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彼が去ったソファーを見つめる。
ドッと汗が流れだしたのは、きっと思い出したからだろうか。
「...あんな目、初めて見た」
これでもお嬢様。
松尾家はそれなりに地位のある一族。
だから幼少から母といろんな商談に突き合わされた。
ただの顔合わせであっても、たとえ幼少期でも、その厳しい大人の目に、威圧に慣れてきたつもりだった。
実際、私は中学生からあらゆる商談を任され、それをうまくこなしてきた。
時には無理難題だってあった。それだって解決して良好な関係を築けた。
この学校だってそうだ。ただのコネクションをとろうとあの少女と交渉し、条件に入学があっただけ。どこの名門の学歴より彼女との関係がのちに高い結果を残すと思ったから選んだだけ。
私の交渉はミスがない。だけど二度、命をかけた。
一度は裏の日本最強の家名『帝』家の同年代の当主との交渉で。
そしてそれをフラッシュバックさせた、『平和 湧磨』の前者の条件だった。
「......思い人がいない、か。そんな条件出してよく言えるわね本当」
目を覆いながら、私はひと眠りしようと思う。彼が迎えに来るまで。
その間に心に刻むのは彼の前者。それはきっと、意識してなければ足元をすくわれる言葉。あの、人を殺めることに躊躇う事を忘れた、冷徹な目に。
「科学で解決できないことは引き受ける。だから『煤野 麻央』には異能、超常でかかわらせるな」
...あれに愛を感じないわけないでしょ?




