『偽物』 4
売られたのか? 少女はそう思った。
未だ外は悲鳴と怒号で行きかう、そんな中で王と魔王が一緒。
「......民のために売るのね」
少女は剣を取り、ためらいなく剣を喉元に向けた。
「ならば、せめて民のために魔王の血を絶やす!」
「待て○○!!」
聞こえない聞こえない聞こえない!! 勢いよく突き刺す。
しかし刺せなかった。その前に魔王が、剣をつかんで少女の頬をはたいたから。
「...お前まで失えないんだ。もう、これ以上」
......なぜ泣くの? 魔王は、無慈悲で残虐な存在だったんじゃないの?
「......じゃあ何で母を...お母さんを殺した!?」
振り払い再び剣を取り、矛先を魔王に向ける。
「なぜだ魔王! なぜお母さんを殺した? 勇者だったからか? 答えろ!!」
王は俯き、魔王は唇をかみ、そして再び少女を見据えて真実を告げる。
「殺してはいない。もとより天命はそこまで多くなかった」
剣を落としてしまった。
「戦うつもりはなかった。そして殺すつもりもなかった。だが彼女にはお前が人質にされた」
涙が流れる。
「そして、それを知ってる私は、彼女に殺されるつもりで城で彼女の前に出た。しかし、どんなに『知将魔王』と呼ばれた私でも彼女には勝てなかったな」
そういい、折れた魔剣と、一度だけ見た母の折れた聖剣を懐から取り出す。
「彼女もまた、私に託すつもりで、死にに来るとは」
少女は崩れ落ちる。段々と声が近づいてきたことに二人は焦る。
「これ以上お前を人質にできない。こい、○○!!」
魔王は駆け寄って私の腕を掴もうとする。
本当についてっていいの?
もし魔界に行けば幸せなの?
「いや!!」
振り払い壁に逃げる。
それは絶対違う。少女は剣を取る。
「それって魔界に行っても同じじゃない!! 魔王の血の前に勇者の血もあるの! 魔物に襲われる日々よ!!」
「それは違う! 私が守る! 絶対幸せにする!!」
「信用できないよ!! ここでも、魔界でも厄介者! 嫌われ者! なら!!」
再び剣を首に向ける。
「死んだほうが楽よ!!」
「なら、ユウカが勇者をすればいいだけだよ?」
今度も剣を抑えられた。けどそれは魔王じゃない。魔王と王は今起きた現象に固まっているから。
少女だってそうだ。掴んでいるのは魔王と同じ赤髪の少女だったのだから。
「ちょっと貸してね?」
パッと掴んだ剣を取られ、バッサリと長い髪を切ってしまう。
「はい、返すね?」
彼女は剣を返す。受け取ったときに、ある異変を感じた。
「...熱くない?」
「そーだよ」
分かったように、彼女はにこっと振り返る。
「あなたにはもう『魔王の力』はない。ぜんぶ......そうね、魔王だから『マオ』でいいかな?」
そういい、今度は魔王に近付き、
「ユウカ、あなたが強くなるまで守るから」
そういい魔王の顔を殴る。予想外だった。
千年交代しないほどの強さを誇る魔王を、一発で壁の向こうまで吹き飛ばした。
「じゃ、王様」
と今度は王に笑顔で、
「ユウカは人間で勇者。だから問題は解決。だから......これ以上泣かせれば消すよ?」
「......ああ、友に、そして君に誓おう」
安心したのかマオはユウカに向く。そして告げる。
「殺しに来てね? 世界のためにね? ユウカに殺されるまで待ってるから」
騎士団が駆け付けたとき、もう彼女はいなかった。
「起きてくれない?」
「......まさかその年で父を超えるとは」
「何見てたのよ? ......偽物よ」
叩き起こしたマオは、駆け付けた騎士団に驚かれる。当たり前だろう。騎士団の後ろには王と、ユウカが立っているのだから。
そんなことを思っていると、一人の少年が切りかかる。それを守ろうとした魔王より早く、魔力の壁で防ぐ。
「あら、『剣聖』じゃない」
力を加えはじき返す。同い年で、よくユウカに突っかかっていたのを覚えている。唯一の話相手の一人。
そしてその親が、片膝つく彼の前に立つ。
「......父上」
「さがれリクト。あれはお前が対峙するには荷が重い」
その隣に騎士団副団長『バルドル』が立つ。
《異端審問会『司祭』》兼《騎士団『総団長』》ケインが不適の笑みを見せる。
「ここから出られると思うな。すでに魔王軍は撤退した。いくら魔王といえど重傷、娘は幼いときた。生存の道など—――」
と、そこで副団の大盾が割り込む。
一瞬で周囲の騎士団は壊滅し、ケインの笑みは消えた。
「ふーん、こんな奴にユウカは耐えたんだ?」
ユウカは、『剣聖』と王の前で魔法壁で守り切った。さすが勇者。
しかしこのまま引いてもユウカに何か悪いことが起きるかもしれない。
「......聞け、この地の愚民ども!!」
広範囲に響き渡る魔法を展開し、発生口にしゃべる。
「我は魔王の娘、マオだ! 今、封印されていた依り代から解放された我はまだ完全ではない! だが安心するな。、魔王は二人だ。完全になったとき、魔界を統べるとき、貴様らを我が支配下に置いて見せる! 泣いて詫びても容赦しない!! 精々今代の勇者を鍛えて挑んで来い! 我は楽しみにしているぞ!!」




