ! 家まで送ろうか」

「いらない。慣れてる」

 ディルクの提案に少女は必要ないと答えた。元気なことですぐに姿を見失ってしまった。

「だからおじさんって」

 少女が去ったあと、ディルクははぁっとため息とともに項垂れてしまった。

 ラウラは少女の去ったあとを見て首を傾げた。

「変ね。あんな小さな子がこの丘にいるなんて」

 ニコルもジルケもラウラもさっきの子供を知らないという。村の子でもなさそうである。

「もしかしたら人狼かも」

 ジルケは神妙な面持ちで言った。それにディルクが首を横に振った。

「まさか、あんな子供が」

 人狼であれば人をみて強い警戒をみせ、場合によっては襲い掛かってくる。相手が狩人であればなおのこと敵意を強くする。今の子供は狩人であるディルクに対して特に何の反応も示さなかった。



 カトラ丘の頂上にたどり着くとニコルはようやく見つけた草にかけよった。じっとそれを見て匂いを嗅ぎ興奮して呟いた。

「ルネス草だわ。これで薬が作れる」

 早く持ち帰って薬を作らなければ。

 そう思い薬草を採取すると、その後ろに狼が襲い掛かってきた。


「危ない!!」


 ディルクは短剣を抜き狼を薙いだ。きゅーっと泣き叫ぶ狼は地に倒れるが、死んではいなかった。獣は体制を立て直しディルクへ敵意を示した。ディルクはその狼に喉元へ短剣を投げつけた。短剣は見事に命中し、狼はその場に倒れこんだ。

「ディルクさん」

 心配そうに声をかけるニコルにディルクは厳しい視線でにらみつけた。あまりの怖さにニコルはびくりとする。

「危ないだろう。突然離れちゃ」

「ごめんなさい」

 険しい表情で怒鳴られニコルはしゅんと落ち込み謝った。すぐにはっとしたディルクは大きく深呼吸をして穏やかな声で尋ねた。

「怪我はない?」

「うん」

 ニコルの小さな返答にディルクはほっと安堵した。

「よかった」

 駆け付けたラウラはすぐに対応できなかったことをディルクに謝った。

「いや、いいんだよ。他にも狼はいたようだしね」

 ラウラがいた場所をみると狼が2匹倒れていた。ディルクがニコルを助けている間に彼女は2匹の狼を倒したようである。素晴らしい体捌きである。ディルクは関心してしまった。

「あったわよ」

 ジルケは丘の上にある陣を示した。

 目当てのものであり、これで4つ目であった。

 ディルクはそれをメモに書き写した。

「これを探していたんですね」

 興味深くニコルはディルクのメモと陣を見比べた。

「うん、どうやら人狼がこれを守るために眷属の狼に守らせているようなんだ」

 ディルクはメモを懐にしまい、2つの目的が完了したということに満足した。


 いや、まだ満足できない。


 まだ村の方ではトーマスが病に苦しんでいる。急いで薬草を持ち帰って特効薬を作らなければならない。

 ディルクはちらりとニコルの手に持っている薬草をみた。今まで通った場所に生えていた草と同じようにみえる。それを言うとニコルは笑って説明した。

「そう、だから自分で確認したかったの」

 わかりにくいが、これは茎近くの葉が少しまるっぽくなっていることを示した。今まで通った先々にあったのはこのまるっぽいのはなく、すべてギザギザなのだという。


 まる………


 確かによくみれば茎近くのが一部ぎざぎざではない。

 だが、わかりにくい。

 確かにこの薬草を得るにはニコルが来る必要はあっただろう。

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