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鑑定の結果に、ギルドの幹部たちがざわめいた。
「本物…だと…!?」
「まさか…」
「……本当に?」
やはり、彼らは威厳も貫禄もない青年の話を信じてはいなかったようだ。
「いろいろ大変そうですねー。あの聖剣の所有者さんの処遇にも困るでしょうし」
諒は慌てて話し合うギルドマスター一同を眺め、思慮深く独りごちた。
いよいよ厄介なことになってきた。
青年の話は荒唐無稽なもので、とても信じられないのに、聖剣は本物。
他のものならまだしも、神から与えられる聖剣を所持しているのだ。
聖剣というものは、所有者を選ぶ。
もし所有者から力ずくで剣を奪っても剣は鞘から抜けないし、抜き身のまま持っていたとしてもなまくらで使えない剣にしかならない。
そういう仕様の代物だ。
だから、聖剣に所有者として認められている者はある意味神に認められていることにもなる。
そんな聖剣の所有者が、嘘を感じさせない瞳をして「異世界から来た」と言ったのだ。つまり先程の青年の話は、事実である可能性が高い。
…その場合、神が青年をわざわざこのギルド本部の屋根に落としたのかもしれないわけで。
だからといって、青年がギルド本部の屋根を空が見えるほど無惨に破壊したのも事実だ。
ギルドマスター一同としては、彼を牢屋に入れてしまっていいものなのかどうか、非常に悩むところだろう。
諒が、どう問題を解決するのか多少興味を持って見ていると、しばらくしてギルドマスターが大分疲れ果てた顔で片手をひらひらと振った。心なしか、厳めしい顔がちょっと老けているような気さえする。
「………聖剣所有者のお前は金もないようだしとりあえずギルドに泊めて…いや、屋根が壊れているから駄目だな…。
その辺の宿に泊めてやるから明日になったらギルドに来い。
あの混乱の中だ、お前が屋根を壊したのを知っている奴なんて俺たちとそこの黒髪(諒)くらいしかいないだろう。
今回は不問にしてやる。
職員や近隣の住民にも適当な話を作って説明しておこう。
黒髪ならわざわざこの件をいちいちバラそうともしなさそうだし、大丈夫だろう…な?」
どうやらギルドマスター一同の総意で青年を許すらしい。屋根の修理代がとんでもないことになりそうだが、やむを得ないのだろう。
さしものギルドマスターたちも、神に楯突こうとは思えなかったようだ。
諒に屋根破壊事件の真相の隠蔽を求め、ギルドマスターが諒を見る。
諒は返事代わりにギルドマスターに微笑みを向けておいた。穴が開いた天井から差し込む日光の効果で、黒髪がきらりと輝く。…長閑だ。
と言っても、諒はほとんどいつも平和に笑っているのだが。
屋根が壊れようが聖剣の所有者が現れようが動揺の欠片も見せずのほほんと笑うばかりの諒に、何でこいつはこんなに冷静なんだ、とギルドマスターが苦虫を噛み潰したような顔になったが、当の諒は何も見ていないふりをする。
そんなことをしている内に、さらにギルドマスターが(雰囲気的に)げっそりと憔悴した。
最初会った際には、諒のことをやたら魔力量が多い腹黒く扱いにくい奴とだけ認識していたギルドマスターだが、今回の件での発言や態度を見て、「実はこいつ天然入ってるんじゃないか…?」という疑惑が湧いてきたのだ。
天然は何をやりだすか予測不可能なところがあるため、腹黒い奴より余程扱いにくい。
今回の件も相まって、心労が凄まじいギルドマスターであった。
諒はそんな哀れなギルドマスターを眺めて「適当に喋っただけなんですけどね…」と呟く。やはり、ギルドマスターの心情もあっさり読んでいたのだった。
そんなことは露知らず、ギルドマスターは気力を振り絞って青年に貨幣を渡していた。
そして、ギルド本部の裏口から諒と青年を出す。屋根がないギルド本部から出て目立たないようにとの配慮らしい。
結局諒は騒動のせいで、紙に個人情報を書いただけでギルドに登録していない上、説明も途中までしか聞いていないが、気長に待つことにした。
魔法を使って屋根を直すとしても三日はかかりそうな様子だったし、その間はギルドは休みになりそうだったので金銭面が危なくなるかもしれないが、三日くらいなら何とかなるだろう。
それよりまず、青年が何か元の世界に還る方法の手がかりを知っている可能性があるので、諒はそこから聞いていこうと思った。




