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「異世界の読心術……魔法?…可能性はあるけど…いや、まさか読心術…まさか」
「…祐さん?大丈夫ですか?」
魔術師レベルについて聞いても反応せず、ぶつぶつと引きつり気味な顔で一人言を言って完全に自分の世界に入っている祐に、諒は無駄と知りつつ話しかけてみた。
「いやー。ないよね、そんなのあるわけないよ、うん」
…一人で考えを完結させたようだが、その一人言は諒に聞こえているとは、思わないのだろうか。
耳もかなりいい諒は、小さな声でぼそぼそ言っていても普通に聞こえるのだ。
祐の心情には一応諒も賛成である。確かに、人間なんて知られて恥ずかしいことなど山ほどあるだろう。読心術みたいなものがあるなら、プライバシー的にもどうかと思う。
誰しも、余計なことまで他人に知られるのは嫌なものだ。
諒にしても、昔若気の至りで、いわゆる典型的な「馬鹿貴族(公爵)」が城で寛いでいるところに重いシャンデリアを落としてみたり、どこぞの典型的な「阿呆冒険者(Aランク)」が魔獣を倒している場所に暴走中の魔獣の群れ(群れでSランク扱い)を誘導してみたりと、人に知られたら結構まずいことをいろいろやっている。
他に被害はないようにやった上に、幼少期とはいえ諒なのできちんと完全犯罪にしておいたはずだが、その辺り、明らかにバレれば牢屋行きだろう。
やすやすと捕まって処刑される気はないが、面倒くさいのでそれは嫌である。
…幼少時代に、普通に純粋な祐など比べ物にならないほどえげつないことをやってしまっている事実に、諒は静かに頭を悩ませる。
実際はそこまで悩んでもいないが、というかほとんど忘れかけていたが、諒は反省することなくさらりと「まあ、いいでしょう」と実に適当に流した。
今更過去はどうでもいい。終わったことは仕方ないのである。
相手は生きているかどうか知らないが、そこまで重要事項ではない…少なくとも諒にとっては。
諒は即行で思考を戻し、読心術の有無の結論を出したらしい祐に再度声をかける。
「それで、魔術師レベルの話なんですが」
この時点で、ようやく我に返った祐が姿勢を正した。
「あっ、はい!」
魔法の話だからか、やはり元気がいい。
ちょっと力みすぎているくらいかもしれない。
諒は祐の子供っぽさにくすりと微笑んで――聞き流せるほどあっさりと、言った。
「やりますか?国取り」
「あ、いや、やりませ…って、やりませんからね!?」
途中で、自分が如何に大それたことに返事しようとしているか気が付いた祐が、慌ててしっかりと釘をさす。
ついでにこそこそ辺りを見回したりもした。…完全に不審者である。
心配しなくても、現在割と細い路地に入っているため、人がいるかどうかはすぐに分かる。まして諒もいるので、生半な魔術師も話を聞きようがないのだが。
諒は、かなり慌てた様子の祐に、笑って簡潔に否定した。
「冗談です」
それを聞いた祐が安堵して胸を撫で下ろし、頬を膨らませる。
「心臓に悪いですよ!!」
諒の言葉で、からかわれただけだと理解したらしい。
同郷の誼として、本当に国取りできるほどの魔法を伝授してもいいが、見たところやる気はなさそうなのでやめることにする。
そうして、さりげなく、冗談で無意味に張りきっていた祐の緊張を解いてから、諒は改めて尋ねた。
「真面目な話ですが、どれくらいの魔術師になりたいですか?」
祐は困ったように首を傾げる。突然聞かれても基準がよく分からないのだろう。
「うーん…。…参考までに、十段階ほどに分けて表せます?」
考え込んだ末に、諒に問題の簡易化を求めてきた。やはり異世界に来たばかりの祐には、少々判断材料が少なかったようだ。
諒は「そうですね…」と僅かに唇の端を上げて思考を纏め、すらすらと段階を述べる。
「一、子供レベル。
二、一般人レベル。
三、下級の魔術師レベル。
四、中級の魔術師レベル。
五、上級の魔術師レベル。
六、天才魔術師レベル。
七、龍と喧嘩できるレベル。
八、国と喧嘩できるレベル。
九、国数ヵ国と喧嘩できるレベル。
十、世界と喧嘩できるレベル。……ということで、どうですか?」
「………レベル六で…」
もはやレベル八から上には突っ込みを入れない祐。
諒がどれほど強いか考えないことにしたようである。賢明な判断だ。
因みに、諒はレベル十二、中位の世界の管理者と喧嘩できるレベルだ。俗に言う規格外というやつである。
余談だが、レベル十から十一の間には越えられない壁があり、越えると世界の管理者から「神にならない?」と勧誘がきたりする。…諒は断ったので、それは置いておくが。
さらにレベル十一から十二の間にも越えられない壁があり、越えると「神にならない?神になったら創造の魔法で諒の大好きなアップルパイが創れるようになるよ?絶品だよ?」とグレードアップした勧誘がきたりするのだが、諒は凄まじい葛藤を経て断ったのでそれも置いておいて。
…諒はそろそろ路地を出た方が、面倒にならないと思っている。
実際、諒たちを金になるかどうか見極めているらしく、怪しい人影が路地の奥から二人を覗き見はじめた。
諒はごく自然体で怪しい人影に殺気を飛ばしつつ、にっこりして祐に提案した。
「ひとまず、路地から出ましょうか」
路地の奥では、諒の殺気がその身に直撃した人影がガタガタ鳥肌を立てて震え、ぺたんと尻餅をついていた…。




