裏と表と、狭間 2
「……『魔法売人』か。これまたタイムリーなやつを」
敦はビール缶を置き、タンスに向かうとガサゴソと何かを探していた。
その間麻央に目を向けたが、再びホールドされた麻央は完全に涙目だった。魔王様でも怖いものはある、とはこの事か? 少なくとも才加に向けた恐怖の常識が通用しないのが怖いのだろう。なんか才加から花が咲いてるんだが、あれ幻覚だよな?
「…っと、これだな」
敦は一つの封筒を持って席に着く。そして中身を取り出して俺に渡す。
「ほうほう、これは……放漫な胸ですな」
ピクッとしたのは才加で、ビクッとしたのは敦だった。
「ま、間違えた!!」
「いや嘘だけど」
実際は普通にレポートノートだ。この感じだと、この人まだアナログ系か。今はデジタルの方が同居してても安心なのにな。
ちょっとからかったつもりだった。いつも通り敦か才加がチョップして全て終わる––––
再びヒュッ、とフォークが俺のほおをかすめた。
今度投げたのは、麻央だった。
「……おい、冗談だって」
「ダメだよユウマ、そんな汚れたもの見ちゃ。ほら渡して。僕がすぐに滅却して蹂躙して根元まで断つから」
完全に光を失った瞳が俺を見ている。ヤバイ、マフラーのセーフティーが壊れる!
「やっぱり巨乳なの? でも貧乳でも困るなー、僕どっちの方かわからないから。なーユウマー、僕ってどっちかなー?」
「お前論点変わってるだろ! あと俺は別にそっちで決めねーよ!」
まずい、非常にまずい。人様の家で今完全に刃傷沙汰が起ころうとしている。麻央は周りを見て何か凶器探しているし、このままいたら死ぬ。
「…ひゃ!?」
……そう思っていたが、不意に麻央は目の光を戻し、なぜか顔を赤くして驚いた。
よく見ると、まだ抱きしめていた才加が麻央の胸に手が触れていた、いや揉んでた。
「いやいやマオちゃん、これはなかなかいいものですな〜。まさに美乳! これで落ちない男はいないっすよ〜」
「や…やめ、やめ…て」
かなりアレな声になっているが、数分して才加は手を止め、麻央は完全に大人しくなった。
そして最後に才加は俺に視線を向け、
「少年、冗談は程々にしないとね」
「……身をもって理解しました」
今後麻央の前では絶対にそれ系のネタで冗談をしないようにしようと、今日心に誓った。




