23
「そろそろ本題に入るよ。あなたはいま、ある場所へ向かっている。あの男が誘導している」
「タキオカさんのこと?」
「そう。あの男にはいま、アタシが見えていない。声も聞こえていない。ある術をつかってヤツの監視から逃れているの」
ふと上空のタキオカを見た。たしかに様子がヘンだ。こちらを振り返ろうともしない。
近くにこんなセクシー・ダイナマイトな女性がいたら、真っ先に寄ってきそうなものだ。もちろんアタシじゃない。アタシと併走するアスカさんのことだ。
「あの男の目的は、あなたをデモンズ・アイへ誘導すること」
「……どこって?」
「デモンズ・アイ。とてつもない霊力がはたらくと言われる場所よ。マジで千体ものモンスターが寄ってくるでしょうね」
「アタシを襲わせる、ってことですか」
「まあね。そうしてあなたの眠っている力を呼び覚まそうとしている。あなたを立派な悪魔に仕立てようと」
俄かには信じられない。が、このヘンな世界へきてから、はじめて胸騒ぎがした。
「それを信じろと?」
「証拠をみせるわ」
そう言ってアスカさんは指を弾いた。見ると彼女はカードのようなものを持っていた。まるで手品みたいだ。
「鏡よ。自分の顔をごらんなさい」
アタシはおそるおそる、彼女がかざしているカード状のものを覗いた。鏡にはこれまで、さんざん裏切られている。
そこに映っているのは紛れもなくアタシの顔だった。が、多少変化していた。どうして今まで気づかなかったのか。額にオデキみたいなものが、できていた。
あわてて額に触れようとするアタシをアスカさんが制した。
「触っちゃダメ。下手に刺激するとマズいわ」
アタシはちょっと泣きそうになった。
「これって例の、第三の目ですか……」
「アタシの言うことを聞いて。ヤツと同類になりたくなかったら」
アスカさんの表情は真剣だった。
「時間がないから一度しか言わないよ。デモンズ・アイという場所は、中心部へ近づくにしたがって霊力が増しているの。ヤツの狙いは、まさにその中心へとあなたを引き込むこと。対するアタシの作戦は、こう。あなたの代わりにアタシが中心部へ入る」
「そんなことしたら、アスカさんが狙われるじゃないですか」
「心配してくれるのは、ありがたいけど、あなたを中心部へ近づけるわけにはいかないの。覚醒されたら元も子もないわ」
「アタシはどうすれば……」
「アタシがあなたをブン投げる」
「えっ」
「ハンマー投げの要領ね。中心からできるだけ遠ざける、だから、あなたはそこから、さらに遠くへ逃げるのよ」
「タキオカさんが追ってきます、きっと」
「できるだけヤツを食い止めるつもりだけど、その後の面倒までは見れないわ」
「タキオカさんと戦うつもりですか」
アスカさんは頷いた。
「ヤツはデモンズ・アイに賭けている。邪魔しようとするアタシを全力で排除するはず」
しばらく黙ったあとでアタシは聞いた。
「デモンズ・アイまで、あとどれくらいですか」
「地形からして、もうすぐのはず。アタシも実際にきたのは初だからね。ポイントが近づいたらきっとヤツはあなたに接触してくる、とアタシは睨んでいる。それか、なにかしらの兆候があなたに……」
異変が起きたのは、まさにそのときだった。




