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上空にいるタキオカが突然振り返った。と同時に発光した。
一瞬なにが起きたか、わからなかった。気づけば地面のあちこちが割れ、白煙をあげていた。
ある程度視界がクリアになったと思ったら、少し離れた場所でアスカさんが倒れていた。アタシは急いで駆け寄った。
「に、逃げて……早く」
彼女は息も絶え絶えだった。どうして……なぜ、こんなことに。
「バカな女です」
見上げると、すぐ近くにタキオカがいた。
「その女は、ただのコソ泥ですよ」彼は続けた。「貴女がこれから手に入れようとしているものを、横取りするつもりだったんです」
「タキオカさん、彼女の存在に気づいてたの?」
「いいえ」
彼は鼻で笑った。腹立つわー。
「コソ泥の姿がいま見えたから、撃退したまでです」
すると途中までは見えてなかったということか。そんなアタシの考えを見透かしたように彼は言った。
「どんな小賢しい手をつかったかしりませんが、ここら一帯ではすべて無効です」
「じゃあ、ここが……」
彼はわざとらしく手を広げて言った。
「ようこそ、デモンズ・アイへ」
「タキオカさん、あなたの目的は何なの」
彼はニヤニヤしながら答えた。
「人材派遣ですよ」
「どういうこと?」
「人材を教育し、魔界へ送る。それがオレの仕事です」
「なんでアタシが……」
「さてそれは。調達したのはオレじゃありません、オオカワさんです」
オオカワという男はいったい何なの? タキオカともアスカさんとも繋がっている。だがタキオカとアスカさんは対立しているようだ。
考えを整理している暇はなかった。とりあえず意思表示をしなければ。
「イヤです。アタシは悪魔になんか、なりません」
「もう遅いですよ。周りを見てください」
思わず息をのんだ。いつの間にやら、ものすごい数のモンスターたちが周囲をおおっていた。
「怪物らが貴女を、このデモンズ・アイの中心へと押し込んでくれるでしょう……ぐっ、」
突然タキオカの身体がのけ反った。見ると、彼の額に何かが刺さっている。
鏡だった。さっきアスカさんが見せてくれた、カード状の。ということは……
振り返ると、満身創痍の彼女が立っていた。あの状態からタキオカに一矢報いたのか。
「いくよ、舞っちんぐ……」
「その怪我で?」
「いましか、ない」
耳を劈くようなタキオカの咆哮。急所を突かれた彼は、無暗に周囲を攻撃している。ついに悪魔の本性が現われたらしい。
無数のモンスターたちが迫りくるなか、アスカさんがアタシの腕をつかんだ。そのままジャイアント・スウィングよろしく回転しはじめた。
ものすごい回転だ。アタシの足先に触れた十数体のモンスターが吹き飛んだ。
「アスカさん、ありがとう」
「がんばって逃げるのよ。じゃあね」
彼女の表情は痛々しかったが、美しかった。
彼女が手を離すと、アタシのからだはデモンズ・アイから遠ざかって行った。




