幼女会長の依頼 1
「……『魔法売人』?」
会長の2つ目の案件について、明らかに日本では聞かない単語に、俺は首を傾げる。
しかし至って真面目に会長は続けた。
「そう。どうもかなり前から都市伝説の類で囁かれた内容だ。それも粉吹市のどこかの裏通りにて商売をしていて、その商人に会えば《魔法の杖》やら《魔導書》が貰えると言う話だ」
「おいおい、ファンタジーじゃないんだからあり得ないだろ?」
と言うが、彼女は眉一つ動かさない。
やはりと言うべきか、おそらく彼女はこちら側に足を踏み入れようとしているのかもしれない。
「…別に本気ではないさ」
彼女はため息をつき、
「…しかしながら、その噂に我が生徒、近隣の子供達が『探検』と称して探し回っているんだ。あくまで噂だと理解しているとは思うんだけど……」
「治安、ってところッスかね」
彼女は静かに頷いた。
粉吹市は確かに悪い場所じゃない。商店街を始め、住人は優しさと活気に満ち溢れている。
しかし裏で、ガラの悪い人間が徘徊している事もある。
少なくとも約半年前までは反社会勢力が表でも牛耳っていた。だから商店街は活気がなくなり、唯一の避難場所は学校だったと言う。なんでもその反社はどうやら学校には手を出せなかったとか。
「…確かに危ないですね。最近はようやく警察が動いて取り締まったという話ですが、それでもゼロではないですから警戒の必要はありますね」
「そうなんだ。それにこの話がこの市内限定にかなり増強されているのもわかっているかい?」
「増強?」
話にさらに尾ひれがついたのか? 俺は特に最近起こった事を考えるが、しいて言えば『霧隠し』だろう……
「クリスマスの『聖夜の魔法使い』のうわさが困った事態を作ってると思うのだがね?」
......ああこの人分かってるわ、絶対に。
彼女はただ、笑みだけを向ける。
俺に拒否権がないのかもしれない。きっとこの人はどんなに逃げ口を探しても外堀を埋めてくる。
俺は頭脳派ではない。なら、平和的解決の糸口しか探さない俺にとって彼女はまさに『キラータイプ』だ。
「...ふふ、そう絶望しないで。あなたのその力、そしてここ一週間のあなたの行動から推測できた人となりを踏まえてよ。いくら私でも『異能』の類でのコネクションはないの。まあ、あなたが今後その位置に立ってくれればうれしいはね」
「......はは、分かりましたよ会長。だけど条件があります」
俺は紅茶を置き、その条件をのんでもらうように説得した。




