『偽物』 3
「待って!」
少女は我に返る。真夜中、聖剣をのど元に向けた少女がそこにいる。
声のほうを見ると、鏡がある。そしてその中に、両手を鏡に触れる、赤髪の、うり二つの少女がいた。
きっと涙を流していた少女とは違い、必死に止めようと声を上げ続ける鏡に近付く。
「あなたは?」
「...よかった~!」
第一声は安堵で胸をなでおろす。鏡に青髪の目をはらした自分の姿は映らない。
「...悪魔」
「ちょ、待ってって!」
慌てて手を振る彼女に、少女は剣をしまう。
「......あなたは?」
「ふっふっふ! わたしはね」
そういう彼女は含み笑いを浮かべ、そしてない胸を張る。
「わたしは、魔王の力で形成されたあなた!」
そして少女は微笑んで差し伸べる。
「わたしが、あなたの闇を背負ってあげる」
それから毎晩話した。少女にとって友達はなく、話す存在も数少なく、彼女にとっての鏡の奥の自分は日に日に大切な存在だった。
誰も知らない姉。
誰も知らない親友。
それを糧に生きることができた。
だから、別れは悲しかった。
「魔王が強襲してきたぞ! 早く支度しろ!!」
魔王が王都に現れた。
私は隠された。審問会の見解で『勇者の血をひく魔王の後継者』を連れに来たのだと。
鏡に不安と、恐怖を泣きながら告げる。
悲鳴が聞こえる度の怖く、震える。
そして目の前に魔王が現れた。
「さあ、行こう」
一見すると、伝承とは明らかに違う容姿だった。細身の、人間のような、そんな姿。
でも、あふれる魔力と瘴気は異常で、血に濡れた男の手を取ることに恐怖する。
「来ないで!」
あらゆるものを投げる。どうして避けないの?
「......時間がないんだ。お前はここに居続ければ不幸になる」
「来ないで!!」
「やめなさい」
そこでもう一人の声が止める。驚愕する。そこにはこの地を統べる王が魔王の隣に立っていたのだから。




