表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

真相


本当に、彼と一緒に居るのは楽しかった。


出来る限り一緒に居ようと、早く用事を済ませてあの大木へ飛んで行くのだ。

今日も、そうしようとしていた。

それを止めたのは、同じ仲間たちだった。

もう既に旦那を見つけて、子どもたちを産みつけたという。

羨ましいなあ、と思いつつも、今の私には彼一色だった。


「あなたの方が早く死ぬのよ。」

どうやら、彼は秋の季節を過ごすことは出来るけれど、私にそれは厳しいらしい。


「でも、長生きする者も居るみたいじゃない。」

これは、植物たちから聞いた話だ。秋の風に揺蕩いながら飛んでいた者がいると。

私にそれが出来るかは分からないけれど、一緒に居たいのだ。


「子どもも生まないで、親に申し訳ないと思わないの?」

別の仲間たちが口々に言った。

それは、私も思っていたことだ。

子どもを産んで、またその子どもが子どもを産んで……これを繰り返して、自分の命を後世に残していく。

私の勝手な願いでそれを途絶えさせるのは、今まで何十代にも遡る祖先たちの命を殺すことになる。


「兄弟がたくさんいるじゃない。」

そう、私と同じ使命を受けて育った兄弟たちがたくさんいる。

生きているのかは、分からないけれど……。これは口に出せなかった。

基本、集団で暮らすわけではないから。ここが稀なだけだ。



「あんなのやめときな。せめて男が空を飛べればねえ……」

誰かの嘆く声が聞こえた。

それが水紋のように広がって、彼らは口々と叫んでは私を非難する。

「そんなの関係ないじゃない!」

空を飛べなくたって、好みを共有し、笑い合うことができるのだ。

寿命が違くとも、手を取り合うことができる。


「でも、あなたが死んだ時、彼は耐え切れるかしら? 後追いする前にこっちから拒絶してやったら?」

私の動きが止まった。彼の姿が脳内を埋め尽くす。

私が死んだ時……、彼はどうなるだろう。みんなの言うとおり、耐え切れるとは思えない。

嘆き悲しんで、ご飯も食べずにやつれていく様しか想像つかないのだ。


周りをも明るくさせる彼の笑顔が無くなるくらいなら……

「私が、彼と距離を置くべきね」

私のことを忘れてくれれば、彼は笑顔を失うこと無く、子孫を残すという使命を終えることが出来るだろう。



「何も言わずに去ったら、きっとあそこで死ぬまで待つわよあの男。」

「……そうね、彼に別れを告げてくるわ。」

彼を苦しめるくらいなら、私から彼を突き放して、開放してあげなきゃ。

私は今からじゃ間に合わないけれど、彼ならまだぎりぎり相手の女の子を見つけられるだろうから。


酷く痛む胸を抑えこみ、あの大木へと翅を広げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ