『偽物』 1
家路に着くと麻央が心地良さそうに俺のベッドに眠っている。いや何でだよ。
横には優華が、隣で眠っている更識に肩を貸している状態で、他のメンツはひとまず解散していた。
すると、タイミングよく沢上からメールが来た。内容は「更識は今どうしてる?」だった。
俺はニヤリと笑い、ジッとしてるように優華に頼み撮影、3人とも撮ったからか即刻写真を送ると1分で「ならいい」と返ってきた。
「……フッ」
心配なくせに。
さて、そろそろジト目な優華に説明する必要があるだろう。もう深夜なんだが……。
結局首突っ込んでしまった『霧隠し』を隠すつもりだったが、優華の追求って優しいし怒りはしないが、隠せない。
「………だからみんな、おどおどしてたんだ」
『みんな』はおそらく一行メンバーのことだろう。あいつら何やってんだよ…。
「ま、そんなわけで、麻央には話さないでくれ」
「………もしかしたら気付いているかもね」
「それ本当に勘弁」
マジで介入したらややこしくなる。まだ生け捕りにできるかもしれないのに、麻央が入れば最悪消される。奴の痕跡は辿れるならそれに越したことはないのだから。
しかし、どうもさっきから浮かない顔をしている気がする。どこか上の空で、いつもより感情が読みにくい。
「......何があった?」
「............」
「...まあいいが、悩みがあるなら聞かせろ。あいつらにも、ましてクラスメイトにも聞けない悩みは抱えることが多いだろうしな、魔法の国出身の勇者さまにはな」
実際魔法がらみ、もしくは異世界がらみの悩みなら相談は難しいだろう。魔力とか、この世界の人間には無縁まして勇者となれば一向メンバーでも困るだろう。何せたいていの問題は個人で解決してしまうのだから。
「.........私と麻央、どっちが『偽物』?」
そこでようやく発した悩みを、俺は更識の反対に座って聞く。
「なんだそれ。別にどうでもいいだろ?」
「.........ユウマは知ってるでしょ?」
「まあな。マオが同じ悩み話したことある」
なぜか自然と麻央の頭を撫でながら告げると、優華は意外そうに見る。
「......それ、マオは気にしてないと思ってた」
「ハハっ、こいつは基本図太いからな。お前と明らか性格が違う。もしみんなが同じ問いを向ければ十中八九ユウカ、お前を本体とか姉とかいうぞ?」
「......そうかな?」
「ま、それがお前らしいな」
「.........ユウマは、どっちが本物に見える?」
「俺か? 分かったことを聞くなよ」
確かにこいつらのことは知ってる。まああくまで『聞いた範囲』までで、見てない部分まで加味しろっていうなら答えはノーコメントだが、別にそこまでを聞いているわけじゃない。
「......どっちも大切な『幼馴染』だ。それ以上も、以下もねーよ」
「.........そう言う事にしとく」
「おいおい、まるで嘘言っているように聞いてるのか?」
「......ユウマがどっちも『本物』って言ってるのは理解してる。でも」
と優華は少し寂しそうに顔を下げる。
「......マオに同じこと言える?」
「ああ言えるよ」
「......『幼馴染』だって?」
「.........」
ああそう言う事か、とこれ以上話すことなく優華はポフッ、と俺の肩に頭を預けて眠ってしまった。
脱線してこれ以上『霧隠し』を掘り返されなかったのは優華なりの配慮だろう。
「......『マジックハンド』」
手をスイッチに伸ばし唱え、紫色の伸縮する『魔力の手』で電気を消した。




