真相
本当に、彼と一緒に居るのは楽しかった。
出来る限り一緒に居ようと、早く用事を済ませてあの大木へ飛んで行くのだ。
今日も、そうしようとしていた。
それを止めたのは、同じ仲間たちだった。
もう既に旦那を見つけて、子どもたちを産みつけたという。
羨ましいなあ、と思いつつも、今の私には彼一色だった。
「あなたの方が早く死ぬのよ。」
どうやら、彼は秋の季節を過ごすことは出来るけれど、私にそれは厳しいらしい。
「でも、長生きする者も居るみたいじゃない。」
これは、植物たちから聞いた話だ。秋の風に揺蕩いながら飛んでいた者がいると。
私にそれが出来るかは分からないけれど、一緒に居たいのだ。
「子どもも生まないで、親に申し訳ないと思わないの?」
別の仲間たちが口々に言った。
それは、私も思っていたことだ。
子どもを産んで、またその子どもが子どもを産んで……これを繰り返して、自分の命を後世に残していく。
私の勝手な願いでそれを途絶えさせるのは、今まで何十代にも遡る祖先たちの命を殺すことになる。
「兄弟がたくさんいるじゃない。」
そう、私と同じ使命を受けて育った兄弟たちがたくさんいる。
生きているのかは、分からないけれど……。これは口に出せなかった。
基本、集団で暮らすわけではないから。ここが稀なだけだ。
「あんなのやめときな。せめて男が空を飛べればねえ……」
誰かの嘆く声が聞こえた。
それが水紋のように広がって、彼らは口々と叫んでは私を非難する。
「そんなの関係ないじゃない!」
空を飛べなくたって、好みを共有し、笑い合うことができるのだ。
寿命が違くとも、手を取り合うことができる。
「でも、あなたが死んだ時、彼は耐え切れるかしら? 後追いする前にこっちから拒絶してやったら?」
私の動きが止まった。彼の姿が脳内を埋め尽くす。
私が死んだ時……、彼はどうなるだろう。みんなの言うとおり、耐え切れるとは思えない。
嘆き悲しんで、ご飯も食べずにやつれていく様しか想像つかないのだ。
周りをも明るくさせる彼の笑顔が無くなるくらいなら……
「私が、彼と距離を置くべきね」
私のことを忘れてくれれば、彼は笑顔を失うこと無く、子孫を残すという使命を終えることが出来るだろう。
「何も言わずに去ったら、きっとあそこで死ぬまで待つわよあの男。」
「……そうね、彼に別れを告げてくるわ。」
彼を苦しめるくらいなら、私から彼を突き放して、開放してあげなきゃ。
私は今からじゃ間に合わないけれど、彼ならまだぎりぎり相手の女の子を見つけられるだろうから。
酷く痛む胸を抑えこみ、あの大木へと翅を広げた。




