『偽物』 2
ああ、あんな話してるからだろうな。はっきりと夢だとわかる夢を見た。それも、かなり久しぶりの夢だった。
夕暮れ、太陽の見えない橙色の霧の中、一人の赤髪の少女が何も見えない空を見る。そこに少年が一人、覚えたての魔法を使って飛ぶが失敗し、しかし運よく吹っ飛んで、そこから木のてっぺんに落下し、ギリギリ少女が座る幹にしがみつくことができた。突然降ってきた少年を、少女は最初に驚き、くすくす笑いながら、怒っている少年に謝りながら引き上げる。
分かっているが少年は俺、そして今の髪色とは違って明るい赤の少女がマオだ。そしてここは、今はない『迷いの森』だ。
俺は起きているときのように魔法で浮遊する。もっとも起きている時とは違いイメージですらっと、調節せずとも行きたいところに連れて行ってくれる。
やはり夢の二人には干渉できず、気付くこともなく近くまで来れた。
「......ユウマは、○○が『偽物』ならどうする?」
「マオが?」
突然のカミングアウトであまり驚かない俺って、今考えると馬鹿なのか?
「ユウマに教えてあげるよ。○○が生まれた時をね」
その日の彼女は異常だと思った。だから解決の糸口を探すために、静かに聞いた。
あるところに幽閉された少女がいた。
青髪の少女は母を待って日々、外を見る。母は勇者で、少女と世界のために戦う。そんな旅の話を書いた手紙を読むのが楽しく、恋しかった。
少女はある日、外に出された。でもそれは外に出してくれるためでも、まして母が帰還したわけでもなく、真実を聞かされるため。
母は魔王を重傷を負わせたが戦死、少女を後継者として鍛えるためだった。
それまでは母の約束で幽閉されただけだったものの、亡くなった今、反故にされ、少女は最強の騎士の下で剣を鍛え、異端審問会によって精神を洗脳される。
魔王は敵、魔王は敵、魔王は敵.........。
魔王は敵、魔王は敵、魔王は敵、魔王は敵、魔王は敵、魔王は敵、魔王は敵.........
「なあ、あいつ魔王の娘だろ?」
ある日、彼女の心は壊れる。
光の素質が十分以上にあった少女は、その言葉を聞いた日から徐々に闇も目覚めだしたから。
そのことは知れ渡り、異端審問会はさらに力を入れることとなる。
少女は自己矛盾に落ちていく。
自分は勇者の娘で、魔王の娘で......
勇者を魔王が殺した。
勇者の母を魔王の父が殺した?
母を、父が殺した?




