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「……せんぱーい、醤油」
「俺は醤油じゃねーよ」
我がままな同居人に醤油を渡し、俺は一服する。
「せんぱーい、煙」
「俺は煙じゃねーよ」
窓側のため、窓さえ開ければそいつは静かになる。
相変わらず目のやり場に困る露出具合にため息をついて空を見る。
「……せんぱーい」
「なんだよ」
「そろそろ春ですね」
「もう春だよ」
「お花見したいですね」
「そーだな」
「せんぱーい」
「なんだ」
「……ちょうど季節の移り変わりの頃だったっすね、あの少年との出会いって」
「やめろバカ、それふら––––」
ピンポーン♪
……この同居人は余計なフラグを立てやがる。そしてこういう時、俺はここ数日の面倒ごとにさらに拍車がかかるのだと思いつつ、俺は玄関まで進む。
しかしまだそうじゃない可能性だってある。ほら『シュレディンガーの猫』のように、この玄関の扉を開けるまではあらゆる可能性がある。もしかしたら集金、あるいは宅配、はたまた近所のお裾分けとか。
そう、たまたま偶然そんな話題で疑心暗鬼になっただけのこと! そう、この扉を開ければ––––
「よっ、アニキ!」
俺は自分の目を手で覆った。




