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中世ヨーロッパ擬きな異世界の王都を、栗色の髪の青年が駆け回る。
先程からきょろきょろと忙しく辺りを見ては「うっわー、普通に魔法が使われてる!」と地球ではありえない現象に興奮して叫んだり、あちらこちらにある店などを覗き込んだりと子供にしか見えない行動ばかり取る地球人祐に、同郷の諒は微笑ましく思いながら呼びかけた。
「祐さん、そんなに走っては道に迷ってしまいますよー?」
「あ!す、すいません!」
見た目は二人とも青年なのに、会話を少し変えれば見事に子供(祐)と大人(諒)の会話に聞こえるところが何とも奇妙である。
諒は、祐に王都を案内している最中だった。好奇心旺盛な祐が暴走するので、抑えるのも一苦労だ。
…まあ、諒は体力がなかなか尽きないため苦労も何もないが。
ただこれが、割と神経の太い諒は大丈夫だが、親が子供を見ている心境になると途端に精神的にやられる。転ばないか、変な奴に難癖つけられないかなどの心配が絶えないからだ。
困った子を見るような感覚の諒がにこにこと笑う中、祐は本当に申し訳なさそうにしゅんとして謝り、諒の傍に戻ってきた。
…しかし好奇心には敵わないらしく、さすがに走り出しはしないもののすぐにまた辺りを見回す。
王都とはいえ所詮中世ヨーロッパ(擬き)、お世辞にも清潔とは言えない町並みだが、違う世界のものは何だろうと祐の目には十分新鮮に映るらしかった。
しばらくそうして落ち着かなくそわそわして歩いていた祐だが、そのうち「あっ!!」と大声をあげてぴたりと立ち止まった。
「鎧兜の人がいる!歩きにくそう!…ていうか、あの兜、顔全体覆ってるけど窒息死とかしないんですか?」
確かに、祐の視線の先では鎧兜でがっちりと固めた物々しい人間が鎧をガシャガシャいわせて通り過ぎていくところだった。
…さらに言えば、祐の大声に反応して一瞬、単調だった一歩踏み出す度に鳴る鎧の音を乱して仰け反っていた。
祐はその、地味に祐の大声に動揺した「鎧兜の人」を凝視して感想を述べる。後半は諒にかけられた問いだ。
諒は「鎧兜の人」の方は見ずに、さっきからこっそり二人の跡をつけてきている輩の対処について思考していた。
かなり遠くから一般人のふりをしつつちらちらとこちらを窺っているが、諒にはバレバレである。
「ああ、それには空気がちゃんと回るように魔法がかけてあるんですよ」
などと祐の問いに答えながら、おそらくギルドマスターの回し者であろう尾行してくる人影を、どうしてくれようかと僅かに目を細める。
ギルド関係の柵は一体どこまでついてくるというのか。
無視するか、撒くか、追い返すか、それとも攻撃するか。
「へぇー。すごいですね!」
感心したような祐の言葉に相変わらずの笑顔で頷き、諒は尚も注意深く考えをめぐらせた。
祐と町を回っているのを見られたところで、何も疚しいことはしていないため都合が悪いことはないのだが、腹黒設定としては人畜無害なのもどうかと思われる。
あまりにも大人しすぎると、「あいつ油断させといて実は何か企んでるんじゃないか」とか無駄に勘繰られそうだ。
かと言って攻撃しても「人に見られたくない疚しいことがあるんじゃないか」と普通に思われそうである。
ということは、諒は結局何をしても疑われるのである。
全く、世の理不尽に関する愚痴を作文にしてギルドマスターに提出したいくらいだ。
諒はそんなことを考えてなんとなく虚しい気分になったが、最終的には腹黒設定を通すため、一言呟いた。
「氷関係の芸術ってここでも通用するでしょうか」
諒と祐の話や一人言を風の魔法で拾って全て聞いて…つまり盗み聞きしていた尾行者五人が、諒の怪しい発言にぴくりと肩を動かし――そして諒が一回瞬きする間に哀れな尾行者たちは悲壮感漂う氷像と化した。
諒が密かに無詠唱で水属性魔法を使った結果だ。
ギルドマスター氷像案が思わぬ場面で採用されたわけである。
突然凍った五人の尾行者に、近くを歩いていた人々が腰を抜かして驚愕していたが、気にしないことにする。
…何やら大騒ぎになっているような気がするが、気のせいだ。気のせいに違いない。
元凶の諒は、我関せずを演じて柔らかく唇の両端を上げる。どうせ、大した害はないのだ。
諒が使った魔法は普通に氷漬けにするだけの魔法を改良したもので、主に殺すつもりのない人間に使う悪戯のような魔法だ。
一応、ものすごく寒くなるだけで本当にそう害はない。効果は三時間もすれば解けるように設定したので、一生氷漬けとかいう悲しい結末にはならないだろう。
人生適当が大事です、などと心の中で棒読みして、諒はどんどん先に進む祐の後を追った。
少々頑張りました…。
多分この後のお話は更に、そしてかなり遅くなりますが、出来るだけ早く投稿できるよう努力します。




