拒絶
あれから、僕は彼女と何度も会った。
片道だけで1日はかかるので、この周辺に住むことにしたのだ。
新しく家を探すのは大変だったけれど、それでも彼女と毎日会えるほうが嬉しかった。
僕と話す時だけは彼女が地面に降りてきてくれて、隣り合って色んな事を話す。
今日は何をしただとか、出会う前は何をしていたのだとか。
時々、近くの植物たちと皆で笑い合って、本当に楽しい日々だった。
ところが、彼女がもう何日も来ない。
何か理由があるなら絶対に教えてくれるだろうし。
もしかして、何かに食べられてしまったのではないか。
凄く不安になった僕は木の周りをうろちょろしては、通りかかる生き物たちに声をかける。
それでも、僕の望んでいる答えは返ってこなかった。
誰も知らないらしくて、余計不安になる。
どこかへ駆けて行きたくても、どこに居るのかも分からない。
彼女がどこで生活しているのかも、僕はまだ知らなかった。
あれだけ話したのに、肝心なことだけは知らなくて。
もうこんな思いはしたくない。
彼女に会ったら、ずっと一緒に居たいと伝えよう。
友達としてじゃなくて……。
見覚えのある影が僕の体を覆う。
ハッとして顔を上げると、変わらず、綺麗な黄色い翅をした彼女が居た。
「久しぶり。」
綺麗に笑う姿も、今までと変わらない。
「僕は、僕は君とずっと一緒にいたい。」
どうして来てくれなかったの?
色々聞きたいことはあったけれど、僕の口から出たのはそんな言葉だった。
確かに、伝えようとは思っていたけれど、もっとタイミングというものがあった筈で……。
恥ずかしいな、と思いながら彼女の顔を見ると、望んでいた表情ではなかった。
なんだか悲しそうな、苦しそうな顔をしていた。
言わなきゃ良かったのだろうか、彼女が聞きたくない言葉だったのだろうか。
どうしていいか分からなくなって、彼女の顔をひたすら見つめる。
ごくりと、彼女が心を決める音がした。
「あなたは翅も生えていなければ、空も飛べないでしょう。地面から飛び立てないのに、私は一緒にいられない。」
彼女の言葉に、息ができなくなる。
何度も何度も反芻している間に、彼女は飛び去ってしまった。




