裏と表と、狭間 1
「…何が知りたい」
「分かってるでしょ?」
分かってて聞いているのは知ってる。敦は警戒心が強く、簡単にボロは出さない。それが身内でも、下手なヒントになる言動を取ろうとはしないし、実際彼の秘匿能力の高さが今のグレーを作っているのだろう。
「まー、まず俺のその後から話すか。そこから話すに足ると判断してくれたら話してくれると助かるけど」
と、俺はこの家を出た三月から今日までの一連の出来事を話した。
「へー、『霧隠し』が自然消滅した背景はやっぱり少年でしたか」
「まー、裏のナンバー2壊滅させたお前なら可能か」
半分のドーナツが消えたところで話は終わる。そして口々に感想を述べる。
「……あの自衛隊のガキがお前のダチかと思うと納得はいく。お前、敵も味方も特殊な奴が集まるからな」
「おいおいアニキ、あなたがこの地最初の人だって分かってる?」
「俺は違う」
「俺だって違う」
「……さらにはあの葉坂の理事長、会長とコネを得るとか、お前いよいよステータスチート無双だな」
「まー、それは若干自覚ある……が、それはそっちもだろ!」
俺は指をさし、
「あんたは警察庁トップの息子にして、彼女は裏トップの––––」
そこでヒュン、とフォークが俺の顔をかすめた。
この寸分違わない狙いができるのは、どこをスイッチとしてるのか頭の切り替わった、殺意の目の才加にしか出来ない。
「……少年。この子に嫌われたくないから口を閉じて」
どこと無く優華に似た怖さがある。あいつ、一度キレると本当に怖いんだ。
ハッとして、ギギギッと油のささってない機械のように麻央に向く。
『金谷 才加』はトラウマがある。彼女の家の関係で誰もより付かない。唯一そばにいたのが敦だけで、だからこその執着心の強さが、時として狂気的になる。普段はだらしないのも、嫌われるよりは好かれないようにするため。
だから、一般人にはその顔を見せないし、珍しく今日は麻央がドストライクだったから普段より好かれようとしていたが、今ので彼女は麻央に怖れられたの言う恐怖が顔に出そうになる。
だが残念ながら敦の言う通りで、こいつはその筆頭なのだから。
「……ユウマに手を出すな」
彼女はちゃぶ台に足をかけ、対照の才加にフォークを突きつける。
彼女は豆鉄砲を食らった鳩のようになるが、
「……い」
彼女は逆に目を輝かせた。
「マオちゃん好きーー!!」
「へ!?」
予想外の返しに麻央は変な声をあげたが、ちゃぶ台を飛び越え才加は麻央に再び抱きついた。
「なんですか〜、嫉妬っすか! 大丈夫っすよ私警官ですから! 本気でやりませんて〜」
「ユウマー! この人怖い〜!!」
……本当にある意味麻央と才加は似ている。麻央も誰かに嫌われるのを怖れていたから。役職の関係もあり、才加に対する恐怖はこの『可愛がり』しかない。
「…刃傷沙汰はやめてくれ」
「アハハ…こいつ魔王だからな。多分だが、俺の知人で一番特殊」
「……本当にやめてくれ」
ちゃぶ台から落ちたものを拾いながら、そんな他愛ない会話をした。そう言う会話ができるほど、やはりこの空間だって特殊だ。




