惣菜戦争 1
「よっ」
俺は雁字搦めの麻央に声をかけるが、すでに彼女は涙目であった。
「…ゆうま〜!」
「泣くなって。マヤ、解いてやれ」
舞夜も呆れつつ魔法を解いた。
俺は彼女に手を差し出し、
「さ、帰るぞ。今日はスーパーの特売日だ」
きっと誰にも悟られないようにもがくことばかり考えてたのか、そうなった理由を忘れた麻央はニコッと俺の手をとった。
「『平和湧磨』は病気である」
「なんだよいきなり」
舞夜は持久戦に弱い。このように市外までちょっと歩いただけですぐバテる。対して麻央は平気な顔。
「マオを見習って鍛えたらどうだ?」
「……そこのバカと一緒にしないでほしいのだー」
「素になってるぞマヤ」
舞夜は基本は大人な、少し威圧的な物言いだ。だが今のように素は子供っぽく、そもそも気が強い方ではあまりない。あくまで麻央を守る時に強がっているだけ。それだけ舞夜は麻央を思っている証拠でもあるが……。
ちなみに見分けポイントは雰囲気の他に、語尾が『〜じゃ』か『〜のだ』かだ。
「いいのだー。別にここぞで威圧できればいいのだー。ギャップ萌えなのだ〜」
「いや言葉違うだろ」
カートにカゴを突っ込んで野菜売り場から回る。今日はキャベツのまとめ買いだな。
「……お前ら」
「「!?」」
気配を消して菓子類を入れる舞夜と、どこで使う気か大人のための商品を何品か突っ込もうとしていた。
「マヤ、お前昨日散々買ったろ! お前は金稼いでから買え!」
「いやじゃー!! この新商品だけは譲らないのじゃー!!」
分かった。じゃあそれ以外全部返してこい。そしてマオは……お前に羞恥心はないのだろうからさっさと返してこい」
「なんで!? マヤに甘くない!?」
「お前のは論外だ!! そもそも未成年が買えるかバカ!!」
渋々二人は商品を返しに行く。
「…お前だけが頼りだよユウカ」
多分偶然か、優華が入れ違いに肉を持って現れた。それもちょうど激戦地帯と化したタイムサービスの。
「バイトは終わったのか?」
「………そもそもない。本屋でぶらっとしてたら見かけたから付いてきた」
「ほしい本買えたのか?」
優華は手提げ型の鞄から茶色い袋を取り出す。
「………『今考える私生活』」
「エッセイか」
「………『……浮気編』」
「ゼッテーロクでもない!!」
「………冗談」
優華は再び鞄にしまい、何かに気づいたのかカゴを物色し、
「………これも返してる」
「…あのバカ」
優華は『薄々』と書かれた箱を取り出した。あのバカ、巧妙に隠してやがったな。




