粉吹市の苦労人 3
薄着の『金谷 才加』は部屋に入った後も麻央を離さず、むしろホールドしていた。麻央はもう完全に呆れめてクマのぬいぐるみ並みに体の力を抜いていた。
「……いいのかあの子」
「…それ聞くか? 無理だろあれ。ほらなんかすごく撫でてるし」
「まあそうだが、なんかお前に恨めしそうに見てるぞ?」
「勝手についてきた結果だし文句ねえだろ」
『佐藤 敦』は哀れみの目を麻央に送るが、それ以上に助けを求めてる麻央の目を無視して話を始める……わかった、助けるから泣くな!
「……あー、一応土産は持ってきた。ほら、喫茶カミキの新作予定のデザート。これ食べて感想欲しいんだ」
元々土産に、スマホ内蔵アイテムボックスにしまっていた『五色生ドーナツ』を4セット分取り出す。
「おおお!! じゃあお茶用意しますね!!」
「ここ俺の家なんだが……てか現金だなあのバカ」
才加は台所は飛んでいく。ようやく解放された麻央は俺の隣で、右腕をホールドされた。
「……おやおや、少年も隅に置かないっすな〜」
「そんなんじゃないって!!」
ひとまずはこれ以上話ができない状況を回避するために用意したが、
「先輩! これうまいっす!」
「……お前相変わらずの家事スキルだな」
両者好評だったため、今度店長に打診してみようと思う。遅れた流行って、意外とすぐ爆発するだろう。
「……さて。話聞いてくれる?」
俺の言葉に、敦は数秒の沈黙ののち、ビールを飲んで、
「……どうせ帰らないんだろ?」
彼はもう追い返す気はないようだった。




