粉吹市の苦労人 2
「……女連れか?」
「アッハッハ……」
玄関からの牽制で、この人はあげる気ないなと理解する。
俺だって困ってんだよ? だって関わらせたくない麻央がいるし…。
本当に勘だけは誰にも負けない麻央は、俺が三つ目の裏通りを見回った時に遭遇した。逃げたり撒こうとしても無駄なのは熟知しているため早々に降参して、それから何箇所か件の内容を話しつつ通り、このボロアパートまで来た。
俺の目の前にいる目つきが若干悪い男は、これでも『お巡りさん』だ。そして、日本に帰還して最初にあった人間だ。
それから一ヶ月居候したからこその距離感で、彼は嫌々そうに今にも扉を閉めようとする。まあ、足で邪魔してるが。
「……お前と関わっていいことないからさ、もう帰れ」
「やだなーアニキ! そう言いつつすでに巻き込まれてんだろ? いい助っ人紹介するから情報プリーズ!」
「やめろ! マジで巻き込むな! あのクリスマス以降から、前に話した東京の都市伝説『異能特殊対策室《特科》』の事実証明からの勧誘がめんどくさいんだよ! やっと今無能認定してくれそうなんだからやめろ!!」
「いやいや、俺ら側から見てもいい出世じゃねーか! 俺アニキならどんな異能犯罪とも対峙できるって!!」
「お前のお墨付きが一番いやなんだよ!! いいか? お前との関係も含めて推薦なんだ! つまりお前と関わり断てばやっと平凡な派出所のお巡りさん!」
「それ言ったら俺だって本当は平凡な高校生したいんだよ!! でも問題が勝手にやってくるし! 監視されるし! 俺が平凡になるまで道連れにしてやる!!」
「お前それが本音だな!? お前は永遠に無理だから諦めてとっとと帰れ! 俺まで永久雑用はごめんだからな!!」
あんなに(顔だけ)笑顔で話していたのに、既に臨戦態勢に移行している。強行突入を考える俺と、強行排除を考えるお巡りさん。
互いが睨み合う状態はまさに一触触発。どちらかが動けば始まる喧嘩。
そんな爆発寸前の状況に、のっそりと現れた女性が割り込む。
いや、実際には物理的に俺とお巡りさんを割って、俺の後ろで傍観していた麻央に近づき、
「……天使っすか?」
「へ?」
思いっきり、彼女の豊満な胸に麻央の顔が埋まっていく。
「も、もがガガガ!?」
麻央はジタバタと逃げようとするが、現在マフラーによって平均女子高生くらいの筋力しかないため、現役警官その二を振り解くことなどできず、しばらく粘ったのちに、麻央は諦めてダランと両手の力を抜いて彼女に身を預けさせられていた。
そんな彼女を見て、ようやく彼は深いため息とともに、
「……そこのお嬢さんを夜風に晒すわけにいかないからだから、勘違いするな」
と、彼の部屋に招いてもらった。




