17
「当ギルドはランク制です。ランクは最低ランクのGから、下から順番にF、E、D、C、B、A、最高ランクのSまであり――」
にこやかに受付嬢がギルドについての説明を始めた。
しかしその矢先。
――バリバリバリバリ、ガシャン!!
「うわあああああっ!!」
「ぎゃあああああっ!!」
「きゃあああああっ!!」
とんでもない大音と共に、ギルド本部の屋根が壊れた。それはもう修復不可能なほどに。ギルドの中にいた人々からけたたましい悲鳴が上がる。
ギルド本部は木造だったのだが、屋根が壊れたため木屑がぱらぱらと落ちてくる。
…木屑どころではない大きな木の破片なども落ちてきてしまっていたりするが。
屋根の穴が空いた部分から、雲がぽつぽつと浮かぶ青い空が見える。
人々が頭を守って逃げ惑う中、諒は一人冷静に腕を組んで呟いた。
「何か気配が上から猛スピードで突っ込んでくると思えば、まさか屋根を破壊するとは…。なかなかやりますね」
…感心していた。
もともと上から何かが降ってくるのには気付いていた諒だが、ギルドには出入口以外周りにそこそこ(何度も言うが基準は諒)は頑丈な結界が張ってあるので寸前で止まるくらいはするかもしれないと思っていたのだ。
その結界すら破って屋根を壊すということは、諒基準…ではなく常人基準で言えばその戦闘力、というか魔力は超一流クラスということになる。
魔力の籠った魔剣や聖剣でも結界を破ることができるが、魔剣や聖剣自体とても希少である。
そこらの一般人が持っているわけがない。
その辺りの事情を踏まえて考えると、たった今屋根を破壊した御仁はおそらく凡人ではない。
今更だが、降ってきたのは人間であった。
栗色の髪に瞳の、まだ若い青年だ。雰囲気から十六、七歳くらいだろう。見た感じ聖剣らしき物体の柄をしっかり握っている。
一番諒にとって驚きなのは、青年の顔立ちだった。
どことなく女っぽい顔だ…というのはこの際どうでもいい。なんと、青年は日系の顔なのだ。しかも日本語で「痛い痛いっ!」と呻いている。…屋根に背中を強く打ち付けたのか、げほげほと涙目で咳き込みつつ。相当苦しそうだ。
諒がにこにこと呑気に笑って青年を観察していると、青年は咳が止まった瞬間叫んだ。
「神様の馬鹿野郎ーっ!!」
「………神様?…あぁ、あのふざけたことを抜かす白衣のご老人のことですか」
諒はいきなり叫んだ青年を不審に思って首を傾げてから、自分のいろいろ壮絶すぎる記憶を思い返して青年の言葉に該当しそうな爺を見つけて頷いた。
青年が本当に神に会ったのかどうかはともかく、諒の中で神といえば爺。諒は昔出会ってしまった食えない爺を思い出した。思い出してしまった。
神を思い浮かべた諒の周りの空気が素で黒く…どす黒くなっている。どことなく笑顔まで黒かった。
諒が何を「神様」に強要されたのかは、神のみぞ知る。
ただ一つ言えることは、神は人間にはめちゃくちゃ無謀なことを丸投げする奴だということだった。
諒は二秒で周囲のどす黒い空気を払拭し、元の柔らかい笑顔に戻した。
――しかしこのたった二秒で、セレクリュール王国にいた者全員が何故かものすごい恐怖を感じ、鳥肌が立っていたという。
降ってきた青年も諒の殺気のせいで背筋に冷たい汗を流してブルッと震えてから、木の破片の散乱する中で立ち上がった。かなり頑強な体をしているようで、青年には掠り傷一つない。ギルド本部の屋根は大破だが。
青年が立ったと同時に、受付の奥の部屋のドアがえらい勢いで開いていた。
「何事だ!?」
慌てて出てきたのは、顔を真っ青にしたギルドマスターとギルドの幹部たち総勢十二名だった。結界が破られたことが余程ショックらしい。
災害級の魔獣が出たとでも考えていたのか、聖剣(仮)を持った青年がギルド本部の中央に立っているのを見て驚愕していた。
ついでにギルドマスターと幹部その一、その二は諒がいるのを見てさらに驚愕している。
諒は回れ右してギルド本部から逃亡したくなったが、日本人らしき青年がいるので耐えた。
青年が何か地球へ帰還する方法の手がかりを知っているかもしれないからだ。
ギルドの幹部たちの内一番早く驚愕から立ち直ったギルドマスターが、諒と青年に交互にじっとりとした視線を向けて話しかけた。
「――さて。何をやらかしたのか説明してもらおうか?」




