波長が合う者 1
「どーよ!」
どうも実体のないのか、オークは豚の丸焼きになる前に霧散する。
いや、これが本物なら美味しいんだけどな〜。
そして見習えハジメ。お前が顔に出さないが若干引き気味なのは分かっている。が、対してこの幼女はキラキラと俺を見ているぞ? お前もこのぐらいどっしりとしてないと心持たねーぞ?
「ねえねえユウマ! 他は? ねえ他は!」
「つってもなー」
オークがやってきた方を向くが、あれからしばらく気配がない。来ないのに無駄に魔法は使えない。
だが、それ以上に静かすぎる気もする。霧の中だから亜空間にいるままだとは思うが、それでも静かだ。
「……あいつらの方に流れてないといいが」
ひとまず休むことにする。ハジメにアイコンタクトを送ると座り、その隣に彼女が座った。
「……そういやさ、ここに何しに来たんだ?」
「あー、それはね」
とミサは背中のどこに隠していたのかノートパソコンを取り出して開く。
「今、神樹から微弱だった謎の周波が大きく検知したの。それでここしばらく続いているから今日見に来たわけ」
と、《神樹解析システム》と書かれた画面を見せられる。棒線グラフが右肩上がりで示された、その下には時間が書かれていた。
「……これ、霧が発生した時間に近いな」
俺はハジメに見せると、ハジメも同じ意見になる。
「たしかにそうだな。まるでこの霧を発生させたのがこの神樹と言わんばかりに……」
そこで一つの答えを導き立ち上がるが、
「わーわー! まって兄ちゃんたち!! 霧隠し前からたまにあったから落ち着いて!! 研究対象壊そうとしないで!!」
と、流石に泣かれると心が痛んできたので座り直す。
「……だが、正直これが元凶に見えるぞ?」
「いやいやユウ兄! この日も見てくれれば分かるから!」
俺はミサの両肩をガッと掴む。
「……な、なに!? ちょ、ちょっと馴れ馴れしすぎた!?」
「ワンモア」
「え?」
「ワンモア」
「ちょ」
「ワ・ン・モ・ア」
「……ゆう、兄?」
なんだろう、すごく達成感がある。悪くないなこれ。
「…ユウマ、お前」
「まてハジメ、一応オタクな俺にとってこれは大事なことだ。だって一人っ子だし。『お兄ちゃん』とか『にいに』とか『兄様』なんて憧れてしまったが故だ。いいかハジメ、これは一種の生理現象でだな」
「まてユウマ、俺はそこまで聞いてないぞ! あと力入れて肩掴むな、痛いから!」
おっと、いつのまにかハジメの肩を思いっきり掴んでいたようだ。平常心、平常心……。
「……で、ミサ。データを見せてくれ」
「あ、うん。これなんだけど」
と今度こそミサが見せようとした日にちとデータを見る。
そしてそれを見終わり、納得ができた。
「……確かにそうだな」
「…おい、これって」
どうやらハジメもわかったようだ、この日付について。
日付は二つ。どちらも大きな山を描いている。
一つは十年前、おそらく『神隠し事件』当日だろう。
そしてもう一つは、『神隠し事件』の生存者達が現れた、去年の12月1日だった。




