夜戦と、女子会 2
先生は言っていた。『女子会はいいものだ』と。
この世界の最低限の常識を教えてくれた先生は、『女子会』とは恋話とか、薔薇色の話で盛り上がる花園の楽園、何で大袈裟に言っていて、あたしもユウカも憧れなかった訳じゃない。
確かにユウマと一緒が一番だけど、別に普通の女子高生に憧れなかった訳じゃないの。ないんだよ。でも……。
「……ねえ」
「…………」
「ねえ、こっち見なよ」
「………」
さっきからカスミはこちらを見ない。カナコはキョロキョロと辺りを見回して苦笑い……。
「ねえ、そらすな」
よく先生が怒ったときのトーンで彼女の顔を見ようと動くが、彼女は一向に目を合わせない。
事の発端は玄関だった。カスミが「あー、ちょっと待ってて!!」と三時間、あたし達を外に放置していた。三十分だった頃に一度、今日のご飯の材料を買いにカナコとスーパーに向かい、そして二時間かけて戻ってきた。しかしまだダメと言われ、それから三十分たった地点で限界を感じて強行突破した。
三時間かけたんだよね? いくら魔法使えるユウマだって、それ無しでも二時間くらいしかかけないよ?
しかし入った部屋は散らかってた。武器とかのイメージだったけど、普通に『汚部屋』だった。教科書始めぬいぐるみ、服に雑貨に、食器まで………インスタントだらけだし。
「……カナコ」
「は、はい!!」
「何か食材買ってきて。これ、予算内で。お釣りは取ってていいから」
財布から1万円を渡し、カナコは最初何か言いたそうだったけど、受け取って素早くこの部屋から出て行った。多分、今青ざめたカスミと同じものを感じたからだろうね。
「ねえ、カスミ?」
「……何でしょうか?」
彼女はいつになく静かにみる。出来るだけ怖くないようにニコリと笑ったけど、もう死人なくらい血相が悪くなる。
「……早く片付けようね?」
「……ラジャー」
「……マオはこっち側だと思ってたのに」
「あはは……マオさん、昔からユウマさんと一緒なんで、ユウマさんはどではないですけど家事得意なんですよ」
「ありえないわー」
カナコが気を利かせて一時間後に帰ってきた。その間にいらないものをゴミ袋に片っ端から突っ込んでいき、意外とプリント類が多かったからか早く終わった。そしてユウマ愛用の洗剤で洗濯、そうじ道具で窓拭き、雑巾掛けをさせ、カナコが帰った頃には見違えってピカピカになった事に驚くカナコと、ヘトヘトで倒れるカスミ。カナコから食材を受け取って料理を開始し、カナコの助けも借りて手早く、しかし少し凝ったハンバーグができた。
「はい、どうぞー」
「……ユウマの時ほどじゃないけど、なんか、すごくへこむ」
「じゃあ食べなくていいよ?」
「食べます! だからお肉下げないで!!」
必死に懇願するから再びテーブルに置き、箸を受け取るとガツガツと食べ始めた。あたしも結構やるけど、女子力大丈夫か心配だ。
「いただきます」
そしてカナコは、ユウマが褒めるくらい完璧に手を合わせて、お淑やかに食事する。ユウマ曰く、『異世界の大和撫子』とのことだけど、何故か別世界あたしでも分かる。
するとカナコをみてカスミも速度を落とした。
「いや、普通にしなよ」
「……私日本人なのに、この子の方が日本人っぽいから、ダメだなって」
「別にいいでしょ。ほら、ご飯よそうから茶碗貸して」
「……なんで、こんなに私生活で負けてるのよ」
カスミはもう涙を溜めていた。そこまでなのね…。
「カスミさん、気にしないでください!」
とカナコは励まそうとした。
「だって、わたしも生前は日本人ですから!」
彼女は必死に挽回しようとしたのだろう。でも、それは衝撃的カミングアウトで、
「「……へ?」」
瞬間箸を机に落とす音が二つしたのだった。




