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「俺って…もしかしてかなり大変な人…?」


長い沈黙の後、祐がぽつりと言った。


その言葉に、諒は首を傾げて更なる爆弾を投下する。


「もしかしなくても大変な人ですよ?その力を完璧に扱えるようになれば、もし国と喧嘩しても普通に勝てるでしょうから」


…とんでもなく危険な爆弾だった。その証拠に、祐など顔を蒼白にして飛び上がり、いやいやいやいや、と盛大に突っ込んだ。


「国と…喧嘩っ!? いや、無理ですよ!!」


「無理ではないと思います。全ては祐さんの精神力次第です。


国の要人に国崩壊の危機を突きつけて脅しつつ、国からの暗殺者を返り討ちにしていかに自分に有利な条件を呑ませるか、これには国を敵に回す胆力が必要です。


よくありますよね?弱味を握られてお金を強請られていた人が、追い詰められてナイフを持ち出す、という窮鼠猫を噛む定番な話。


この話と同様に、あまりにも好き勝手されて追い詰められた国がたった一人に振り回されるわけがないという見栄を捨てて、周りの国と同盟を組んで逆襲してくる可能性があるため、引き際をきちんと計算しないといろいろ大変ですから、やりすぎは禁物です。


結局のところ、力に酔わない冷静さと計算高さ、油断しないこと、胆力があれば祐さんは国を支配できます。


ですが…祐さんは平凡な生活を望むタイプみたいなので、確かにそんな大それたことは何らかの事情がない限りしないでしょうね」


「いつの間にか真っ黒な話に!? しかもなんか正確に分析されてる俺!!」


諒が笑顔で国と祐についての分析結果を口にすると、ベッドの上に座って話を聞いていた祐が天を仰いで叫んだ。


「ギルドマスターの言う通りだ…。俺はまだまだ甘かった…」


次いで、がっくりと項垂れる。あれほどきらきら輝いていたのに、今やどんよりと曇った祐の瞳だ。どうもあまりの黒さ加減に気力をなくしたようである。


諒は祐の台詞を聞いて何かが引っかかり、尋ねてみた。


「甘い、とは?ギルドマスターに私について何か言われましたか?」


「…え?あ、はい…。なんか、『あの黒髪の奴(諒)は見た目は美麗だが腹黒の最強魔術師だから、嫌われるといろんな意味で人生終了一直線だからな?』って…」


祐は嘘がつけないタイプらしく馬鹿正直に、本人には言ってはいけないことを口に出してしまう。


口止めしなかったギルドマスターも悪いのだろうが、この青年に重要なことを話して大丈夫なのか、と不安になる正直ぶりだった。


もし隠し事をしても三秒でバレそうだ。


実際、魔法に失敗してどうたらの虚言もあっさりギルドマスターに看破されて、異世界云々の事実を言うことになっていた。


諒は話の内容と祐の正直さに苦笑して独りごちた。


「ギルドマスターには黒く見せているとはいえ、そこまで言われるほどではないと思うんですが…」


ますます自分の評価が悲しいことになっている現状を、諒は胸の内で嘆いた。


なんだかギルドマスターの中の諒が恐ろしく無駄に人外化しているような。


いつの日か、諒イコール化け物としてギルドに討伐依頼が出たりしないだろうか。


そんなことになったら、諒はギルドマスターを氷漬けにして王都のど真ん中に立っている救国の英雄像と並べて置く自信がある。絶対だ。


何ともいえない諒の表情に、さすがに失言に気付いたらしい祐が慌てだす。


「ごめんなさいっ!…えーと、あの、その…」


勢いよく謝って、しかしその後適当な言葉が見つからないのか、手を無意味にうろうろと動かし、口をぱくぱく魚のように開閉させている。


「謝らなくても大丈夫ですよ」


気にすることでもないため諒が声をかけたが、祐はやはり情けない顔のまま慌てていた。


かなり間抜けな祐の行動に、諒は面白い人ですね、とくすりと笑って、提案する。


「まだ十四時ですし、私が町を案内しましょう。…それとも、もうゆっくり休みますか?」


どうしようどうしよう、とあわあわ焦っていた祐は、しかし好奇心が大いに刺激される諒の提案にぱっと顔を輝かせた。


「行きます!」


…女っぽい童顔であると言っても十四歳は過ぎているように見える十七歳の祐だが、これは子供確定である。どう見ても子供である。


町一周ツアーにあっさりとごまかされてしまった祐に、諒は一抹の不安を抱いた。


――甘い菓子か何かに釣られて、ふらふら怪しい人間についていかないだろうか、と。



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