6.外からの来訪者
クルス村にも商店街というものは存在する。といっても5つ程しか店はないのだが。
入り口付近にいくつか店用の小さな小屋が置かれており、商品を並べている。
露店に近い形式であった。
そこで他の町から仕入れている食品や生活用品が売られていた。
「はい、りんご3つといつもの茶葉ね」
店番をしている少女メリッサは馴染みの客人に注文の品物を渡した。
茶葉の中身を確認して客は満足にほほ笑んだ。
「そうそう、このお茶よ。メリッサちゃんわかってるね」
客人はそう彼女を褒めて代金を払った。
「また来てくださいね………あら」
メリッサは商店街に買い物にやってきた少女をみて声をかけた。何やら元気がなさそうである。
「ニコルちゃん」
声をかけられニコルはメリッサの方へ振り向いた。
「メリッサ姉さん」
ニコルにとってメリッサはお姉さんでありよく懐いていた。
「ちょっとおしゃべりしましょうよ。お客さんが来なくて退屈なの」
「さっきいたでしょう」
「うん、でも今日はもうお客さんは来ないわ」
ほとんどの客人は昼前に購買して午後からは2,3人これば来た方と思うほど少ないのである。さすがに退屈であるとメリッサはひとりごちた。トマト祭りになれば少しは客の足は増すだろうが。
「もう、仕事中なのにしょうがないな」
ニコルはしょうがないとしばらくメリッサと談笑した。話しているうちに少しずつニコルの表情が柔らかくなっていくのを確認してメリッサは内心安心した。
前日のクレアの事件で相当ショックだったためニコルは元気がなかったのをメリッサは気にしていた。
「やっぱりニコルちゃんは笑っている方がいいわ。確かにクレアちゃんのことは残念だけど、いつまでも気を沈めてはあの子が心配しちゃう」
そうクレアはほほ笑んだ。それを聞きニコルは俯いた。
「姉さん………私ね。人狼が許せないの。どうやったら人狼を復讐できるのか………いっそ、ディルクさんのように狩人になってしまえば」
「確かに私も人狼は憎いわ。でも、クレアちゃんはニコルちゃんにそんなことを望んでいないと思うの。もし、大けがしちゃったらとても悲しむわ。だから、人狼のことは専門の狩人さんに任せましょう」
私たちは彼に仕事しやすいよういサポートしてあげましょう。
それが自分たちにできることなのだ。
そういうとニコルはまだ納得しきれていない顔であったが、理解できないわけではなかった。こくりと頷いた。
「でも、どうしたらいいのかしら。私に何が………」
森の案内もいざというときの身を守る方法を知らない。ジルケと比べれば自分はお荷物になってしまうだろう。
「ニコルちゃんはそのままでいいわ。そうだわ、たまにお菓子を作ってあげたら。後は疲れをとる薬茶を煎じてあげるの。薬茶はニコルちゃんも得意でしょう?」
ニコルは幼い頃から薬草学に興味を持ち、村の医者にお願いして教材を読み込み薬の調合も手伝っていた。とても熱心でもう少し大きくなったら薬学の学校へ行ってみたらどうだろうかと医者に勧められている。
「うーん、薬茶かぁ。それなら何とかなるかも。料理は苦手だからお菓子は無理かな」
「あら、ニコルちゃんみたいな可愛い子に作ってもらっただけで喜ぶと思うわよ」
「そ、そうかな」
「そうそう」
くすくすと笑うメリッサにニコルは何?と首を傾げた。
「あの人の話になるとニコルちゃん、可愛い顔になっちゃっているなぁて」
それを言われニコルはかぁっと顔を赤くした。
「そんなことはないわ。もう、変な言い方やめてよ」
「あらあら、怪しいわぁ」
メリッサのからかいの声にニコルは頬を膨らませ拗ねた表情をみせた。わかりやすい子だとメリッサは内心いじらしく感じた。
「もし」
大人びた女性の声がした。そちらへ振り向くと見たことのない程のきれいな女性がいた。黒いドレスにレースのついた白い花の飾りがあしらわれた帽子をつけている。淡い金髪のショートカットに驚く程白い肌に蒼の瞳、顔だちは女性でも思わず見とれてしまう程美しく妖艶に感じられた。
綺麗な人
ニコルは思わずため息をついてしまった。
「教会はどちらにあるのでしょうか?」
「この道をまっすぐ行って………よろしければ案内しましょうか」
ニコルの提案に女性は嬉しそうにほほ笑んだ。
「あら、いいの? そうしてくださると助かるわ」
もちろんとニコルは笑い、メリッサに別れを告げて一緒に教会へ向かった。
メリッサはその後ろ姿をみてニコル同様にほうっと息をもらした。
「綺麗な人ね。でも、誰かしら? 旅人じゃないようだけど」
着ている衣装は黒を基調にしたものでまるで喪服のようであった。もしかしたら教会で眠るクレアを訪ねてきたのだろうか。
とすると一体誰だろうか。




