波長が合う者 2
「…つまり、異能を強化しているってことか?」
「ああ、多分な」
「なるほど……それなら解析できないのも納得だ!」
一通りの出来事とミサの研究情報から、恐らく『霧』を発生させたり《オーク》が現れる原因の一端には《神樹》が関係しているものという仮定が生まれた。
あくまで仮定、推測の域だが、『神隠し事件』の際も、召喚士達が想定していない規模になってたと聞いたことがある。もしかすれば本来は数人規模だった召喚も、神樹の力で増幅されたのかもしれない。召喚士は強力な1人を呼んだつもりが、自衛隊員のハジメの話じゃ合計千人が突然消えたらしい。召喚後に起こった『出来事』合わせ、人数は多分合うのだ。
そう考えると、やはりこの木は切り落とすべきな気もする。しかし同時に、ここまで力を与えた神樹を、無傷で切り落とせるのだろうか?
何かしらの反撃があるかもしれない。少なくとも今、それをするのにはリスクがあるし、リターンがなさすぎる。何より切り落とした時にここを中心に大爆発して市全体壊滅、なんて死んでも死に切れない。
何より、天才少女様はこの木にご執心で、今うるうるとした瞳でこちらを見つめられたら……。
「……分かった。現状どちらにしてもこの木は切り落とせない。だから保留だな」
「やったーー!!」
ミサははしゃぎ、俺は木を見上げる。
だが、この木は考えようによっては『仇』だ。この木がなければ俺たち家族が巻き込まれることもなかったはず。
そう考えたとき、それを再び考えるとき、俺はこの木に怒りを抱くのだろうか?
この誰もを魅了してしまいそうな夜桜を、俺は––––。
「…っと、流石にそろそろ終わりか」
俺は立ち上がり、再び現れた団体客に向けて手をかざす。
「お花見はご遠慮願おうかね」
「ははは、やっと会えたよユウマ!!」
と、その団体客の中心に見知らぬ男が一人、高らかに笑う声が辺りをこだまする。
「誰だ?」
「……だれだ、だと?」
男は怒りあらわに睨む。
「お前が覚えてなくとも俺は覚えてる! あの日、イディオで、貴様が俺を殺した事を!!」
「だれだよ、本当に」
「キサマーーー!!」
男は絶叫し、手をかざす。
「『黒弾・リベンジバレット』!!」
「『プロテクション』!」
散弾のように放たれた魔弾を防ぐが、息つくまもなく右手を黒く染めて突っ込む。
「『ダークソード』!」
「な?!」
黒い光が伸び、剣の形を作る。それが振り下ろされた時、プロテクションは壊された。
「消えろ、ユウマー!」
「だからだれだって!!」
魔力の膜を纏わせ、右手で斬りかかる手剣を流すように弾きながら後退する。もちろん後方にハジメとミサが巻き込まれないように。
「はあああああ!!」
さらに力を込めたダークソードは、流石に防げないと即座に判断し触らず右前方に飛び込んで、転がりつつ体勢を整える。
だが、この角度、位置なら––––
魔弾の形成、収縮。もっと多く、もっと縮めて、確実に広範囲に。
そして、
「『魔砲弾・メガバズーカ』」
放つ弾丸は真っ直ぐに男の方へ行き、しかし弾速が少し足りず躱された。
だが、それでいい。
躱した先、うすのろなオークの一体の、ぶくぶくお腹に触れ、それは大爆発を起こした。




